不信感だらけの盗聴法改正案、これからは警察に何でも盗聴されてしまうのか!?

「そんなことまで盗聴されるの?」という疑問がぬぐえない盗聴法改正案。憲法にあるものの、軽視されがちな憲法21条"通信の秘密"の真相、刑訴法と盗聴法に迫ります!

「そんなことまで盗聴されるの?」という疑問がぬぐえない盗聴法改正案。憲法にあるものの、軽視されがちな憲法21条"通信の秘密"の真相、刑訴法と盗聴法に迫ります!

盗聴法改正案により起こり得る2つの問題点とは

今、国会で盗聴法(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律)改正案が審査、審議されています。その内容は、犯罪捜査の中で、電話、携帯電話、メールなどの通信を警察が傍受することができるというものです。

現行制度では、「組織的犯罪」であることを前提とする、薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人罪に限定されていますが、新たな制度改正案には、以下の内容が加えられています。

・殺傷犯関係(殺人、傷害、傷害致死、現住建造物等放火、爆発物使用)

・逮捕、換金、略取、誘拐関係

・窃盗・強盗関係、詐欺・恐喝関係

・児童ポルノ

現在の与党多数の国会状況では、この法律可決される可能性が高いのですが、この法律案が施行されると、次に挙げる2つの大問題が起こる可能性があります。

1.「誰が何を聴いていたのか」という実態がわからなくなる

これまでは、通信会社NTT職員などの立会いのもとに通信を傍受していたため、「誰が何を聴いているのか」の証人が存在し、一定の歯止めがきいていました。しかし、今後は専用システムを用いた機械を使用することになるため、警察内部だけで傍受が機械的に行われるようになり、実際に「誰が何を聴いていたのか」が問えなくなる可能性があります。

2.別件捜査の問題

盗聴法第14条では、別件捜査を認めています。その内容は、当初の令状記載の捜査に関して傍受を実施しているときに、それとは別の犯罪に関する内容の通信が行われた場合、その通信も傍受し捜査してもよいというものです。

もちろん、別の犯罪というのは、一般的に罪が重いと認知されている犯罪で「死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮にあたる犯罪」に限定されています。しかし、捜査員が傍受で知ってしまった"軽微"な犯罪を捜査しても、国民はそれを知ることは出来ないでしょう。

上記2つの問題以外にも、疑問はまだ残っています。極端な例かも知れませんが、レクチャーの中でも警察庁は中学生の集団万引きを傍受する可能性があることを認めています。今回の改正案により捜査の範囲がかなり広がるため、実際には通信の傍受が何のために使用されるのかが、全く見えてきません。

また、別件捜査の適用要件が相当重い罪に限定されているにもかかわらず、新たな盗聴の対象の中に「児童ポルノ」が入っています。これは、他の拡大される対象と比べバランスを欠いていると思います。

これらの問題を踏まえると、結果的に、国民と行政との不信感が大きくなることが懸念されます。犯罪を取り締まることは大切ですが、これによって、憲法21条の通信の秘密などが堂々と侵されるのではないかと国民の不信を招くのではないでしょうか。

「通信傍受の合理化・法律化(改正案)」は単独で議論されるべきでは?

盗聴法改正案については、本来、決議される前に十分に議論されるべき法案だと考えます。しかし、実際には「捜査の可視化」「司法取引」など刑事訴訟法改正案の単なる1項目として、小さく謳われているだけです。そのため、ほとんどの議員がこのことに気付かずに、議論すらされることなく、法案はそのまま通ってしまうでしょう。特に、取調べ可視化という国民が合意しやすい法案の裏に隠している意図を感じてしまうのです。

※盗聴法(3.通信傍受の合理化・効率化)は刑訴法改正の9項目のごく一部として扱われている

私は、党の政策調査会の責任者という、全ての法律を見る立場にありますが、皆様からの書き込みにより、初めて気づく論点や問題も多々あります。今回の盗聴法はもちろん、全ての法案や政府の対応を積極的に調査、議論し、おかしなことにならないよう働きかけていきますので、今後も皆さまから情報をお寄せいただきたいと思います。

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●山田太郎略歴(http://taroyamada.jp/?page_id=13)

慶應義塾大学経済学部、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程。

外資系コンサルティング会社などを経てネックステック社を創業、

同社を実質3年半で東証マザーズに上場。その後、参議院議員就任。

東大・東工大・早大などでも教鞭をとり、著書も多数。

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(2015年6月22日 山田太郎 オフィシャル Web サイト「太郎ちゃんねる山田太郎ボイス」より転載)

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