全国の湖沼で魚介類減少、外来魚が脅威

全国の代表的な23湖沼の過去50年間の資源量の変化を農林水産省の漁獲統計データで解析し、ワカサギやコイ、ウナギ、シジミ、エビなど魚介類の生息数が減少傾向にあることを明らかにした。

全国の代表的な23湖沼の過去50年間の資源量の変化を農林水産省の漁獲統計データで解析し、ワカサギやコイ、ウナギ、シジミ、エビなど魚介類の生息数が減少傾向にあることを、国立環境研究所の松崎慎一郎(まつざき しんいちろう)研究員と角谷拓(かどや たく)主任研究員が明らかにした。資源量の減少や不安定化を引き起こす人為的要因のうち、魚食性外来魚の侵入の影響が最も大きいことを突き止めた。湖沼の資源量の現状と傾向を定量的に示した初めての研究で、湖沼生態系の管理や改善の手がかりになると期待される。1月19日付の米生態学会誌Ecological Applicationsオンライン版に発表した。

漁業資源を持続的に利用するには、資源量の状態や傾向を正確に把握し、影響する要因を知ることが重要だが、湖沼などの内水面の資源量を定量的に把握した研究は世界的にほとんどなかった。研究グループは、農林水産省の1958年からの「漁業・養殖業生産統計(毎年実施)」と「漁業センサス(5年ごとに実施)」の2つの統計に着目した。これらの統計データにはかなりの欠損値が含まれるが、欠損値を補完できる状態空間モデルと呼ばれる統計手法で、23湖沼ごとに漁獲物全体の相対資源量の長期的な変化をたどった。

過去10年(1998-2008年)、過去20年(1988-2008年)、過去30年(1978-2008年)の3期間における相対資源量の変化率と安定性を湖沼ごとに解析した。湖沼によって資源量の盛衰は異なっていたが、多くの湖沼で、資源量の減少傾向が浮かび上がった。過去10年間では17湖沼、過去20年間では19湖沼、過去30年間では15湖沼で相対資源量が減少した。半分以上の13湖沼では、いずれの期間でも相対資源量が減少していた。

人為的要因として、富栄養化、湖岸改変、外来魚の3つの影響を検討した。富栄養化は全リン濃度を、湖岸改変はコンクリート護岸率を指標とした。外来魚は、生態系への影響が大きい魚食性の外来魚7種(オオクチバス、ブルーギル、チャネルキャットフィッシュ、カムルチー、ニジマス、ブラウントラウト、カワマス)を対象とした。解析の結果、魚食性外来魚の侵入が資源量の減少と不安定化につながっており、魚食性外来魚の機能群数(類似した生態や機能を持つ種のグループ、7種の外来魚を5つの機能群に分類)が増加するほど資源量が減っていた。一方、富栄養化や湖岸改変が資源量へ及ぼす影響は小さかった。

松崎慎一郎研究員は「日本の多くの湖沼で魚介類は減少傾向にある。魚食性の外来魚は湖沼生態の脅威で、駆除に加えて、新たな侵入の防止を優先するのが望ましい。各湖沼で種ごとの動態研究が今後、必要になる。内水面の漁業資源の持続的な利用に向けて、社会経済的な分析や将来ビジョン設計なども含めて、より多面的に研究を進めたい」と話している。

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国立環境研究所 プレスリリース

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