世界的な潮流は同性婚容認ですが、日本では反対論も根強い、と感じています。
今年3月31日、東京都の渋谷区議会本会議において、同性カップルに対して「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明書」を発行するという、日本で初めての条例が可決・成立しました。
この日本におけるマイノリティ政策を前進させる大きな第一歩は、早くも広がりを見せており、東京都世田谷区や、兵庫県宝塚市でも同様の条例制定に向けて検討を開始したそうです。
「これからは地方が国を動かす時代。アメリカだって同性婚の容認は州レベルから広がっていった。住民により近い地方自治体の力は国を動かしうる。その可能性を見せてくれたと思う。渋谷区の動きが全国に広がっていくことを期待したい」と元区議員の方が仰っていました。
私個人的には、地方の大学での活動や、地方創生の仕事などを通じ、地方が国を動かすことの必要性を感じると同時に難しさも感じているので、この渋谷区の取り組みに対しては、様々な側面から期待をしている方も多いのではと思っています。
しかしこの歴史的快挙も、両手を上げて喜んでばかりいられる状況ではないのが現実。当条例は渋谷区議会において、賛成 21票に対し、反対10票で可決しました。この時議決権を持つ自民党議員7名は全員反対票を投じたので、自民党はこの条例制定を「拙速過ぎる」と反対に回ったのです。
国政では絶対与党の自民党も、渋谷区では過半数を得ておらず、結果的に賛成多数で可決はされたものの、実はこの条例が可決された3月31日から1ヶ月にも満たない今月4月26日、日本では統一地方選挙が行われ、渋谷区でも区長、区議会議員の選挙が行われます。
この選挙において、渋谷区議会の議員構成が変わったり、自民党が推薦する村上英子氏が区長となったりした場合には、証明書発行どころか、条例凍結になるのではないかとささやかれています。
つまり、この歴史的快挙がわずか1ヶ月で大ピンチを迎えることになるのです。
この状況に対し、LGBT当事者であり、当条例起案に大きく貢献したと言われている杉山文野氏は、
「今まで数えきれないほどの若い性的少数者の相談に乗ってきました。LGBTの人たちは通常の6倍以上も自殺率が高いと言われています。この高い自殺率に関してマイノリティの方に課題があるかように語られることが多いですが、マイノリティが弱いから、いけないから自殺してしまうのでなくて、マイノリティが自殺にまで追い込まれるほどプレッシャーをかけている事に気づかないマジョリティにも課題があるのではないか。今度の選挙の結果次第では、この条例を見直すと言っている区長候補者がいるということを聞いた。(条例が凍結されれば)また僕たちは"いない存在"となってしまう」と危機感を表わしていました。
当条例に関して日本の安倍総理大臣(自民党)は、日本国憲法24条「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」という文面との整合性について「現行憲法の下では同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べる一方、上川法務大臣は「民法の婚姻法制と矛盾、抵触するものではない。性的少数者は社会生活を営む上で周囲から十分な理解を得られず苦しんでいる」との見解を示すなど、統一地方選挙を前に控えていながらも政府内においても見解が分かれています。
4月26日に迫った渋谷区での区長選挙、区議会議員選挙は、LGBTパートナーシップ条例の行く末を左右するだけでなく、日本におけるマイノリティ政策やダイバーシティ政策が今後前進するのか、後退するのかが問われることになりそうです・・・。
【杉山文野さんプロフィール】
1981年東京・新宿区生まれ。2000年早稲田大学体育学部入学、体育会フェンシング部入部。2004年同大学院教育学研究科入学。2006年自叙伝『ダブルハッピネス』(講談社)出版。性同一性障害である自身のエピソードを語った内容が話題を呼ぶ。地元歌舞伎町の街づくり、子供へのフェンシング指導、講演活動を続ける。