2024年まで運用延長 国際宇宙ステーションで日米正式合意

日米両政府は12月22日、国際宇宙ステーション(ISS)の運用を2024年まで延長することなどを盛り込んだ日米協力文書を取り交わした。

国際宇宙ステーション(ISS)の運用を2024年まで延長することなどを盛り込んだ日米協力文書を22日、日米両政府が取り交わした。東京で行われた署名式で、岸田文雄(きしだ ふみお)外務相、島尻安伊子(しまじり あいこ)宇宙政策担当相、馳浩(はせ ひろし)文部科学相と、キャロライン・ケネディ駐日米国大使が文書に署名した。

日本政府は8日に開かれた宇宙開発戦略本部(本部長・安倍首相)の会合で、「宇宙基本計画」の改訂工程表を決定した。この中でISSを2024年まで運用延長するという米国提案の構想に参加する方向は実質的には決まっていたが、文書取り交わしによって日米政府が正式に合意した。

協力文書は、ISSを利用した調査研究活動が、技術や教育活動への理解やさまざまな科学領域における理解を増大させてきたことを評価している。さらに、「ISSにおける現在の日米協力は、政治的・戦略的・外交的重要性を踏まえた二国間協力の目に見える象徴となった」と、科学技術面の成果を超える意義を強調した。

また、「アジア太平洋地域における宇宙途上国を含むISS非参加者との国際的な協力を増大させることは、重要な共通の関心事項である」ことも明記された。これは「宇宙基本計画改訂工程表」に盛り込まれている「東南アジア諸国連合(ASEAN)との宇宙を活用した防災や経済分野協力を引き続き推進する」や、「気候変動問題に対応する活動の強化などを通じ、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)の機能強化を図る」といった日本政府の方針とも合致している。

日本政府の宇宙基本計画は、ISS計画を含む有人宇宙活動について次のように記している。

「費用対効果を向上させつつ、わが国が引き続き宇宙分野での国際的な発言力を維持するために、将来の人類の活動領域の拡大へ寄与しつつ、技術蓄積や民間利用拡大の戦略的実施等が効果的・効率的に行われることを前提に、これに取り組む。...2021 年以降2024 年までのISS 延長への参加の是非およびその形態の在り方については、他国の動向も十分に勘案の上、外交、産業基盤維持、産業競争力強化、科学技術等に与える効果と要する費用に関しさまざまな側面から総合的に検討を行う」

この記述にも表れているように、ISSに日本が参加する意義については、投資に見合うだけの十分な成果が得られているかどうかという議論がある。11月13日に開かれた政府の行政改革推進会議の会合に提出された資料によると、ISS参加で要した費用は、1987∼2013年の間で計8,260億円。来年度も約400億円の国費を投じる予定だ。一方、日本実験棟「きぼう」で実施された研究について評価結果が公表されているのは3件だけ、という実態も示されている。

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・2015年11月25日ハイライト・鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康 氏「選択と集中やりすぎると論文の質低下

・2015年6月22日レビュー「有人宇宙活動は何のために

・2008年6月25日オピニオン・澤岡 昭 氏・大同工業大学学長「国際宇宙ステーションは必要

・2008年5月21日オピニオン・鈴木一人 氏・筑波大学大学院 准教授「宇宙基本法で日本の宇宙開発は変わるか

・2008年4月21日レビュー「英王立協会会長が有人宇宙計画批判

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