化粧は女にとって「必須」の身だしなみ?
「化粧は女の身だしなみ」と言われます。化粧をしないことはマナー違反であり、女なら化粧をして当然だ。かなりの割合の人、特に40代以降の方はそう思っているんじゃないでしょうか。
ですが、「化粧をしていない姿」は素顔です。素顔でいることがマナー違反になるなんて、おかしいと思いませんか?
わたしは学生時代、何軒か居酒屋でバイトしていました。どの飲食店でも、「すっぴんの女はドリンカー(キッチン内にあるドリンクを作る場所)か洗い場で働く」ことがルールとなっていました。
つまり、「すっぴんの女は客前に出るな」ということです。
結婚式場でのバイトに至っては、化粧をしてないと退勤を押され、化粧してもう一度出勤しなくてはなりませんでした。
化粧を「仕事に必須」としているにも関わらず、当然のことながら、化粧する時間は労働時間に入りません。
わたしは、「女は化粧して当然」という風潮に、強い疑問を抱いています。女が素顔でいることは、そんなに悪いことなんでしょうか?
たしかに、化粧をすると多少なりとも「かわいく」なります。素材勝負の男性に比べて、「女性は恵まれている」と言えなくないでしょう。
それでもわたしは、化粧していないありのままの自分の素顔が好きです。そして化粧は単純に時間がかかるので、1時間もかけて身支度するなら本でも読んでいたい、というのが本音です。
化粧というのは、そもそも「贅沢」なんです。時間とお金に余裕がある人が、美を追求する。それが化粧です。
それなのに、朝早起きして身支度整えても「女だから当然」と言われます。逆に、化粧をしていない=手抜き、女を捨てている、なんて風に見られてしまいます。
素顔でいることで「女を捨てている」と思われるのであれば、わたしは喜んで女なんて捨ててやります。
「男がヒゲを剃るのも身だしなみなんだから、女性も化粧するのが当然」と言う方がいますが、わたしはなにも、身だしなみがどうでもいいとは思っていません。
顔を洗って、眉を整えて、髪を束ねる。それは外見によって相手を不快にさせないという「マナー」で、当然男女関係なく心がけるべきです。
ただ、「なぜ化粧が身だしなみなのか」について説明できる人はほとんどいません。理由はかんたんで、「そもそも化粧が身だしなみっていうのはただの思い込みだから」です。
化粧はあくまで、「したい人だけがするプラスアルファ」のはずです。
「素顔でいること=身だしなみがなっていない!」という因果関係が成立する根拠はなんなのでしょう。
「化粧しない」選択肢を奪っているくせに
2016年9月に、東急電鉄は「電車での化粧はみっともない」とした、マナー向上の広告を打ち出しました。
それには賛否両論ありましたが、主に賛成派が多く、「粉が飛ぶ」「不愉快」「家でやれ」「羞恥心がないのか」という意見が散見されました。
一方、「鉄道会社にとやかく言われたくない」からはじまり、「女性抑圧だ」といった論争にまで発展しました。
胸を張って言えることではありませんが、わたしは何度か、電車で化粧したことがあります。
バイト先から「欠員が出たから急いで出勤してくれ」と言われ、何度か電車で化粧をしました。そうじゃないと、キッチンでしか働けなくなりますから。
あと、通学中ということもありました。大学まで片道2時間かかり、1限の授業があるときはラッシュ時を避けるため、朝6時にはすでに電車のなか。
居酒屋でのバイトの翌日は化粧せずにギリギリまで寝て、すっぴんで大学に行っていました。
そんなとき、とある男の先輩から「お前すっぴんなの?女として終わってるよ」と言われました。たしかに、その場ですっぴんだった女子はわたしだけでした。
だからわたしは、「すっぴんは恥ずかしいことなんだ」と思い、毎週月曜日は通学電車のなかで化粧するしかありませんでした。
(少ししてバカらしくなったのでやめましたが)
こういった状況を訴えても、「言い訳だ」「もっと早く起きればいい」と思う人はいるでしょう。
でも、そういう人に聞きたい。
「だったら、なぜすっぴんを許してくれないの?」
すっぴんで働くことを許してくれたら、化粧しないことで嫌味を言ってくる人がいなければ、電車で化粧なんてしません。
疲れきっていてあと30分寝ていたいと思っても、化粧するために起きなくてはいけないんですか? それはなぜですか?
「化粧なんてしなくてもいいよ」と言える社会
たしかに、「化粧している女の姿を見たくない」という人もいるでしょう。ですが、それならなぜ、「忙しいんだね。化粧なんてしなくてもいいんだよ」と言ってくれないんでしょう。
「化粧せずとも身なりを清潔にしていればそれでいい」。そう言ってくれる人が多ければ、電車で化粧なんてしなくて済みますし、堂々と素顔で生きていける女性が増えるはずなのに。
化粧というのは、そもそもとても面倒な作業です。
前日残業した後飲み会に行き、終電で帰宅。朝起きて、顔を洗って、朝ごはんを食べて、着替える。そのあと化粧水、乳液、化粧下地塗って、リキッドファンデーションのあとパウダーではたいて、眉毛をブラッシングした後にアイブロウして、場合によってはまつげマスカラもして、チークをして、アイラインを引いて、アイシャドウを何色か重ね付けして、ビューラーでまつ毛を上げてマスカラ、口紅を引いてフィニッシュ。
プロセスにどれだけこだわるかは個人差がありますが、ざっくり書けば、化粧にはこれくらいの作業数があります。人によってはもっと多い場合もあります。
これを「面倒」だと思い、「省略したい」と思うことは、女として「終わってる」んでしょうか。
すっぴんでいることは、そんなに悪いことでしょうか。
ちゃんと髪を整えていても、すっぴんでいる限り「身だしなみがなっていない」のでしょうか。
そんなことを言うなら、「化粧しない男性はマナー違反であり身だしなみに気を遣ってない!」ということになってしまいます。
「男なのに化粧しろと言うのか?」と違和感を感じるのであれば、「女だから化粧すべきだ」に対する違和感も、理解していただきたいです。
現代の女性は仕事や家事、育児に追われて忙しい人が増えているという現状も踏まえても、「化粧は女の身だしなみ」という考えは早く廃れるべきですし、すっぴんで堂々と仕事ができる風潮になってほしいと思います。
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