先日、某音楽誌の編集者からこんな話を聞きました。
「林さん、最近渋谷周辺にライブハウスと楽器屋が増えてきてるでしょ。あれって『やりたい人からお金を貰おう商法』なんだよね。昔は音楽は一部の才能がある人達だけが作って、それをCDにして売ってたわけだけど、今はもうCDが売れないから、『君にも出来るよ』って雰囲気にして、楽器を買わせて、音楽学校に行かせて、ライブハウスに出させて、そのライブに来る人も音楽をやりたい人ばっかりで、そこでお金を回収してるんだよね。クラブとかも今はそうで、純粋にクラブ遊びを楽しむ若者はいなくなったから、DJ予備群やDJたちが集まってイベントをやって、そこでお金を回収しているみたいなんだよね」
なるほど。確かにそうですよね。
でもこのパターンって結構他にもありますよね。文芸誌を買っているのは全員「作家志望」だっていう話もありますし、たぶん短歌や詩の世界もそういうことになっていると思います。
劇団関係はかなり前からそういう空気になっているような気がしますし、もしかして映画やアニメなんかもそういう雰囲気が進行し始めているのではないでしょうか。
結構飲食業界もそういう風になり始めていて、以前は「お店を出す」なんていうのは、老舗の有名店で20年修行して、やっと暖簾分けしてもらって、という道しかなかったのに、今では「カフェ開店講座」みたいなものをよく見かけます。
それで、あれれ、もしかして現代は全員が限りなくプロに近いセミプロで、どの業界も「やりたい人からお金を貰う」というシステムになっているのかなって考え始めました。
そこで気がついたのはインターネットなのですが、このインターネットの場こそ、プロとアマチュアの差がないですよね。マスコミ業界にコネも何にもない普通の人が突然すごく面白いコンテンツを作ってプロになれるし、テレビの中ではプロのタレントなのに、インターネット上のブログとかではそんなに面白くなかったり。
そして、インターネット上にある動画投稿サイトやブログ・サービス、SNSといった全てのサービスが、そんな「やりたい人からお金を貰う」というシステムになっています。
それで思うのは、この「やりたい人からお金を貰う」っていうのはもう世の中の流れで仕方がないことなんだなってことです。
そして思い出すのはあの言葉です。
「ゴールドラッシュで確実に一番儲かる人間はシャベル売りだ」
金を掘って大儲け出来る人はめったにいなくて、その金鉱の入り口でシャベルを売っている人が一番儲かるという話ですね。
結局、「箱」や「場所」や「システム」を作った人が儲かるわけです。
では、あなたは「システム」を作りますか?
シャベルを買って、めったにみつからない金を探して掘り続けますか?
あるいは何にもしないで、ただ眺めているだけですか?