湖深層水にメタン消費の新主役を発見

湖の100m近い深層の水に、メタンを消費して富栄養化物質の窒素酸化物も分解する脱窒メタン酸化細菌が大量に生息していることを、北海道大学低温科学研究所の福井学(ふくい まなぶ)教授と小島久弥(こじま ひさや)助教らが亜熱帯のダム湖で初めて発見した。メタンは二酸化炭素の25倍も強力な温室効果ガスである。この新しい細菌の群集は、温暖化防止と湖水の水質浄化のいずれにも寄与する「知られざる陰の主役」だった。

湖の100m近い深層の水に、メタンを消費して富栄養化物質の窒素酸化物も分解する脱窒メタン酸化細菌が大量に生息していることを、北海道大学低温科学研究所の福井学(ふくい まなぶ)教授と小島久弥(こじま ひさや)助教らが亜熱帯のダム湖で初めて発見した。メタンは二酸化炭素の25倍も強力な温室効果ガスである。この新しい細菌の群集は、温暖化防止と湖水の水質浄化のいずれにも寄与する「知られざる陰の主役」だった。

深い湖沼の環境保全を進めるのに新しい手がかりになる研究としても注目される。台湾北部の台北市の水がめになっているダム湖の翡翠(ひすい)水庫で現地調査して突き止めた。京都大学と台湾・中央研究院との共同研究で、7月25日付の英オンライン科学誌サイエンティフィックリポーツに発表した。

研究グループは、亜熱帯湖沼のメタン酸化細菌群集を明らかにするため、翡翠水庫(約10平方km、水深約100m)で4回、表層と深層の水を採取し、フィルターでろ過して細菌を収集した。収集した微生物から遺伝子を分離して、その塩基配列を決定した。同様の解析をメタン酸化酵素の遺伝子についても行った。微生物細胞数の定量的なデータを得るため、蛍光染色して顕微鏡で調べた。

その結果、湖沼の表層で通常検出される2つのグループのメタン酸化細菌のほか、酸素が乏しい水深85mの深層水から、脱窒メタン酸化細菌が大量に検出された。4回の調査すべてで見つかり、種レベルでは最も高頻度で検出された。遺伝子解析から、研究グループが琵琶湖の深い湖底の堆積物から見つけていた細菌と非常に近縁だった。蛍光染色の計測の結果、脱窒メタン酸化細菌は深層中の全微生物細胞の16%にも達し、最も優占種であることがわかった。

酸素の代わりに、窒素酸化物を使って、メタンを消費する脱窒メタン酸化細菌は、数年前にオランダの研究者が農業用水で確認していたが、環境中では少数派と考えられていた。今回の発見で、湖沼で発生するメタンの消費に重要な役割を果たしている可能性が浮かび上がった。この細菌は同時に、窒素酸化物も分解するので、富栄養化を和らげるのにも役立つ。

福井学北大教授は「湖の深層水に脱窒メタン酸化細菌がこれほど多かったのには驚いた。この細菌の群集が湖沼の環境保全に重要な役割をしているのは間違いない。湖水の生態系研究の新しい突破口になる。亜熱帯だけでなく、温帯や寒帯の深い湖沼にも、この細菌の群集がいるかどうか、調査したい」と話している。

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北海道大学 プレスリリース

京都大学 プレスリリース

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