国際女性の日(3月8日)に寄せる 潘 基文(パン・ギムン)国連事務総長メッセージ

世界の貧困地域では今でも、女性の出産は命がけです。こうした問題に取り組める方法は、変化をもたらす主体としての女性のエンパワーメントを置いて他にありません。

「ガラスの天井から広がる破片へ」

戦後の韓国で育った私は、自分が目にした伝統に疑問を感じたことがあります。それは産気づいた女性たちが玄関で靴を脱ぎ、怯えながらそれを振り返る姿でした。「また同じ靴を履けるかどうかわからないから」だと、母は説明してくれました。

それから半世紀余を経た今も、この記憶は私の頭を離れません。世界の貧困地域では今でも、女性の出産は命がけです。妊産婦の死亡は、多くの避けられる危険の一つです。乳児が女性器切除を受けたり、女児が通学途中で攻撃されたり、女性の身体が戦いの道具として利用されたり、寡婦が社会的に疎外され、貧困に陥ったりすることは、あまりにも多くなっています。

私たちがこうした問題に取り組める方法は、変化をもたらす主体としての女性のエンパワーメントを置いて他にありません。

私はこれまで9年以上にわたり、国連でこの理念を実践してきました。私たちが多くのガラスの天井を突き破った結果、一面にその破片が広がりました。そして今、私たちは女性が新たなフロンティアを越えられるよう、過去の仮定や偏見を一掃しようとしています。

私は国連部隊で初の女性司令官を任命するとともに、国連上層部に女性職員が占める割合を歴史的な水準にまで高めました。女性は現在、かつて男性の独壇場であった平和と安全という領域で、中心的なリーダーの地位を占めています。私が国連事務総長に就任した時、フィールドで平和ミッションを率いる女性はいませんでした。今では、国連ミッション全体のほぼ4分の1は女性を最高責任者としています。これでもまったく不十分であるとはいえ、大きな改善が見られたことは確かです。

私は、事務次長補または事務次長のポストに女性を起用する任命状に150回近く署名しました。その中には、国際的に著名なトップレベルの政府高官もいれば、母国に戻ってリーダーの地位に上り詰めた女性もいます。私は彼女たちのおかげで、女性が適任である仕事がいかに多いかを証明することができました。

この実質的な前進の継続を確保するため、私たちは、国連システム全体に責任を問う新たな枠組みを構築しました。かつてはジェンダーの平等が賞賛に値するアイデアだと思われていた職場で、それは確固たる方針へと進化しています。かつては選択項目だったジェンダーへの配慮に関する研修が、今ではますます多くの国連職員にとって必修項目となっています。

以前の国連予算のうち、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントに割り当てられる資金を追跡していた項目は一握りにすぎませんでしたが、現在ではこれがほぼ3項目に1項目の割合に達し、しかも増大を続けています。

孔子の教えによると、世界を秩序立てるための取り組みは、身近なところから始めなければなりません。私は、国連の女性リーダーたちの活躍という証拠に裏づけられながら、各所で女性のエンパワーメントを求めてきました。議会や大学、街頭集会での演説でも、世界のリーダーとの個人的な会談でも、企業幹部との会合でも、そして家父長的社会を支配する男性権力者との困難な交渉でも、私は男女の平等に固執し、これを達成するための措置を強く訴えてきました。

私の就任時、世界には女性議員のいない国会が9つありました。私たちは、この数を4つに減らすことに貢献しました。私は2008年にキャンペーン「UNiTE to End Violence against Women(団結しよう、女性への暴力を終わらせるために)」を立ち上げました。現在までに数十人のリーダーと大臣、数百人の国会議員、さらには数百万の個人が、行動を求める呼びかけに加わっています。

私は初の男性として、国連の「HeForShe」キャンペーンに署名しましたが、それ以来、百万人以上がこのキャンペーンに参加しています。私は、女性器切除の廃止を求める活動家を支持するとともに、総会がこの目標を支持する初の決議を採択した際には、これを称えました。また、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げる大胆な目標を達成し、気候変動に関するパリ協定を前進させるうえで、女性が重要な推進役となれることを認識する数多くの人々の呼びかけに私は賛同します。

今年の「国際女性の日」にあたり、私は女性と女児の権利の否定に引き続き大きな憤りを覚える一方で、女性のエンパワーメントは社会の前進につながるという確かな知識に基づき、各地で行動する人々の姿を心強く思っています。全世界でジェンダーの平等を達成するため、安定的な財源と勇気あるアドボカシー、そして揺るぎない政治的意志を注いでいこうではありませんか。私たちに共通の未来にとって、これ以上の投資はないのですから。

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