先月下旬、私はちょうど海外に滞在中だったのですが、Facebookのタイムラインには、例年以上にハロウィンパーティーの画像が投稿されていました。
私が所属している生活総合研究所では毎月初旬に、その月の生活者の消費意欲を発表しているのですが、ハロウィンを消費の機会として挙げる声も10月は散見されていました。
特に都市部では、秋のイベントとしてすっかり定着してきた印象のあるハロウィンですが、SNSに今年投稿されたハロウィンパーティーの画像を眺めていて、(あるいはパーティーに参加していて)「これは本当にハロウィンなのか?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
ハロウィンはもともと、ジャック・オー・ランタンを飾ったり、仮装した子供が家々を訪ね歩き、お菓子をもらうイベントだったはずです。そしてハロウィンの仮装と言えば、お化けやガイコツ、魔法使いが定番のはず。(それらの仮装も、もともと子供だけがするはずなんですけど。)
しかし、Facebookに登場する画像に、そんな「ハロウィンらしい」仮装はあまり見当たりません。メイド服にチャイナドレス、学生服、ディズニー、アニメキャラのコスプレなどなど。私の知り合いには、「海老のお寿司」の仮装をした奴まで現れました。もう滅茶苦茶です。
もはや何でもありのコスプレパーティーに近い様相を呈しつつある日本のハロウィンですが、一体どうして、こんなことになっているのでしょうか。
実は生活総研では、「ハロウィンを祝った」人が毎年どのくらいいたか、20年前から地道にデータを取り続けています。(1992年から隔年で実施している時系列調査「生活定点」の一項目として。)
そのデータを性年代別でみてみると、面白いことが分かります。全体的に値が伸びてくるのは2000年代に入ってからなのですが、中でも女性20代、30代の伸びが圧倒的に高いのです。2012年の段階で、どちらも20%を越えています。次回調査は2014年なのですが、引き続き値を伸ばしていくでしょう。
女性40代も下の年代に引っ張られる形で、この5年間ぐらいで15%ほどまで値を伸ばしています。それに対して、男性は、まだどの年代も10%未満です。
どうも日本において、ハロウィンは女性20~40代のためのイベントになっているようです。30~40代の場合、「子供のハロウィンパーティーに一緒に参加しているだけ」というママも多いでしょうが、子供だけでなく、しっかり自分も仮装している人はかなりいるようです。(Webで画像検索しても、そのような写真は数多く見ることができます。)
そもそもハロウィンの参加率が上昇した00年代は、コスプレが一般に浸透してきた時期でもあります。それまではコミックマーケットやゲームショウなど、一部の「オタク」と言われた層だけのものだったコスプレが、オタク文化自体が若者を中心に一般化していったことで、広く認知されるようになりました。秋葉原にメイド喫茶が初めて登場したのが2001年。その後、ディスカウントストアやバラエティストアでも様々なコスプレの衣装が買えるようになり、興味を持つ女性が増加していきました。
しかし、いざコスプレをしてみたいと思っても、なかなかそのような機会はありません。そうかといって、オタクイベントに行くほどでもない。そんな20~40代女子が目をつけたのが、年に一回、公然とコスプレができる日としてのハロウィンだったのです。
女子の変身願望をライトに満たすイベントとして、ハロウィンはこれからも浸透し続けていくはずですが、彼女たちにとってハロウィンはコスプレをする口実でしかありません。それは、夏祭りや花火大会が浴衣を着る口実になっているのと似ています。
もはやある程度の女子のクローゼットにコスプレ衣装が装備されている状況なのであれば、別にハロウィンに限らず彼女たちがコスプレをする機会が増えていってもいいはずです。コスプレ限定の街コン、みたいなものが、近々登場するかもしれません。