女性の経済的前進を阻む法的障害は依然として幅広く存在し、世界の多くの国で女性が特定の業務に就業できず、信用取引へのアクセスを制限され、暴力から保護されていない、と本日発表された世界銀行グループの報告書「Women, Business and the Law 2016(仮題:女性、経済活動、法律2016)」は指摘している。
女性の雇用や起業活動を妨げる法律について検証する同報告書によると、女性は、調査対象となった173カ国のうち100カ国で就業が制限されている。例えば、特定の工場での就業を禁じている国は41カ国に上るほか、夜間就業を禁止している国は29カ国、また就職するために夫の許可が必要な国は18カ国に達する。父親の育児休暇を認めている国は調査対象国のわずか半数、さらに両親に対し育児休暇を認めている国は3分の1以下に留まり、男性の育児分担責任を限定している。また、既婚女性が居住場所を選択できない国は30カ国、夫の決定に従うことを法律で義務づけている国は19カ国に上っている。
こうした制約をはじめ、同報告書の調査で明らかになった多数の男女格差は広範囲にわたり、女性自身だけでなく、その子供や、コミュニティ、さらに自国経済に負の影響を与えている。同報告書で明らかとなったジェンダー不平等の例は、7つの指標の下で、950件近くに達している。
法的なジェンダー平等が確立していない理由には、女子の中等教育就学率が低い、事業を運営したり就業している女性が少ない、男女間の賃金格差が大きいことなどが関連している。また、家庭内暴力から女性を守る法律が存在しない国では、女性の寿命も短くなりがちである。一方、政府が育児を支援している国では、女性の雇用率が高い傾向にある。
同報告書は、調査対象国のうち、女性に対し法的規制を設けていない国は、アルメニア、カナダ、ドミニカ共和国、エストニア、ハンガリー、コソボ、マルタ、メキシコ、ナミビア、オランダ、ニュージランド、ペルー、プエルトリコ、セルビア、スロバキア共和国、南アフリカ、スペイン、台湾、中国の18カ国だったと述べている。
「平等の実現に向けて」というテーマを掲げた同報告書は、過去2年間に、女性の平等を目指した改革のほとんどは途上国で実施されたと指摘している。地域別にみると、推進された改革の数は、ヨーロッパ・中央アジア地域では19件、サブサハラ・アフリカ地域では18件、ラテンアメリカ・カリブ海地域では16件、中東・北アフリカ地域では12件、東アジア・大洋州地域では11件だった。改革が最も少なかったのは南アジア地域で3件に留まった。
女性が幅広く平等に扱われている経済協力開発機構(OECD)加盟国では、女性の経済的機会の促進に引き続き力を注いでおり、過去2年間で12カ国で15件の改革が進められた。
女性への暴力に関する国際的な取組みや機運が盛り上がりを見せている中、同報告書は、取組みの一対策として、家庭内暴力から女性を守るための法律が世界各地でより一般化していると指摘している。家庭内暴力に関する法律を定めている国は、25年前にはほぼ皆無だったのに対し、今日では127カ国に達する。だが、調査対象国のうち、法的保護を設けていない国は現在でも46カ国に上っている。
「女性、経済活動、法律」について http://wbl.worldbank.org/
この報告書は、女性の就業、起業、そして事業運営の意欲や能力に影響を与えかねない男女格差を、法規や制度がどの程度認めているかを測定するもので、173カ国を対象に、制度・機構へのアクセス、財産使用、就職、働く意欲の提供、信用構築、訴訟、および暴力からの女性保護という7つの分野で、ジェンダーに基づく法的格差について分析し、隔年で出版される。
詳細、地域ごとの結果については、プレスリリース「女性の経済的前進を制限する法律は減少しているものの、世界各地で根強く残ると世界銀行グループ報告書」をご覧ください。