就活生があなたのSNSを見てるかも? したたか過ぎる社員プロファイリングの中身と背景

就活生は、企業が用意したソー活用のページでしかSNSを活用していないのか?そんな疑問から、就活を終え、来年の入社を控えた大学生・大学院生に取材を行ってみました。そこで見えてきたのは、予想を遥かに超えるしたたかさで企業や社員の実態をプロファイリングしようとする就活生たちの姿です。

今年もいよいよ新卒採用活動が解禁され、街にもリクルートスーツを着た就活生が増え始める季節がやってきました。皆さんの中には、既にOB訪問を受けた方もいらっしゃるのではないでしょうか。近年の新卒採用では、ソーシャルメディアを活用した"ソー活" も拡がってきています。しかし、ソー活として語られるのは、SNS上に企業が情報発信・相互交流の窓口を開き、就活生がそこに集まるという企業主導の事例がほとんどです。

就活生は、企業が用意したソー活用のページでしかSNSを活用していないのか?そんな疑問から、就活を終え、来年の入社を控えた大学生・大学院生に取材を行ってみました。そこで見えてきたのは、予想を遥かに超えるしたたかさで企業や社員の実態をプロファイリングしようとする就活生たちの姿です。彼らは、中高生時代には既にmixiやtwitter、前略プロフなどを活用していたソーシャルネイティブ世代です。今回は彼らの就活におけるSNS活用術とその背景にある意識、そこから見出せる上世代との世代間ギャップをご紹介します。

■ SNSで社員の実態を洗い出す就活生

まず取材した学生が口を揃えて言っていたのは、「社員のSNSは、説明会やOB訪問では語られないその会社の実態や、社員の本音をプロファイリングする格好の情報ソース」だということです。

「SNSを調べる社員は、元々知り合いだった人から、OB訪問した人、偶然見つけた人まで色々」なようですが、「自分達の周りでは、かなり多くの就活生がそのような手口で情報収集している」ようです。確かに社員のSNSの投稿には、 (極めて属人的ではあるものの)社会人としての本音が多く表れているのでしょう。その企業のポジ、ネガ両面の実態が垣間見れるということの他に、「説明会やOB訪問では聞きにくい、プライベートの充実度が分かる」ことも就活生が社員のSNSを調べる大きな理由となっているようです。

更に話を聞いていくと、学生は特徴毎にSNSを使い分けて社員プロファイリングをしている実態が見えてきました。

まずFacebookについては、実名で登録している人が多いため、「社員を見つけるのは比較的簡単」だそうです。

「Facebookは社員の方のリア充度を調べるために利用してました。本音や愚痴もあるけど、旅行とかイベントを書き込む人が多いので、タイムラインを追っていくとどのくらいの頻度で長期休暇を取れているか、どんなところに旅行に行けるかなどが大体分かります」

「逆に、"20連勤突破なう!"みたいなナチュラル・ハイになったコメントを見ると、ブラック企業なんじゃないか、と引いてしまいます」

さながら、"ブラック企業発見機"のような使い方になってしまっていますが、二つ目の意見については、それだけ打ち込める仕事ができているんだ、という解釈もあっていいと思います。いずれにしても、就活生が就職した後の忙しさをしたたかにリサーチしているのが良く分かる意見です。

また、「ニュースを載せてる場合もあるので、OB訪問に行くときは事前にFacebookでその人の名前を検索して、アップされてるニュースは読んでおくようにしました」という、空気を読む彼らの世代らしい声もありました。

それに対してTwitterには、「匿名で、リアルな愚痴を書き込んでいることが多い」そうです。

匿名だったり、会社名を載せていない人も多いのでは?と聞くと、「プロフィールや投稿内容、誰にリプライを飛ばしているかなどでどの業界なのかは分かるし、会社を特定できることもあります」とのこと。

「そうやって見つけたアカウントに愚痴がどのくらい投稿されてるかで、業界の疲弊度が分かるんですよ」もはや、君、探偵にでもなりたいの? と突っ込みたくなる熱の入れようです。

またmixiは、「学生の頃から使ってる人が多いので、プロフィールの写真がいまだにプリクラだったりする」そうです。(思い当たる人もいるんじゃないでしょうか?)

「やっぱりこういうのは、相手が見られたくないような黒歴史、日記、写真なんかを発見できると面白いですよね」これはもう、就活のためというより完全に"趣味"になってしまっています。

彼らがここまでSNSをフル活用して社員の本音、実態を探ろうとするのはなぜでしょうか?一つにはブラック企業に関する報道が続いており、若い年代がそのような企業で疲弊しているようだ、自分もそうなるかもしれない、という見えない恐怖が拡がっていることがあるでしょう。そしてもう一つは、そもそも経済全体の大きな成長が望めず、変化も激しい環境の中で、少しでも安定した、ワークライフバランスの取れた企業に就職したい、というこの世代特有の意識が表れていると見ることができます。

■ 自分のSNSをプロファイリングしてもらったら...

就活生が行っている社員プロファイリングとはどんなものなのか、もっと具体的に知りたい。そう思った私は、自分を実験台にすることにしました。取材した学生に私が使っている幾つかのSNSを見てもらい、そこから私という社会人をどう捉えたか語ってもらいました。

ちなみに、こちらが私のFacebookのプロフィールページです。

彼らのプロファイリング結果は以下の通りです。

・たまに海外に旅行に行った投稿がある。休暇は取れていそう。

・愚痴の投稿を見ると遅くまで仕事することもあるようだが、恒常的ではないようだ。

・姪っ子の運動会の写真が載っているのは、家族を大事にできてそう。

・ニュースやレポートの投稿が多い。ちょっと堅そう。 URL踏むとこの人にお金入りそう?

