商社やメーカーが、低コストで生産できる中国をはじめ、バングラデシュ、ミャンマーにまで進出した結果として、日本製の衣料品、工場は激減しています。ただ、実際どのくらい減少しているかはあまり知られていません。
経済産業省のデータでは、1990年にメイドインジャパンの衣料品は約50%ありましたが、2009年には実に4%台にまで落ち込んでいるのです。
まさにメイドインジャパンの衣料品が失われつつある。これがアパレル業界の現実です。
たしかに競争社会だから仕方ないという側面はあります。
しかし、それだけではもったいなさすぎると考えています。
というのも、世界のトップブランドは日本の工場を非常に信頼・評価していて、名だたるブランドから生産を委託されている工場が日本にもまだまだあるからです。
世界から認められている日本の工場が、どんどんなくなってしまっているという現実。海外では、馬具工房として創業したエルメス、トランク製造工場から始まったルイヴィトン、カバンの修理工場だったグッチなど、最初は小さな工場からスタートし、今では誰もが憧れるブランドへと成長しているにもかかわらず、日本では、世界に誇るメイドインジャパンが失われている・・・。
この現実は、20歳の頃、留学先のラグジュアリーブランドで修業をした私にとって耐え難いものがありました。
2012年、「ファクトリエ」の構想を思いつきました。
日本では、工場で生産された衣料品がショップの店頭に並ぶまでに、多くの業者が介在します。(商社や卸、メーカーなど)その結果、工場が5,000円で作った商品は、最終的に店頭に並ぶ際には30,000円になってしまいます。中間業者が利益を載せるためです。
これが意味するのは、ショップが店頭販売価格を値下げした場合、結果的にその値下がり分は工場が負担しなければいけなくなります。「工場は無理な値下げに応じなければいい。」そう考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一度依頼を断ってしまうことは、次がもうなくなる可能性を高めます。そのため、工場は無理な原価値下げ要求でも応じてしまうのです。
そして最終的に成り行かなくなり、工場がつぶれてしまっていることも、今の衣料品国産比率に影響を与えています。
わたしはこの衣料品の産業構造を否定するつもりではありませんが、メイドインジャパン工場を守るためにはこれまでと同じ構造ではだめだと考えました。
それが中間業者を一切排除して、工場直販でネットで商品を販売する「ファクトリエ」です。
ファクトリエでは、世界ブランドの商品を生産している工場(ファクトリー)と直接提携し、従来なら3万円する商品を半額以下や三分の一で販売しています。
世界から生産を委託されている工場の商品ですから、品質は非常に高く、直販にすることで百貨店で買うよりも低価格で購入できます。
よく驚かれますが、従来の衣料品の産業構造で3万円で売っていたときよりも、ファクトリエで1万円で売るほうが、工場側への利益が高いのです。
2012年10月にオープンして約1年半、提携する一流工場は13工場へ増えました。次回はその軌跡とぶつかった大きな壁について書ければと思います。