1. ベーシックインカムが世界を席巻する
民進党から次期衆院選目指して活動中の静岡2区の松尾勉です。現職ではありませんが、いよいよベーシックインカムが世界を席巻しようとしている中、いても立ってもいられず世界に先駆けて日本がベーシックインカムを導入するべく、具体的な提案をしていきます。おそらく我が国最初の包括的提案となります。
そもそもベーシックインカムとは何か。「最低限の生活保障」や「基本所得の保障」的意味合いでとられる方が多いと思いますが、今のところ明確な定義はありませんし世界で導入している国もありません。最も具体化に近いのはフィンランドであり、毎月560ユーロ(約7万円)を2,000人に配布するという導入試験が行われています。これは行き過ぎた行政の肥大化を抑止するのが一義的な政策目的と言われています。
また、アメリカの有名新興企業の経営者(例えばFacebookのマーク・ザッカーバーグ氏やテスラのイーロン・マスク氏)がベーシックインカム導入に積極的なメッセージを発信していますが、その理由はAIやロボット発達に伴う富の偏在化への防波堤という意味合いが強いようです。
2. 日本こそ、ベーシックインカム導入を
しかし実は、このベーシックインカムを掘り下げていくと日本こそ最も劇的な効果が見込めることが分かってきます。とりわけ、高齢化に伴う社会保障政策の限界、個人消費が伸び悩む経済状況の改善、格差の是正に大きく寄与する政策となりえます。また、「成長か分配か」、「積極財政か財政再建か」という二項対立を超えて「成長と分配」「積極財政で財政再建」の両立をもたらし、行政改革まで可能となるのです。
やや先走りましたが、なぜ日本でベーシックインカムなのかを今一度整理します。
従来、我が国は成長一辺倒でその果実を頼りに社会保障や福祉の充実を図ってきました。しかし人口ボーナスのある時代が終わり、逆に人口減少・高齢化社会に突入していきます。働き手が一手に社会を担う仕組みは限界に近づいています。現に、いわゆる生産年齢人口(15~64歳)は既にピークから600万人以上減少し、あと30年もすると高齢者割合とイコールになります。働き手が社会の担い手とする発想から、全ての人が社会の担い手を探ることが社会存続の近道となります。
同時に、日本だからこそという積極的な意味合いもあります。従来から「お互い様」の文化を持つ我が国の伝統。しかし、資本主義によって格差が広がり我が国の良さを打ち消してしまいました。加えて権力と既得権の癒着に伴う政治・行政不信。こうした不信感を一掃し、お互い様を取り入れた新資本主義を実現し行政の透明化も果たす、それがベーシックインカムの威力なのです。
3. 全成人に毎月8万円配布のベーシックインカム
具体的な提案に移ります。その骨子はタイトルのとおり「全成人」に「毎月8万円」を配布するというものになります。
◎配布の内容
対象:全成人国民(約1億人)
金額:毎月8万円(年間96万円)
対象に子どもを含める案も考えられますが、後ほど触れるようにベーシックインカムは万能ではなく、子育てや教育、医療や介護制度などは別途必要となります。そのため、今回の提案では分かりやすく成人を対象とする制度としました。
また、月8万円の提案の理由は、年金(基礎年金が月約6万5千円)や生活保護を念頭におきつつ、税による追加負担(後述)軽減も加味した結果、現時点ではこの額となりました。
さて、この制度には当然財源も必要です。年間予算は約100兆円。以下では、財源とともに行政の透明化もセットで示していきます。
◎制度の財源など
行財政の改革:公務員給与の一律削減、省庁や役所の整理統合、生活保護制度廃止、基礎年金はベーシックインカムに置き換え(厚生年金は残す)
消費税の変更:8%から20%へ、全体を個人ベーシックインカム税に変更
法人への新税:法人ベーシックインカム税創設(従業員数に応じた一段目(約月4万円/一人)と会社規模に応じた二段目(大企業課税))、最低賃金や雇用保険の廃止・見直し、年金保険料企業負担の一部廃止、配偶者控除等の廃止
