消費税の転嫁対策法案が5月17日、衆院で修正可決された。来年4月の増税に向けた消費税の転嫁を阻害する行為を是正するための特別措置法案だが、経産委や連合審査会などでの国会審議を経て、法案を修正しての可決となった。
最も問題だと指摘されてきたのは、いわゆる表示規制だ。「消費税還元セール」の禁止など、あたかも「消費税をお返しします」のような表示を禁止するという条項なのだが、そもそもは「消費税は最終的に消費者が負担するもの」という原則を消費者に誤認させないというのが立法趣旨だ。したがって、「消費税は消費者が負担する」ことを誤認させなければ、表示の仕方は原則自由のはずだ。そもそも、営業の自由や販売促進のための表現の自由など憲法にも関わるおそれのある事項について法規制する場合には、特に慎重でなければならない。
今回の閣法では、実はこの「消費者の誤認」(正確には、消費税は消費者が負担すべきという仕組みについての誤認)を防ぐことだけではなく、大手による買い叩き防止や周辺商店街の追従防止のための表示規制として、消費税相当額の値引きやポイント還元などまでを上げている。しかし、これはさすがに立法趣旨である消費税の仕組みの誤認とは直接関係ない。さらに審議の過程では、政府がこれまでに「消費税還元セール」によって買い叩きや追従セールが行われた客観的事実すら把握していないことが明らかになった。
よって、法案は、民主党の提案により、「消費税との関連を明示している」表示を規制するという限定の修正が加えられたのだが、何故に政府がこのように表示規制にこだわったのか?
ここは、質疑準備で明らかになったのだが、表には出てこない財務省の抵抗だった。そもそも消費税の仕組みを誤認させないということについては財務省がその説明責任を負う。しかしあくまで表示規制という観点から審議では景品表示法の所管である消費者庁を矢面に立たせた。しかし、消費者庁には消費税に関する権限はない。したがって答弁が二転三転することになる。
その後ろには常に目を光らせている財務省がいた。「消費税」という単語がセールなどの広告に踊り、あたかも消費に対する弊害が消費税であるかのような悪者に擬せられることを極端に嫌う財務官僚が糸を引いていた。消費者庁担当者は自らが矢面に立たされ、そのうえで答弁は振付けられ、結果答弁が変遷した責任まで背負わされた。消費者庁からは、口にはできない忸怩たる想いが伝わってきた。
このようなことが相変わらず起きている。ささいなことかもしれないが、安倍政権でも財務省支配は変わらない。