2015年4月25日にネパールを襲ったマグニチュード7.8の地震で大きな被害が出ています。
各国はネパールへの救援と、自国民保護にのり出しています。
日本政府のネパール支援
日本政府も、国際協力機構(JICA)や自衛隊による支援を打ち出しています。
- 国際協力機構(JICA)を通じ、2,500万円相当の緊急援助物資(テント,毛布等)を供与
- 10億円規模の緊急無償資金協力
- 28日から約45名からなる国際緊急援助隊・医療チームを派遣
- ネパール政府側の要請を受けて、自衛隊を国際緊急援助隊として派遣。第一陣同部隊(約20名前後)はカトマンズに向けて派遣。自衛隊は、現地において、医療活動等を行う
中国は2千万元(約38億円)の人道支援を行います。日本の4倍弱の金額です。隣国であること、インドとの間に挟まれた要所という特殊性が、中国にとってのネパールにはあります。
各国の自国民保護
ここでアジア各国が自国民保護にどう動いたのかを見てみます。
■シンガポールの自国民保護
4月28日に、3機のシンガポール空軍輸送機C-130が、シンガポールとカトマンズ間を飛びました。シンガポール発の往路では救援隊と救援物資を積み、帰路では国民と永住者の合計89人を乗せて戻ってきました。帰国を希望する国民向けに民間機の手配に動いています。国民に加えて、永住者も保護の対象でした。
■中国の自国民保護
民間機の臨時便で帰国。
■韓国の自国民保護
4月30日に、チャーター機を運行。
■日本の自国民保護
『邦人の安全確保に万全を期すため、引き続き、関係機関と連携』と外務省が発表していますが、具体的な行動はその後外務省サイトでは発表されていません。現地にいた日本人は自力で帰国しています。
ネパールには約千人の日本人が在留者として外務省に登録しています。全員が深刻な影響を受けている地域と関係しているわけではないでしょうが、今回は首都のカトマンズが大きな影響を受けており、少なくない割合の日本人が影響を受けているはずです。
都市国家シンガポールの国民と永住者はわずか384万人、日本の人口の33分の1です。ネパール在住のシンガポール人の人数は私には不明ですが、日本人より圧倒的に少ないでしょう。にもかかわらず、自国民保護のために空軍機を出しています。勿論、ネパールとの間にシンガポールは3,500キロ、東京は5,200キロとの距離の差があります。また、シンガポールが重用しているグルカ兵(グルカ部隊)の出身国がネパールです。しかし、経済的な結びつきを示す直接投資では、日本はシンガポールより多くをネパールに投資しています。
ネパールへの直接投資総計 (2010年: 単位$100万)
日本では金融立国と見られているシンガポールですが、国防にかなりの力を費やしています。例えば、男子の国民と二世以降の永住者は、二年間の徴兵があります。しかも、選抜によるものでなく、全員が対象です。なので、国民と自国軍の心理的距離は近く、これだけの国力をそそいでいるものに対して、政府も軍が国民にどう貢献するかを示す必要があります。最近では、リー・クアンユー初代首相が亡くなった時に、4日間で45万人を超える一般弔問がありましたが、ここでも軍が出動して設営と整理にあたりました。
国民国家の枠組みでは、どこまで自国民保護をするべきかというのは重要な方針であり、国の特徴となります。経済的な国際貢献と比べると、自国民保護が弱いと以前から言われている日本です。今回も他国と比べて消極的な印象となっています。
※本記事は下記からの転載です。
今日もシンガポールまみれ: ネパール地震での自国民保護:空軍機を出したシンガポール、民間機を手配した中韓、自力帰国の日本
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