就学期以降も親子で一緒に過ごす時間が長いと、数年後の大脳の発達や言語理解機能に好影響を与える傾向を、東北大学加齢医学研究所の竹内光(たけうち ひかる)准教授と川島隆太(かわしま りゅうた)教授らが大規模な追跡調査で確かめた。日々の生活で親子の相互作用が就学期以降の子どもの言語発達にも重要であることを示唆する報告といえる。2月4日に米神経科学誌The Journal of Neuroscienceに発表した。
乳幼児に対する言語的働きかけ、親子の相互作用が子どもの言語スキルや言語知識といった言語発達指標を長期に上昇させることは、これまで多くの研究で示されてきた。一方、就学期以降の子どもの発達は、「神経回路の刈り込み」と呼ばれる現象が背景にある大脳の灰白質量の減少を示すことが知られている。しかし、これらの言語機能と関連する大脳領域の発達に、親子の相互作用がどう影響を与えるのかは明らかにされていなかった。
研究グループは5~18歳(平均11歳)の262人を対象に、生活習慣や親子関係、言語理解などを調査し、脳のMRI画像による灰白質濃度との関連を解析した。このうち、208人については3年後に再び知能検査とMRI撮影をした。性別や年齢、親の教育歴、収入、親子の関係の良好性、居住地域の都市レベル、親子の数を補正して、日常生活の影響を解析した。
その結果、初回調査時点で親と長時間過ごしていた子どもには、言語理解指数が高い傾向が見られ、3年後の2回目調査でも、より一層の言語理解指数増大につながっていた。同様に初回調査時点で親子で長時間過ごすという環境は、子どもの両側上側頭回などの灰白質濃度の低さと関連していた。
さらに、親子で長時間過ごしていた子どもでは、3年後の右上側頭回の灰白質濃度の減少が多いという好影響が見られた。また、言語理解指数や年齢は大脳の灰白質量と負に相関していた。親子でさまざまな内容の会話が多いと、親子で過ごす時間と同じように、言語性理解指数や右上側頭回の灰白質濃度と関連することもわかった。
竹内光・准教授は「小児期に長時間親子で一緒に過ごし、特に会話があると、 脳の言語機能に関わる領域が影響を受け、言語機能発達を促す可能性が示唆された。乳幼児期だけでなく、就学期以降も親子で長く過ごし、会話を持ったほうがよいだろう」と指摘している。
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・東北大学 プレスリリース