18歳から23歳の若者が、ハフポスト日本版とともに国会議員や自治体の首長らを訪ね、率直に質問をぶつける企画「Young Voice」。田嶋嶺子さんは、山下雄平・参院議員、吉良佳子・参院議員にインタビューした。
◇ ◇
先日、ハフィントンポストのYoung Voiceという企画で、共産党の吉良佳子議員にお会いした。
慣れないライトに照らされ、国会議員の方にインタビューをするのは緊張したが、吉良さんが温かく受け答えしてくださったことによりなんとか無事に撮影を終えることができた。
初めてお会いした吉良さんの印象は、とても丁寧で物腰の柔らかな女性ということであった。お話を聞くと、昨年にお子さんが産まれたばかりとのことで、0歳児の育児と議員活動の両立に励まれていることに驚いた。
旦那さんは区議会議員とおっしゃっていたがどちらもお忙しいだろうし、並々ならぬ体力と覚悟で日々を過ごしていらっしゃるのではないだろうか。
そのため、今年初めから話題になっている保育園問題についても、当事者としてお話ししてくださった。近くの保育所の選考に落ちてしまったため、バスに乗って時間をかけて送り迎えしているそうだ。
小さい子供を連れて通勤ラッシュに乗ることの難しさや、それを知らず企業内に保育所を併設させようとしている世の中の無頓着さなど、リアルな親目線での声を聞くことができた。
このような意見が直接国会に届くということは、現在ある問題の緩和にとても役立つし、実際の子育て世代の国民にとっても頼もしいだろう。
女性の国会議員って...
お会いする前からぜひ吉良議員に聞いてみたいことがあった。
国会中継をみても映るのは男性が多く、日本の女性国会議員はまだまだ少ないという印象を私は持っている。
そんなおじさんばかりの中で、吉良さんのような若手の女性は、正直いろいろとやりづらくはないのだろうか?おじさんたちからの圧力やジェネレーションギャップは感じないのだろうか?ということがとても気になっていた。
稚拙な質問かもしれない(そもそも議員の皆さんを全員「おじさん」とまとめている時点でどうかと思う)。
しかし吉良さんはとても朗らかに、そしてはっきりと答えてくださった。
「いえ、そう感じたことはありません。みな国会議員という立場で、同じ権利が保障されているからです。議員バッジをつけていれば、質問する際も答弁する際も全員が同じように扱われるのは当然のこととして感じています」
これは、私にとって意外な回答であった。しかし、それと同時にとても心強い答えだった。
"若い女性というだけで、職場で不当に扱われたり嫌な思いをしないか"ということは、まだ就職もしたことのない私にとって気にかかる事柄だ。なかでも女性の比率が低い国会議員となれば、周囲との違いに戸惑ったり憤ったりすることも多いのではないか、と勝手に想像していた。
そんな先入観とは違って、胸を張ってはっきりと答える吉良さんは、それまでの優しい雰囲気とは打って変わって凛々しく、頼もしく見えた。
しかしその一方で、吉良さんはこうも続けておっしゃった。
「でもね、女性議員がまだまだ少ないのは事実で、女性の声をもっと届けていかなくてはいけないと思っています」
男性議員が女性の声を代弁できないわけではないが、確かに女性の数はまだまだ少ない。社会の半分は女性のはずなのに、政治の世界においては女性はまるで希少種のように扱われている。
また、当事者のストレートな言葉は、どんなに雄弁な政治家にも劣らず人の心を動かす力があるはずだ、ということも感じた。
その点で言えば、吉良議員は政治家であり女性でもあるのだから、鬼に金棒、いや、スーパーモデルにハイヒール、くらいの威力を持つだろう。
大事なのは、当事者の声と多様性
お話を聞いていると、吉良さんの関心事は多岐にわたっていて、さらにその根本にはご自身の苦い経験があるということがわかった。
先ほど挙げた保育園の話やジェンダーの他にも、たくさん私たちと似た経験をされていた。
大学生のときには就活で7次面接まで進んだ末に落とされてしまい、その後も何社もエントリーしたのに内定が1つしかもらえなかったとおっしゃっていた。
また、夫婦別姓についても賛成だそうだ。ご自身もお子さんが生まれるまでは事実婚状態だった(結婚式もきちんと挙げた上で、だ)が、子供の戸籍のことを考えて籍を入れることにしたのだそうだ。
このように、実際に不便な思い、理不尽な思いを経験されているからこそ、吉良さんの主張は説得力があった。テレビで見る、政治家のうさんくささがなかった。
たとえば、現在ある非効率で企業が有利な就活制度は変えていかないといけない、という言葉には、憤りと力がこもっていた。
苗字についても、戸籍と違う名前で政治活動をしなければならない、銀行をはじめとして様々な手続きもしないといけないし、姓を「変えない」という選択肢が認められないのは理不尽だ、と実感をもっておっしゃっていた。
なんでだろう?おかしいんじゃないか?という疑問を熱意やパワーに変えられることはなにより吉良議員の強みだと感じた。そしてそれと同時に、実体験を通じた「自分の言葉」は大きな訴求力を持つのだ、ということも目の当たりにした。
これからの政治を考えた時、吉良さんのように多様なバックグラウンドをもった当事者がどんどん活躍してくれるといいな、と思う。みんな似たようなおじさんがそれぞれ口あたりのいいことばかり言っているような現状では、心がこもっていないように感じてしまうし、政治は遠いものに感じられてしまう。
そうではなくて、「今わたしはこんなことに困っています!」「こういうところを変えないといけない!」と周りに伝えられる人がいい。いまの社会にどんな問題があるのか、政治家自身の目で見る人がもっと増えて、有権者とお互いに問題提起しあえるような関係が続くといい。
そこで初めて、社会にある様々な意見がちゃんと政治に反映される世の中につながるのではないか。バラエティに富んだ、自分の言葉を持つ政治家がどんどん増えていってほしい。
〜後日談〜
取材の数日後、たまたま地下鉄の駅で吉良議員をお見かけした。勇気を出して声をかけてみると、ニコっと笑いかけてくださり、とても優しく、そして気さくに再びいろいろとお話ししてくださった。
なにより、「国会議員も地下鉄に乗るんだ...」と驚いたし、「あ、バス通園も本当なんだ」と、より一層親しみを覚えた。
公務車がどうとか、秘書がどうの、とかそういったイメージばかりある政治家だが、吉良さんのように自分で子育てをしながら、一人で地下鉄に乗って永田町に向かう人もいるのだと知った。
ドトールの紙袋を持って、議員会館の方へ向かう吉良さんの姿は、どんな偉そうな政治家よりも政治家らしく、普通の社会にいる有権者の声を届けてくれそうだと頼もしく感じられたのが印象深い。
【関連記事】