妻がアップル・ミュージックを試して、「もうCD屋さんダメかもね」って言うんです。
「1000円で全て聞き放題っていうの一度経験したら、音楽の価値が本当に落ちちゃった。
ほら、デパートに1000円払って、『何を持って返っても良いよ』って言われたとするじゃない。
最初は『え!』とか思って、たくさん持って返ると思うんだけど、どれもが無料でいつでもそこにあるってわかったら、もう価値がなくなっちゃって、持って返らないと思うんだよね。
これは1万円、こっちは8千円って値段がついているから『どっちにしようかな』って悩むのが楽しいんだけど、どれもが無料だと欲しくなくなっちゃうんだよ」
なるほど。
僕らは値段がついているから欲しいんですね。
妻が言うに、「オジサンでももうみんなスマホ持ってるじゃない。このアップルミュージックを1回でも経験したらCD買う気なくなっちゃうよ。私はもうCDは買えないかも」とのことでした。
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ところで話はちょっとずれるのですが、以前バーテン修行したお店のボスの中村悌二さんが、よくこう言ってました。
「あのお店、安くしちゃった? じゃあ潰れるなあ」「あのお店、タイムサービス始めちゃった? じゃあ潰れるなあ」
中村さんが言うに、「ただ安くするだけでは絶対にお客様は増えない」のだそうです。
「え、安くできるんだ? じゃあ今まで何にお金を払ってたの?」って不信感ももたれるそうなんです。
お店で他のお客様はみんな「3割引のクーポン」を持ってたら、別に損していないのに自分だけ損したイヤな気持ちになりますよね。それとも共通する感覚です。
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じゃあどうすれば良いのか?
「値段は据え置きで、内容を良くしてお客様の満足度を上げるのが一番なんだ」とよく言ってました。
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さて、音楽ソフトの話に戻りますと、もう音楽は水道水と同じになっちゃったんですよね。
みんな水道代がかかっているのは知っているけど、飲食店で「水道水ください」って注文して「20円いただきます」って言ったら怒りますよね。
でもエヴィアンが「500円です」って言ったら怒りません。
内容を良くして、お客様が「これだったらお金を払おう」って思うものを用意するしかないですよね。
音楽業界のみなさん、「払う価値のある音楽」期待しています。
若い人でもミネラルウオーター買ってます。大丈夫ですよ。
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bar bossa 林伸次
著書「バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?」http://goo.gl/rz791t