「自衛隊は戦争する軍隊になりますよ」安倍首相のブレーン・岡崎久彦氏に聞く集団的自衛権

安倍首相は「集団的自衛権の行使容認」という日本の安全保障を大転換する方針を示し、いよいよ与党協議が始まります。具体的に何が変わるのか。安保法制懇メンバーの一人である元外務官僚・岡崎久彦氏にうかがいました。

安倍首相は「集団的自衛権の行使容認」という日本の安全保障を大転換する方針を示し、いよいよ与党協議が始まります。具体的に何が変わるのか。安倍首相直属の有識者会議であり、今回報告書を作成した安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)メンバーの一人である元外務官僚・岡崎久彦氏にうかがいました。岡崎氏は安倍首相の外交政策ブレーンでもあります。

_______________________________________________

長野 安倍総理の会見を受けて、集団的自衛権の行使容認について議論が活発化しています。岡崎さんは反対意見についてどう考えますか。

岡崎 集団的自衛権が権利があって、行使できないって言っているのは、世界中でただ一国なんですよ、どんな国でもやっている話なんです、当たり前の話なんです。

長野 集団的自衛権というのは、日本が自分たちが攻撃されていないのに、全然関係ないところで、巻き込まれていって、例えば戦争や地域紛争で、日本の自衛官が血を流すことになるんじゃないか。そうした不安があります。

岡崎 結局ね、鉄砲を打つかどうかというのは、場合によっては国家の命運にかかわる、これはね、結局、総理大臣が決める。

総理がその場で将来の日本の国益を考えて、心血を注いで決めるんです。それ以外にないんです世界的に。で、決める時にですね、くだらない議論で、手足を拘束されないようにする、つまり、権利はあるけれども、行使ができないからちょっと行使できないとかね、そんな事で国の利益を誤ったら大変ですからね、だからそういうつまらない議論を全部払拭して、理論的にきれいにしたうえで、全部総理の決断を仰ぐと。

要するにね、集団的自衛権というのは権利であってね、義務じゃないですからね。なんかあったら戦争しなくちゃいけないというのではないから、するかどうかはね、総理が決める、それ以外にないです。

長野 可能性として、その選ばれた総理が、もし決断をしたら、日本人の自衛官が血を流す可能性があると......。

岡崎 そうです、その通りです。

自衛隊は戦争する軍隊になりますよ。国が危機にさらされたらやりますよ。国が危機にさらされて自衛隊が戦争しなかったらどうするんですか。

■じゃあ、あなた憲法改正やってみてくださいよ

長野 これだけ国民の安全を守るためにやりたい、というならば、なんできちんと憲法改正の手続きを取らないんですか。

岡崎 きちんとってね、じゃあ、あなたやってみてくださいよ。憲法改正やってみてください。

3分の2の多数を集めるなんて大変ですよそんなこと。憲法改正ができるならもうとっくに変えていますよ。

国民投票して決まるなら賛成ですよ。だけどその前に正しいことはした方がいい。だって最高裁がそれで良いって言っているですから。

憲法解釈というものはね、憲法にちゃんと書いてある。誰が持っているかと。これはね、最高裁なんです。最高裁が最終判断の権限を持つってちゃんと書いてあるの。ね。だから、最終判断をするのは、国民でもなくて国会でもないし、ましては憲法学者でもないし、ましてや政府の役人である法制局でもない、最高裁なんです。

最高裁の判断が最終判断なんです。それは砂川判決というものがありましてね、そこで、砂川判決が出るんです。

注)砂川判決とは、1959年に出された最高裁判決のこと。この中で最高裁は、日本は、「平和と安全のため、自衛権を行使することは当然のこと」と判断しました。 ただ、この判決が指す『自衛権』は、集団的自衛権まで含めたものではないとの意見もあります。

岡崎 自衛権は集団的と個別的の区別はないんです。最高裁の判決では。それはもう明快なんです。だからいかなる憲法解釈も砂川判決にはかなわない。だって憲法に書いてあるんだもん。みんなね、憲法を尊重するって言っているでしょ。

で、みんな憲法を守るなら、最高裁の通りにしないといけない。

長野 今回安倍総理が、会見で、いろいろパネルで説明された1つの例として「邦人を輸送するときのアメリカの船の防護について」というものがあります。それに対して公明党の山口代表は、これまでの政府の言ってきた考え方でも、まあ対応できると、個別的自衛権でも対応可だから、なんでわざわざ、集団的自衛権に憲法解釈を変えるのかと?

岡崎 結局ね、山口さんの言っているのはね、その場合は守ろうって言っているんでしょ、日本人を」「それなら同じですよ、政府と。法的にどんな小理屈をつけようとね、小細工をしようとね、日本人を守る気があるなら、山口さんは政府と同じことを言っているです。

長野 (総理会見で説明された例はいずれも)個別的自衛権でそれは出来るじゃないかと指摘する反論があります。集団的自衛権が必要とされるほかの例、一番危うい事態など安保法制懇で議論されましたか

岡崎 もう東アジアの安全保障というのがね、日中関係、米中関係なんてものはないです。中国対日米同盟、このバランスで全部考えなきゃいけない、共同で行動することを考えないかぎり、日本の安全は今考えられない。

日本一人でもアメリカ一人でも守れないもん。アメリカ一人で守れと言ったらアメリカ引きますよ、だって勝てないもん。

一番の問題は、日米同盟が危険にさらされた時ですよね、アメリカだけ、アメリカの第7艦隊がやられていて、日本が助けにいかなかったら、アメリカもう(同盟)やめたと、そうなる可能性はありますね、それが一番怖いですね。

_______________________

テレビ朝日「報道ステーションSunday」より

注目記事