以前、偏食事情について書かせていただきましたが、今回は散髪事情について書こうと思います。
息子の散髪は、本当に大変でした。赤ちゃんの頃は泣いていてもまだ可愛いものですが、パニックも酷くなってきた2歳の頃はまぁ大変で。
まず、散髪の流れが分かっていません。今から髪を切るということについて手を変え品を変え伝えようとしても、全く通じませんでした。まだこのころは写真やイラストを見てもマッチング(実物とそれについて示す写真・イラストが同一のものであると認識すること)ができなかった頃。
散髪用のケープを着せようとするだけで大パニックです。暴れに暴れるので、ケープを着せている意味もなし。部屋には切った後の髪の毛が散乱しました。結局、裸にして風呂場で切った方が部屋を汚すストレスから開放されるという結論にいきつき、入浴時に切ることが通例になりました。
この入浴時の散髪も、やはり大暴れです。とはいえ男の子ですし髪を伸ばし続けるわけにもいかないので、小さいうちは可哀想ではありましたが、半ば無理矢理にでも髪を切っていました。手を噛まれ、腕を噛まれ、足で蹴られながらの散髪。
なるべく恐怖心を与えないようにはしていましたが、それでも息子は怖くて仕方なかったと思います。そんな息子を見て、私もなんだか泣けてきて。ごめんねと泣きながら、散髪したこともしばしばありました。息子が一番嫌がったのは、耳の近く。耳元での「シャキン」という音に、激しい嫌悪感を抱いていたように感じました。
私の方も、散髪というイベントは本当に気が重く、それでも幼少期からいろんな経験をさせて、怖くないことを知ってほしい、学んでほしいという思いから、挑むような気持ちでやっていました。ある意味、自分自身も拷問に近かったかもしれません。誰でも我が子の泣く姿というものは、見たくないですものね。
こんな状態が2年ほど続き、4歳になった頃は暴れることもなくなりました。恐らく、言葉でのコミュニケーションがある程度とれるようになったので、見通しもつきやすくなったからだと思います。それでも散髪は嫌で、泣きながら髪を切られているという状態でした。
5歳になり、ひらがなを読めるようになりました。その頃は、風呂場の鏡にスケジュールを書いた紙を貼るようにしました。イラストと簡単な説明。
そうすることで息子は安心し、泣くこともなく散髪に取り組むことができました。事前に「今日は髪を切ってもいい?」と聞くと「いいよ」と返事をしてくれるようになりました。
そして、7歳。先日、息子は生まれて初めて、ヘアサロンに挑戦しました。だいぶ成長したので、今がいいタイミングかもしれない。お店側には事前に、息子が自閉症だということを伝え、了承を頂きました。もちろん、私が横にいて何かあればすぐにでも対応できるようにしました。
そんな親の心配もよそに、息子はお兄ちゃんになった気持ちになっているのでしょうか。嬉しそうに髪を切られていました。スタッフのお姉さんの質問に答えたり、短くなっていく髪にさよならを言ったりしながら。
最後にスタッフの方が言いました。
「シャンプー、チャレンジしてみましょうか。」
私はドキドキでしたが、息子が「やる!」と言うのでお願いしました。
気持ちいいと言いながら、髪を洗ってもらっている息子。もう、今までの記憶がいろいろ蘇ってきまして、私の鼻はツンと痛くなり、目からは涙が溢れそうになってしまいました。しかしここで泣いたらスタッフの方を驚かせてしまう。
息を止め、ぐっと堪えました。ここまでの道のりは決してなだらかと言えるものではなかったですが、あの大変だった日々は息子にとって大切な経験だった、そんな気がします。
~続く。
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