2016年5月24日、WWFを含む複数のNGOによる合同での報告書として、『新・隠された石炭支援』が発表されました。同報告書は、日本を含むG7諸国が、2007年から2015年の間に、実に413億ドル(約4.5兆円)ものお金が、G7諸国から石炭に対して支援として出され、その中で、日本が218億ドル(約2.4兆円)もの支援を出してきたことを明らかにしました。これは、「パリ協定」が打ち出した「脱炭素」の方向性に明確に反するものです。日本で開催されるG7伊勢志摩サミットで、日本は真のリーダーシップを発揮できるのかが問われます。
世界に逆行する日本の石炭支援
COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で合意された「パリ協定」は、今世紀後半に、世界の排出量を実質ゼロにすることを目指しています。世界の温暖化対策は、事実上、「脱炭素」の方向へ向けて動き出したのです。2016年5月26日~27日に、日本の伊勢志摩において、G7首脳会合が開催されますが、そこでは、この脱炭素の方向性を加速できるかどうかが1つの鍵となります。
化石燃料の中でも、最も二酸化炭素の排出量の多い石炭の使用は、今からでも減らしていかなければ、脱炭素は達成できません。しかし、日本を含むいくつかの先進国は、石炭使用について、海外支援を出し続けています。その実態を明らかにする報告書が、WWFを含む複数のNGOによる合同報告書として発表されました。
同報告書『新・隠された石炭支援:G7各国は世界の石炭公的資金支援をどのように隠しているのか(Swept Under the Rug: How G7 Nations Conceal Public Financing for Coal Around the World)』は、2007~2015年の9年間、G7諸国が、実に413億ドル(日本円にして約4.5兆円)ものお金を、石炭に対して支援として出してきた実態を明らかにしています。そして、その中でも、日本が、2位のドイツの2倍上の金額、218億ドル(約2.4兆円)もの支援を出してきたことを明らかにしています。
しかも、そうしたG7諸国からの支援の受取国は、カンボジアやタンザニアといったエネルギー貧困を抱える国々ではなく、南アフリカ、インド、フィリピンといった比較的発展の進んだ国々に対して行われています。
懸念される石炭支援の拡大
同報告書では、日本が将来に向けて、さらに約100億ドル(約1.1兆円)もの支援を計画しているということも明らかにしています。
「高効率な石炭火力発電所(排出される二酸化炭素が従来よりも少ない)は、環境貢献にもなる」という主張もありますが、現在計画中の石炭火力発電所が、たとえ全て「高効率・低排出」なものになったとしても、気候変動の脅威をおさえるような排出量削減にはならないということは、先に発表されたWWFヨーロッパ政策オフィス委託・Ecofys作成の報告書でも明らかにされたところです。
真に重視するべきは、化石燃料から、再生可能エネルギーへの転換です。日本の海外支援の方針も今一度、見直す必要があります。