使わない船に年間12億円

文科省の概算要求の中の、「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構運営費交付金に必要な経費」に原燃輸送株式会社を支払先とする12億3200万円の項目がある。
原燃輸送株式会社

行革推進本部で来年度の概算要求のヒアリングが進む。

文科省の概算要求の中に、「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構運営費交付金に必要な経費」というものがある。

1642億円にもなるが、様々な事業をまとめて一つのレビューシートにしているという典型的な手抜き記載。

細かく見ていくと、この中に原燃輸送株式会社を支払先とする12億3200万円の項目がある。

「ふげん」の使用済み核燃料の輸送にあたる輸送船の維持管理に必要な予算だという。

2005年に、当時の核燃料サイクル開発機構が原燃輸送株式会社に依頼して造らせた開栄丸という船がある。

三井造船玉野事業所で2006年2月に進水、8月に竣工した全長100m、総トン数5000トンの船だ。

ふげんの使用済み核燃料、六ヶ所再処理工場からのMOX粉末、および「もんじゅ」の照射済み試験燃料の輸送を行うための船であり、なおかつ機構が利用しない期間は電力会社が利用するというのが計画だった。

建造費は47億円。これをまず、原燃輸送が負担する。そしてその90%を機構が15年かけて支払い、残りの10%はその後の10年間で支払われることになっている。

金利と固定資産税を加えると、合計60億円の負担になる。

さらに毎年9億円の維持費がかかるので、それも原燃輸送に支払う。

しめて年間12億3200万円の税金からの負担になる。

ここで誰もが妙なことに気がつくだろう。この船が運ぶはずの予定の六ヶ所再処理工場からのMOX粉末と「もんじゅ」の照射済み試験燃料は、未だに存在すらしないのだ。

存在しないものは運べない。

では「ふげん」の使用済み核燃料は何回運んだのかと尋ねると、答えは3回。

週に?、月に?、年間?

いや建造されてからの合計が3回。

2006年10月、2007年5月、2007年6月にそれぞれ5.2トンの使用済み核燃料を「ふげん」から東海研究所に輸送した。

では、機構が使わないときに使うことになっている電力会社の利用は...。

1回!

大飯原発から東海村にある株式会社ニュークリアデベロップメントカンパニー(NDC)にプルトニウムサンプルを移送した。

開栄丸は建造以来、4回しか使われていないのだ。

では、今後はどれくらい使われるのだろうか。

「ふげん」から出た使用済み核燃料のうち150トンは「ひのうら丸」という輸送船で東海研究所に輸送されている。しかし、このひのうら丸が廃船となるため開栄丸が建造され、3回で15.6トンを輸送したが、まだ、ふげんには70トン残っている。

この70トンの処理をどうするかは決まっていないが、フランスに持って行って処理するという話が有力になっている。

しかし、開栄丸は、使用済み核燃料を海外に輸送するために必要な防護措置がないため、海外には輸送できない。

つまり、今後の使用予定はない。

それでもこの使わない船のために、毎年12億3200万円の費用が税金から出ていっている。

さらにびっくりするのは、では契約解除したらどうなのかと文科省に尋ねると、日本原子力研究開発機構と原燃輸送の間の契約には秘密保持条項が入っているので、どういう内容の契約になっているのか文科省も見ることができない、と文科省の担当課長が澄まして答える。

全く使わない船を60億円の税金をかけて建造し、その維持管理に毎年9億円を税金から支払い、その内訳もわからず、契約内容も秘密ですといって開示もされないというようなことを行革本部としては当然認めない。

財務省をよんで、なぜ、財務省はこんな予算を認めてきたのかと質しても、これまでの経緯があったのでというばかりで要領を得ない。

まず、契約書が開示されない限り、税金からこの費用を支払うことはできないので、払いたければ日本原子力研究開発機構が身銭を切ることになる。

また、これまで税金で負担してきた分についても機構から国庫に払い戻しをさせるべきだろう。

文科省の原子力関連予算は、数百億円かけて建設され、何も使われず、今後も使われる予定もないRETFをはじめ、使うはずだといって作られたのに、現実には使われていないものがたくさんある。

文科省の原子力関連予算から無駄をなくすべく、行革本部の無駄撲滅プロジェクトチーム内に特命チームを立ち上げた。

(2015年9月19日「河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載)

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