今ふたたび注目を集めている『新版画』をご存知だろうか?明治30年前後から昭和時代に描かれた版画で、伝統的な浮世絵版画のように絵師と彫師、摺師によって制作され、浮世絵の近代的な色使いと伝統的な復興を目指したものだ。伝統版画の復興という側面がありながら、新たな技法を用いた意欲的な作品は2000点を超えたとされ、特に1930 年代の欧米において、新たな日本美術の存在として衝撃を持って受け入れられた。
■展覧会も開催中
これらの作品は、愛好家などには広く知られていたが、より大きな注目を集めたのは4年前に江戸東京博物館における「大正新版画」と題した回顧展だった。それ以降、徐々に一般の人々にも認知が広まり、その驚くべき色彩と独自の雰囲気によって人気を博すようになったのだ。現在は、千葉市美術館において『生誕130年 川瀬巴水展 - 郷愁の日本風景』と題された展覧会も開かれている。
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以下に掲載した画像は、その川瀬巴水の作品だ。彼は、大正から昭和期の代表的な浮世絵師であり、吉田博らとともに『新版画』を確立した功績で知られる。川瀬は1度、洋画の世界で挫折を経験し、再び入門した日本絵画の世界でも行き詰まりを感じていたが、同門・伊東深水の版画から影響を受け、版画家へと転向した。その鮮やかな色使いと、凛として澄んだ景色をつくりだす世界観に引き込まれる人も多いのではないだろうか。
■川瀬巴水の作品
■『新版画』の作品たち
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(※この記事は12月13日に掲載されたTHE NEW CLASSIC「近代の浮世絵『新版画』に再び注目、絵師・川瀬巴水とは?」より転載しました)