丸一日、読書に没頭するもよし。または、カクテルタイムの会話のタネにするもよし。どちらにしても、ここで紹介するホテルのライブラリー(図書室)は、そんな贅沢で知的なひとときを演出してくれる空間です。
フィレンツェを眺め下ろす15世紀のルネッサンス式パラッツォ「イル・サルヴィアティーノ」。このホテルの内装を手がけたデザイナーチームが、時代を超えた見事なセンスを持っているのは明らか。特に、深みある色合いのレザーソファと、レアな革装丁の本が並ぶダークウッドの本棚を、背の高い窓から差し込む午後の陽が照らすライブラリーは、時の流れを全く感じさせない彼らの才能を顕著に表しています。
アルゼンチンのワインカントリーのはずれにある小さなホテル「カーサ・アントゥクーラ」。ここには実は、かなり立派な図書館があるんです。その蔵書数8,000冊。換算すると、スイートルームひとつにつき、1,000冊。天窓から入る優しい明かりに照らされたこの空間。二階でお気に入りの本を手にしたら下に降り、暖炉のそばで読書、またはすぐ外のブドウ園の平和な姿を眺めながらゆったりした時の流れを楽しみましょう。
かつてはポルトガル人作家エッサ・デ・ケイロスが住んだこの18世紀の豪邸には、古い文豪の家と聞いて人が思い描くものすべてが揃っています。もちろん一番の見所は、古い本の匂いと、地図やアンティークのオブジェに満たされた、風情あるウッドパネルの読書室です。
ニューヨークのホテルは、ライブラリーをテーマにしたバーがやけにお得意のようですが、その中でも特筆すべきは「ザ・ノマド・ホテル」。壁いっぱいに造り込まれたダークウッドの本棚に、古き時代のニューヨークを描いた本が並ぶバーラウンジは、これまでになくグラマラスで、知性を感じさせる大人に似合う空間です。
セントジョージ森林の奥に佇む築300年のこのシャトーホテルにあるのは、18世紀の科学実験用具などが置かれたちょっと不思議な図書室。メルヘンチックな客室にはそれぞれ、かつてボヘミアの詩人リルケがここを訪れた時代を思わせる書斎デスクも置かれています。
実際に読書するには向かないこと確実ですが、このホテル内にある、シェフ、ジャン・フランソワ・ピエージュ氏の私有ライブラリーでは、彼自らが手がけるテイスティングメニュー(※要予約)が味わえます。活字なしでも、目を(そして舌を)楽しませてくれることは間違いありません。
雑草を一本抜いただけでも貴重な文化遺物に出会えそうな歴史あるペルーの町クスコ。かつてチャペルだった建物の中のギャラリースペースを利用した「パラシオ・ナサレーナス」の図書室には、このホテルの建造に際し行われた丁寧な修復作業中に出てきた考古学的発掘物が並んでいます。
英国王室の別荘ウィンザー城にある読書室を参考にして造られた「タージ・ファラクヌマ・パレス」のライブラリーには、英語、ペルシャ語、ウルドゥ語で書かれた本に加え、レアなアンティークのコーランなど、貴重な書物が合計約6,000冊も貯蔵されています。また、マホガニー材とエボニー材を用いた天井には、このパレスを1884年に建造した首相のイニシャルが掘り込まれており、部屋自体も、書籍に負けない重厚感を漂わせています。
1920年代のボザール様式の建物を利用したこのホテル内にある小さな図書室「サロン・ギャリマール(Salon Gallimard)」は、隣接した出版社にちなんで名付けられたもの。もちろん、これまでにこの空間でくつろいだ作家や編集者は数知れずです。
10. 二期倶楽部(日本)
本館「にき倶楽部1986」には、美しい木立を借景としたリキュールルーム&ライブラリーが。オープン以来人気のオリジナルカクテル グリーンブリーズをはじめ、食前・食後酒を味わいながら、多くの美術書や文芸書に触れることができます。
From: Tablet Magazine