こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
今日は先般の兵庫県明石市視察における、もう一つの施策のご紹介です。
それが「離婚後のひとり親家庭への養育支援」です。
我が国における子どもの貧困、とりわけひとり親家庭の子どもの貧困は深刻であり、
その大きな要因の一つが「離婚後の養育費支払い率の致命的な低さ」にあることは
以前にブログ記事で詳述しました。
子どもの貧困の中で...「養育費」という子どもの権利を守る方法はないのか?
我が国では離婚時に養育費の取り決めを行うカップルは4割に満たず、
そして実際に養育費を受け取っている家庭が2割に達しないという状況です。
また、養育費の不払いに対して、充分な法的措置を行うことができません。
この問題に対しても熱心に取り組んでいるのが、
弁護士でもある明石市長の泉房穂氏です。
子どもの人権や人道的見地から、
「もっとも市民に寄り添う立場である基礎自治体で、できるサポートはすべてやる」
という信念の元、国や広域自治体に先駆けて
ひとり親の支援に対して様々な施策を打ち出しています。
法律相談体制の充実など事業は多岐に渡りますが、
もっとも効率的で注目すべきと思われる取り組みの一つが
「養育費と面会交流」
について取り決めるフォーマットを市が独自に作成し、
市役所の窓口に離婚届を取りにきたカップルに対して配布を開始したことです。
以前の記事でも触れた通り、協議離婚の際に養育費についての取り決めを
何らかの文書で残しておかなければ、現在の法制度においては養育費の取り立てが
ほとんど絶望的になってしまいます。
このように詳細に養育費・面会交流について定めることができる書式を渡し、
記載したものを公正証書にするサポートまで関係団体と連携して行うそうです。
その他にも、
「こどもと親の交流ノート(養育手帳)」
「親の離婚とこどもの気持ち」
など、徹底的にこども目線で作られた配布物を作成。
親の事情により片親を失ってしまうかもしれない家庭に対して、
面会交流の継続や養育費支払いの重要性を説いています。
作成に手間暇はかかっているかと思われますが、
発生する予算は配布物作成&印刷費だけなので、
なんと初年度の事業費はたったの35万円程度(!)。
始まったばかりの制度なので、効果測定などはまだ難しいものの、
ひとり親家庭支援の先進事例として厚労省などにも取り上げられ、
広く注目されているそうです。
■
こうした施策を先進的に進める中でしばしば生じる抵抗として、
「離婚時の支援なんてしたら、離婚を助長することになる」
「そもそも離婚させないようにすることが重要」
といういわゆる保守的かつ理想論的な意見があります。
実際に明石市でも、施策を検討する中で少なからず衝突はあったようで、
「現実に発生する事態の中で、子どもの権利を守ることが何よりも重要」
「決して、離婚の決断を促すような施策ではない」
ということを繰り返し説明し、事業化までたどりついたそうです。
これって、いろんな社会問題においてもそうなんですよね...
例えば若年層への性教育などについても、
「若いうちにそんなのを教えるから、早期の性交渉を助長するのだ」
「余計な知識を与えなければ、しかるべき年齢まで性意識は持たないはず!キリッ」
なんてことを平気で持論として述べる年配政治家が存在します。
現実から目をそむけて理想や持論を展開していても、問題解決は遠のくばかりです。
価値観の多様化・家族のあり方の変化に伴い、
今後も離婚家庭は増えていくことが予想されています。
「明石市の取り組みは、比較的良好な関係で離婚ができる夫婦には有効だが、
関係がこじれてしまうと難しい。国による法的な支援も必要なのではないか」
と明石市の担当者の方も所感を述べておられたように、
基礎自治体の努力も重要ですが、養育費支払いの法的拘束など、
国政や広域自治体で取り組むべき政策はまだまだあるように感じます。
参考:養育費の履行確保 --諸外国とわが国の対応を比べる--
明石市は次のチャレンジとして、
不払い養育費の建て替え事業などを独自に出来ないか模索しているそうです。
父子母子福祉資金など多くの財源を持つ東京都も、検討できることではないかと思います。
先進的な明石市の取り組みを大いに参考にしながら、
まずは東京都からひとり親家庭の貧困を改善していけるように
強く政策提言をしていく所存です。
気づけば連休も終盤、まだ質問は完成していません...(終盤追い込み型)。
連休最終日こそ頑張ります!それでは、また明日。
(2014年9月22日「おときた駿公式ブログ」より転載)