日本を含む東アジアのほとんどの地域で、21世紀後半に月平均気温が2度以上上がる確率は70∼80%以上―。防災科学技術研究所と情報・システム研究機構統計数理研究所の研究者たちによる研究で、このような結果が得られた。
防災科学技術研究所社会防災システム研究領域の大楽浩司(だいらく こうじ)主任研究員と石﨑紀子(いしざき のりこ)特別研究員、統計数理研究所の上野玄太(うえの げんた)准教授らは、複数の全球気候モデルのシミュレーション結果を用い、気候変動を確率的に評価する手法を開発した。全球気候モデルというのは、地球の気候変動を数値計算により表現する計算式やコンピューターモデルを指す。研究者たちは21個の全球気候モデルによって得られたばらつきある実験結果の信頼性を確率的に定量化する手法を開発し、東アジアと周辺地域の気候変動確率地図を初めてつくった。
全球気候モデル21個の20世紀後半(1969-98年)と21世紀後半(2069-98年、低い人口増加で高度経済成長というシナリオ)データを用い、開発した確率モデルによって計算した
結果、70∼80%以上の確率で2度以上月平均気温が上昇する地域は、東アジアからインド、東南アジア、オーストラリア北部の大半に及ぶことが分かった。70∼80%に満たない地域は、タイ、ベトナム、パプアニューギニアなど一部の地域に限られている。
現在、最終合意案を巡って激しい議論の応酬が続くパリの国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)でも、気温上昇を何度で抑えるかは議論の焦点の一つ。「産業革命前から2度未満」というのがこれまでの国際目標だが、島国など一部の途上国からは「1.5度未満」にすべきだという声も出ている。
経済協力開発機構(OECD)はCOP21に先立つ10月に、各国が新たに表明した温室効果ガス排出削減目標を達成したとしても、2040年ごろには累積排出量が気温上昇を2度未満に抑えるのに必要とされる上限値を上回る、との報告書を発表している。
関連リンク
・防災科学技術研究所、情報・システム研究機構統計数理研究所プレスリリース「東アジアおよび日本における気候変動の確率地図を初めて作成」
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・2015年12月10日ニュース「名称は拘束力ある『パリ協定』交渉難航のCOP21で議長国が最終案を提示」
・12月7日ニュース「各国削減目標5年ごとに見直し COP21合意案」
・2015年12月4日ニュース「温暖化対策に工学の力生かせ 世界工学会議が京都宣言」
・2015年12月1日ニュース「温暖化防止の新枠組みで合意目指す COP21、厳戒のパリで開幕」
・2015年11月27日オピニオン・松下和夫 氏・京都大学名誉教授「COP21をきっかけとしてゼロ炭素社会への方向転換を」
・2015年11月4日レビュー「パリで人類未来に関わる重要会議 合意は予断許さないCOP21」
・2015年10月21日ニュース「新目標でも気温上昇2度未満は困難 OECDが報告書」
・2015年10月20日ニュース「COP21を控え最後の公式会合 議長案に途上国冒頭から反発」