混迷を極める豊洲市場・地下水モニタリング調査結果。その調査会社について、わかったことをまとめてみました

第9回の地下水モニタリング調査にて「最高でベンゼンが79倍」という衝撃的な調査結果が出たことを受けて、週明けから今日まで様々な報道や推測が相次いでいます。

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

第9回の地下水モニタリング調査にて「最高でベンゼンが79倍」という衝撃的な調査結果が出たことを受けて、週明けから今日まで様々な報道や推測が相次いでいます。

一昨日のブログに書いたとおり、私の立場は「まずは再調査の結果を冷静に待つべき」というものですが、そうは言っても報道や情報拡散は待ってくれません。

そこで私がこれまでに調べた限りでわかったことについて、今日はできるだけ客観的にまとめておきたいと思います。

まずは前提として、現時点で今回の数値が跳ね上がった原因として考えられているのは、

・地下水管理システムが作動して、地下水の流れが変わった

・これまでの調査、あるいは今回の調査に何らかのミスがあった

という大きく2点です。このうちの後者について盛んに色々な推測が流れておりまして、特に疑問視されているのが「採水」する時のプロセスです。

私も専門業者による豊洲市場の採水に立ち会ったことがあるのですが、今回のように土や泥が混入する可能性がある水を採水する場合、土や泥が沈殿するのを待って、その上澄みの水のみを採水するというのがガイドラインに則った採水方法です。

(画像は9月に豊洲市場地下ピットで我々が採水した時のもの)

ここで土が混ざっていると、当然のことながら数値が高く出る可能性が上がるわけで、専門家会議でも指摘されていた懸念がこの点になります。

簡単にいえば、これまで&今回の調査会社はちゃんと採水できていたの?ということです。

そこでこうした「採水」が正しく行われていた結果だったのかを検証するために、まさにこれから実施されるのが、新たな3機関によるクロスチェックというわけですね。

そしてこちらが、1月16日に記者向けに配られた採水・分析事業者に関する説明資料です。これを元にこれまでの地下水モニタリング調査を実施した事業者について、各メディアがすでに詳細を報じています。

地下水検査、全9回検証へ 豊洲、数値悪化受け(朝日新聞)

簡単にまとめますと、工事施工とモニタリングを同時並行で行う必要があるため、第1回から第3回までは地下水管理システムを検討(後に製作)していた日水コンが、第4回から第8回までは実際に建屋の工事を行っていたゼネコン各社が調査を受注し、実施していました。

ただし、第1回から第3回までは日水コンが行ったのは「採水」のみで、「分析」については競争入札で日立プラントサービスが受注・実施しています。また第4回から第8回においては、受注したゼネコン各社は採水・分析そのものの技術がないために、それぞれがさらに専門事業者に発注して実施されています。

...文章にするとわかりづらいので、改めて上記の資料からその部分の表だけ拡大して抜粋したものが下の画像↓

で、このプロセスからいくつか湧いてきた大きく2つの疑問を、都の関係各所に確認した結果は以下の通りです。

なぜ9回目は新規の会社を、競争入札によって選定したのか?

こうした調査は継続性が重要ですから、実績のある会社に特命随意契約をした方が良いのではないか?という議論は、都(中央卸市場)の内部でも行われていたそうです。

しかしながら「盛土問題」発覚後、都の判断や決裁の信憑性がことごとく疑われる中、

「特定の事業者を指名して発注したら、調査結果にあらぬ疑いがかけられる可能性もある」

という判断で、最終的には開かれた競争入札という選択をしたとのこと。この理由については理解できるところでもあり、まさに中央卸市場にとっても苦渋の決断だったと言えるでしょう。

業者の入札選定のプロセス・条件設定に問題はなかったのか?

競争入札の欠点は、「安かろう悪かろう」という業者が低価格で落札してしまうリスクを排除できないことです。

公共工事等においては「最低落札価格」が設定されており、明らかに安すぎる金額では落札できないことになっていますが、こうした調査委託については都では最低落札価格を設けないそうです。

そこで今回、競争入札で行われた第9回目の事業者に、採水・分析を行う十分な能力がなかったのではないか?との疑念も一部から指摘されておりましたので、入札結果を取り寄せて調べてみました。

細かくて恐縮ですが、今回落札した事業者の入札価格が280万円。最高価格を入れた事業者は1500万円で、5倍以上の金額差があることがわかります(なお、予定価格は非公表であるため「落札率」は不明)。

これだけを見ると確かに振れ幅が大きく、過剰な低価格で事業者が落札したようにも見えます。しかしながら、同じく競争入札で「分析」事業者を選定した第1回~第3回の入札結果を見てみると、以下の通り。

落札した事業者が145万円に対して、最高額を入れている事業者は630万円と、こちらも4倍以上の開きがあります(「分析」のみの発注であるため、採水・分析をまとめて発注した今回の入札と価格差がある)。

そして第1回~第3回までの調査結果については、現時点では特に大きな問題点は表出していません。

こうしたことを考えると、この落札価格および事業者のクオリティについての疑念は、今のところあくまで参考情報の一つと言えそうです。

というわけで、今日のところまでわかった情報を整理してみました。

公平性・透明性・信頼性を確保するために、競争入札で事業者選定を行った決断については一定の説得力があるところですし、現時点でそれが正しかったのかどうかは判断できません。

歯切れが悪くて申し訳ありませんが、これまで&今回の調査の妥当性については、やはり3月に出る再調査の結果を待つしかないようです。

調査会社(事業者)の選定プロセスについては今後、特別委員会など様々な局面で議論されることになると思いますので、以上の情報が参考になれば幸いです。

繰り返しになりますが、私は再調査の結果を待つべきで、現時点で豊洲移転の可否について論じるのは早計だと思っています。あくまで暫定値である今回の数値のみに惑わされず、冷静な報道・判断がなされることを望むものです。

それでは、また明日。

(2017年1月18日「おときた駿 オフィシャルブログ」より転載)

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