新国立競技場問題について正解を考えてみようのコーナーです。
「新国立競技場問題を考える10の設問」
「新国立競技場問題を考える、日本建築界カリスマたちのヒント」
でもって俺の回答です。
「モリヤマクンノ コタエ」
まず
設問1:現国立競技場にはサブトラックがないので陸上の大会が開けません、どうにかしてください。(配点20点)
これについては以前に一度解答しています。
サブトラックは現在のメインの競技トラックに近接することが望ましいですから、新国立競技場案で使用してもいいことになっている「四季の庭」か「明治公園」の敷地を活用すれば十分足ります。
そしてメリットとしては「日本青年館」も建て替える必要なし。
伊東豊雄先生もサブトラックは明治公園のところにもっていこう!でしたね。
設問2:現国立競技場をサッカーやラグビー等の専用球技場にしようと思います。ピッチまで遠くて、スタンド傾斜がゆるくて見えにくいです。
また雨の日対策でスタンドには庇もつけてほしいです。
どうにかしてください。(配点20点)
これが結構難問なんですよねえ。
とりあえず国立競技場にも屋根は付くんですよ。
槇先生ご指導にように「無蓋化(完全にふたをしない)」でやった方が芝生の育成にもいいですし、何より空が広いですからね。
ベルリンのスタジアムみたいに半透明で明るい屋根でこんなふうに
ね?これでいいでしょ。
この屋根に照明がつきますから、照明スタンドもなくすことができるので、絵画館前の景観にもなんら支障なくなります。
これでいいと思うんだよ。
ただ、これだけではサッカーのときのスタンド問題が残るんですよ。
ロンドン五輪のメインスタジアムでは稼動席で対応していましたよね?
イギリスのウェンブリースタジアムもサッカー専用スタジアムと思われていますが、実は陸上もできるような設定なのです。
このすり鉢状の断面で、陸上のトラックよりもサッカーのピッチのほうが小さいから、下記のような対応が可能になっています。
なるほどね。
底上げすれば陸上のトラックが取れるというわけか、、
ただ、この方法だと陸上のたびに芝生がヤラレてしまいますよね。
この1年間、いろいろとスタジアム関係について調査し多くの方々にインタビューしたり、またサッカー関係者の方々にもお会いしたりした結果、私個人的には陸上競技場と球技場の並存、併用はやめた方がいい、という結論に達しております。
正直、現国立競技場は耐震改修を施したうえで、付近に恒久的なサブトラックを設けて、正式な陸上競技場として再生するのが一番よいと思っています。
で、何かサッカーにしろラグビーにしろここは聖地なわけですから、プレミアムな試合のときにのみ使用されることもある、でいいんじゃないでしょうか。
建設費用が減らせるのだから、JSCも無理に無理を重ねて嘘八百で糊塗したイベント・コンサートに頼りきった事業収支もご破算でいいんです。
でもって、コンサートが雨天で中止になるのはイヤだとかいう芸能プロには屋根のある東京ドームや西武ドームで開催していただき、それでも国立競技場にレジェンドを求める強いファンの存在するグループだけが使えばいい。
続いて設問3の回答にいきます。
設問3:オリンピックのメイン会場として考えたときに、開会セレモニーのときに8万人を収容したいです。(配点10点)
この8万人についてなんですけどね、
なんか絶対そうしなきゃいけないんです!嘘になるんです!(泣
とか誘致した側の日本オリンピック委員会(JOC)は言ってるんですが、実はとっくに答えは出てるんです。
昨年の11月、ちょうど一年前にIOC(国際オリンピック委員会)五輪競技大会エグゼクティブディレクターのジルベール・フェリ氏が、こう言ってます。
「五輪スタジアムは2つの目的を果たすことができる。開閉会式、そして陸上競技とサッカーの決勝の会場。東京では、開閉会式と陸上競技と聞いている。IOCはキャパシティーについて、最低基準は設けていない。開閉会式に関しては、できるだけ多くの人が入れるよう要請する。東京は8万人規模のものを造るということなので、そのスタジアムの建設をお願いしたい」
「IOCはキャパシティーについて、最低基準は設けていない。開閉会式に関しては、できるだけ多くの人が入れるよう要請する。」
8万人じゃなくてもいいんです。
ましてや、スタジアムの観客席としてじゃないんですよ。
開閉会式のイベントに8万人が参加できれば、、、ということだから
フィールドも込みです。
だったら、今の国立競技場の5万人でいいじゃん。
いや、むしろもっと席間隔も座席も最新のもに変えて、車椅子の人も通りやすいように通路もゆったりさせて、4万人くらいまで減らしちゃえ。
IOC(国際オリンピック委員会)がいう「できるだけ多くの人が参加できるように、、」というのを真に受けるとするなら、