・顔写真がなんか宣材写真っぽい。

・好きなアートが載ってる。高尚アピール?ただ、どれも有名どころだから"にわか"かも。

・交際関係は会社関係か、地味な感じがする。

私は「できるだけ正直に言ってくれ」と彼らに伝え、実際にみんな私のSNSを隅々まで見てくれた上で、良いところも悪いところも、まじめに見解を教えてくれました。

やはり勤務状況や休暇関連の投稿に注目が集まっています。家族イベントに関連する投稿も、ワークライフバランスが取れているかどうかを見る一つの視点になっているようです。そのような点について、SNSから推察される私の暮らしは、彼らにとってもそれほど問題はないようでした。まぁ、働き方に関係ないものの、投稿内容や写真などには相当、ツッコミが入っていますが。。。

念のため付け加えると、私は社会人の皆さんに「今すぐSNSに鍵をかけよう(非公開にしよう)」と呼び掛けている訳ではありませんし、就活生の皆さんのご参考になるのであれば、自分も鍵をかけるつもりはありません。ただ、入社後の生活の安定や忙しさを気にするあまり、自分のやりたいことや歩むべきキャリアについて考えることは忘れないで欲しいな、とも、今回の取材を通じて感じました。

■ 就活生自身は相当、自衛している

それでは、就活生の側は自分達のSNSをどうしているのかというと、彼らは相当、自衛をしています。

「会社の悪口や、どこで面接受けてるとかは絶対書かない」ように心がけたり、就活を期にSNSに鍵をかける(非公開にする)人も多いようです。取材した学生の一人が、周りの友達20人程に"就活時にSNSに鍵をかけたか"聞いてくれたところ、約半数が就活を期に何らかのSNSに鍵をかけたそうです。もともと鍵をかけていた人を含めると、その率は7~8割に及びます。

もちろんこれは正確な調査ではないですし、Facebookは表の顔として公開したままにし、twitterだけ非公開にする、という人も多いようです。

また、「自分に興味を持ってくれたなら、むしろ見て欲しい」と全て公開のままにする人や、自分が壇上でスピーチしている写真にプロフィール写真を変更するなど、SNSを就活仕様に"改装"するような人も少数ながら存在しています。

ソーシャルネイティブ世代がSNS上の発信に気をつけるのは、就活時期だけではありません。彼らは普段から、自分がSNS上でイタい発言をして悪目立ちすること、不都合な評判が立つことを相当、警戒しています。

「黒歴史が載ってるから、mixiのアカウントは消した」、「飲み会などではっちゃけた写真は、"親しい友達のみ"の限定公開にしている」、「イケてない知り合いが、一緒に撮った写真をタグ付けしてアップしてたら、他の友達に知られたくないのでそっと自分のタグを外す」などなど。私の世代からすると、かわいそうになるくらい周りの目を気にしながらSNSを使っています。

そのため、彼らは活用しているSNSの種類も豊富で、それぞれを情報開示レベルと目的に応じて的確に使い分けています。

FacebookはSNSの中でも"オフィシャルな顔"として使っている人が多いようですが、その中でも友達を「親しい友達」と「知り合い」にきちんと分け、プライベート度の高い投稿は「親しい友達」のみに開示しています。どうでもいいつぶやきや愚痴はtwitter、1対1や仲間内でしか話せないことはLINE、気の合う友達との写真の共有はinstagram、お気に入りの場所をシェアするのはfoursquareです。そこに更に、「鍵をかける」、「かけない」という判断が加わります。

彼らの世代は中高生時代からネットいじめや炎上を経験しているため、SNSや友達毎に情報開示レベルを分け、様々なSNSに情報を分散させるようになっているのです。

■ 社員プロファイリングに隠された、SNSに関する世代間ギャップ

私はちょうど大学4年生の頃にSNSが誕生したので、本格的にSNSを使い始めたのは社会人になってからです。社会人としてSNSデビューした私以上の世代にとって、SNSは第一に自分のネットワークを可視化し、どんどん外に拡大していくためのものでした。ネットワークを拡げるためにも情報発信は多い方が良いと考えていたので、開示レベルを気にすることもせず、どんな内容の投稿でも、どんどん発信していきます。

また、SNSは使い分けるというより、むしろ一つのSNSにできるだけ多くの自分の情報を集約する傾向もあったように感じます。

ソーシャルネイティブ世代からすると、私のように全てのSNSを公開し、自分の投稿がイタいかどうかなど全く気にしないでいる上の世代はある意味とてもオープンで無防備に見えるのかもしれません。私も、「好きなアートを載せたら"高尚アピールかよ"と思われるかもしれない」なんて考えたこともありませんでした。

それだけ情報が集積され、開示されているのなら、就活生が社員のSNSを投稿内容からプロフィール、交際関係までくまなく観察し、就活先を決める情報源の一つとして重視するのも無理はないことでしょう。社員プロファイリングの背景には、そんな世代間のSNSに対する意識と行動のギャップが隠されているのです。

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