以上が制度の財源になります。生活保護や基礎年金制度、最低賃金、雇用保険や配偶者控除など生活を支えるための従来の仕組みはベーシックインカムにより代替されますので廃止・見直しとなります。また公務員給与も一部ベーシックインカムで代替しますので減額、さらには不要となった省庁や役所は整理統合します。これによる効果は、直接的な財源としても10兆円規模となる見込みです。
また、全ての人が社会の担い手である以上、財源の半分は消費税(個人ベーシックインカム税に変更)でまかないます(税率20%)。この場合、月20万円お買い物する人は納税が4万円となり8万円のベーシックインカムでお釣りがきますが、月40万円お買い物する人は納税が8万円となりトントンとなります。すわなち、高額な出費をするほど負担は重くなりますが、この部分により累進性を担保することになります。なお、軽減税率のような複雑な仕組みは採用しません。
さらに企業においては、最低賃金や雇用保険、一部年金保険料等の負担を軽減する代わりに、従業員数に応じたベーシックインカム税を創設します。また大企業には二段目として更なる課税を検討します。これには、既に述べたとおり、今後のAIやロボット等の発達に伴う富の偏在化を防ぐという意味合いもこめられています。
4. ベーシックインカムの効果
以上が簡単ではありますがベーシックインカムの骨子となります。この制度導入に伴い、直接的・間接的問わず様々な効果が生まれます。
① 個人消費の喚起
個人消費の伸び悩みは日本の大きな課題でした。ベーシックインカムの導入により、特に若年層の個人消費は劇的に増えるものと考えますし、基礎年金制度が税方式のベーシックインカムに変更されることにより将来不安も解消されます。
② 社会保障改革
年金政策は、高齢者の増加と生産年齢人口の減少におびえる必要がなくなります。引き続き医療や介護の課題は残るものの、社会保障政策の課題解消の一手となります。
③ 行政改革
税金の行く先に憤りを覚える人は多いことでしょう。天下りや消えた年金、昨今の学校法人の問題等。ベーシックインカムはこの「中間搾取」を減らすことに貢献します。例えば生活保護や基礎年金制度が廃止され窓口業務が不要となります。税務署や労基署、社会保険機構、市役所などの業務が整理統合されることになります。
④ 格差対策
低所得者対策としても、ベーシックインカムは最低限の生活保障になりえます。またブラック企業に勤める人々を解放し、雇用保険の期限切れを心配する必要もなくなります。なによりも自らの納税を自らに還すことが土台であるから配布されるものに恥を感じる必要がありません。尊厳ある格差対策となります。
5. ベーシックインカムに向けてクリアすべき課題
以上のような効果がある一方、懸念もあります。例えば、労働意欲が低減するのではとか、払った税金を還元するなら払わなければいいではないか、などです。
確かに、勤労意欲については影響が懸念されます。現にフィンランドで行われている社会実験は勤労意欲の検証も兼ねるものなので注意深く見守る必要があります。さらに、我が国でもより確かな検証を制度導入前に行う必要があると考えます。
また、そもそも還元するくらいなら払いたくないという考えもあります。しかし、高齢化や人口減少は待ってくれません。財源がなければ制度を縮小するしかありませんがそれでは格差は拡大し社会不安が増大する。現状維持でも縮小不均衡でもない第三の道、それがベーシックインカムなのです。
これだけ大きなモデルチェンジですので、論点は多岐に及びます。例えば、累進性の確保を含めた高額所得者への対応、納付済年金の対応、物価上昇との関係、既存財源及び政策との関係等々です。これらについてもまだまだ詰めていかなくてはなりませんが、既に世界は、課題解決の手段としてベーシックインカムを見出し始めています。課題先進国の日本が資本主義を深化させ、いち早く人口減少・高齢化社会に合った社会像を示すとしたら、ベーシックインカム導入が最短の近道となります。
以上が、ベーシックインカムの具体像となります。今後より多くの方の意見を伺いながら、ベーシックインカム導入に向けて走り始める覚悟です。是非多くのご意見をお寄せください。