磯崎新先生の言われる「開閉会式のセレモニーをスタジアムから外に出せ!」というのもあながち過激な意見とはいえません。
スタジアム以外の都内にも開会式場を設けて、同時多チャンネルでインターネット中継も組み合わせれば、もっともっと多くの人、場合によっては数十万人プラスアルファが参加できていることになるんじゃないでしょうか。
で、8万人はなし!で答えになるかと思っていたのですが、
オリンピックに関してはそうなのですが、もうひとつハードルがあるんです。
それは、サッカーワールドカップです。
まだ、決まってもいませんが、このサッカーワールドカップを国内誘致する場合のスタジアム要件というのがあるんです。
JFA(日本サッカー協会)「スタジアム標準 サッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドライン」
このJFA資料にはFIFAのスタジアム規定の細かい資料も載っています。
このガイドライン読んで思ったことはですね。
新規に建てるとしても、スタジアムの有効活用とか、長期に渡る維持とか将来への対応とか考えたら、コンサート対応優先じゃなくて、これ守るほうが大事なんじゃねえの?ってことです。
というのもですね。この中にFIFAのスタジアム要件というのがあるからなんですね。
オリンピックを理由にして、すでに破綻したザハの新国立競技場案をいつまでも引っ張ってる場合じゃねえ!ってことです。
この中にスタジアム施設の分類があるのですが、「クラスS」という基準を満たしていないとサッカーのワールドカップはおこなえないんです。
その内容を見てみましょう。
いやあ、よかったです。
「クラスS」だから絶対8万人というわけではななかったですね。
これで8万人要件は却下でいいんじゃないでしょうか。
設問3.の僕の回答は、
「国立競技場だけで考えない、ほかの場所と連携する。」です。
としたものの、どこにすればいいんでしょうか?
埼玉アリーナなんでしょうか?日産スタジアム、味の素スタジアムなんでしょうか?都内にはそんな場所はないんでしょうか?
埼玉アリーナは屋内施設ですから空がないんです。
でも味の素スタジアムも日産スタジアムも陸上競技トラックと併設なんですよ。
あと、都心からも空港からも結構離れています。
味の素スタジアムは調布、実際は飛田給
日産スタジアムは新横浜ですしね。
じゃあ、やはり新築なのか?ということになっても
ポストオリンピック(オリンピック後の)ことを考えれば、陸上競技と球技場併設を避けておいた方がいいんですよね。
ここで、もう一度ロンドンオリンピックのことを思い出しててみましょう。
ロンドンオリンピックは施設を仮設建築にしたり再利用したりして、合理的に考えていたというはなしでした。
同時に、イーストロンドン、かつて産業革命期の重工業や商業、港湾施設等で賑わいながら、戦後はそれらの産業の空洞化で賑わいが薄れてしまった地区の「戦略的再開発のための枠組み (Strategic Regeneration Framework)」と関係づけて、都市計画的な枠組みの起爆剤としてロンドンオリンピックを企画していましたよね。
かつての操車場とか港湾施設、工場なんかがあったリバーサイドを新たな文化拠点とする都市計画的視点です。
今の強引な明治神宮外苑エリアでのスタジアム建設では、そういった大局的視点も抜けていると思うのです。
ロンドンオリンピックのことを思い出してみると、リバーサイドならではの風景がよく見られました。
メインスタジアムとタワー夜景
タワーブリッジ
港湾地区の風情を残しながらオリンピックとともに開発が進んでいます。
スタジアムのライティングも運河に映えています。
イーストロンドン、これによく似た風景って東京にもあるぞ。
と思い出したんですね。
それは奇しくも、イースト東京ですよ。
隅田川です。
で、地図を眺めていると、あれ?川に沿ったこの緑のライン。
もっと拡大してみましょう。
左下は東京随一の観光地、浅草寺ではないですか!
右上の方にトラックらしきものが見えますね。
今戸の台東区リバーサイドスポーツセンターです。
なんか、素敵な敷地なんですけど、
対岸にはスカイツリーも見えますね。
でもって浅草から歩いてすぐだし、成田からも近いんですが、、
「イーストトウキョー」にサッカー専用のスタジアム建ててオリンピックのメインスタジアムにするのはどうなんだろう。
浅草でオリンピック!
て、こたあよ
「江戸情緒でおもてなし」ってなあはどうでえ!
「GIANT KILLING(ジャイアントキリング)」というマンガがありましてね。
13につづく
(2014年11月30日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)