「炭水化物抜きダイエットの落とし穴とは?」というネットニュースに、糖質制限ダイエットの盲点が2つ挙げられていました。それを読んでいて、なんだかちょっと物足りなかったので、私の周りに少なくとも2人いる「経験者で、しかもあまりうまく行かなかった人たち」に、何が問題だったか、ちょっと聞いてみました。
堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集員
まず最初に、個人的にいつも気になってしまう用語の問題をさくっと整理しておきます。糖質摂取をできるだけ控える減量法、いわゆる「糖質制限ダイエット」「低糖質ダイエット」は、なかなかの市民権を得ていますが、それと同じ意味で様々な呼び方が使われています。
その中でも、「炭水化物抜きダイエット」「低炭水化物ダイエット」「ローカーボ・ダイエット」は、既にかなり浸透しているものの、厳密に言えば間違っているのです。下記の通り、「炭水化物」には食物繊維が含まれます。食物繊維は血糖に影響せず、むしろ等の吸収を緩やかにするダイエットの強い味方。糖質と一緒くたにしてはいけませんよね。
(兵庫県健康財団)
で、本題ですが、ネットニュースでは、糖質制限ダイエットの落とし穴として、以下の2つを挙げています。
➀「炭水化物が多い野菜は意外に多い」
厳密にはこれも、「糖質が多い野菜は」とすべきなのでしょうが、ともかく、
カボチャ、トウモロコシ、レンコン、芋類、ユリネ、豆類(大豆以外)などです。これらの食品は、「糖尿病食事療法のための食品交換表第7版」では米やパンなどと同じカテゴリーに分類されているほど
糖質が多く、それを知らずに「野菜だから」とたくさん食べてしまう人も多い、と説明されています。うん、それは確かにいるかもしれませんね。芋類はさすがに分かりやすいですが、レンコンなどの根菜やタンパク源のイメージが強い豆類は、油断なりません。
②「かえってエネルギーを取りすぎているかも?」
仮に1食のごはんが250グラム(茶碗1.5杯程度)だとすると、エネルギー量は420キロカロリー。これをもし「鶏のからあげ」に置き換えてみると約5個分。つまり5個未満でないと総エネルギー量は同じになってしまいます。からあげをうっかり食べすぎてしまうと、「ごはんの代わり」どころか、ごはんを食べるよりエネルギーを多く取ってしまうことになりますね。
つまり、「主食を食べない」という安心感が、「うっかり食べすぎ」につながる恐れがあるということです。
これなんですが、ちょっと気になりました。食べ過ぎの理由を、主食を食べない「安心感」からの「うっかり」にだけ求めている、つまり、不注意だとしているのです。確かにそういう人もいるでしょうが、そもそも食べ過ぎるのは、不注意と言うより、食欲との闘いに負けてしまうから、と言うのが普通ではないでしょうか。
そう思って失敗経験者に聞いてみると、やはり「ご飯やパン、麺類を食べないから、どうもお腹がいっぱいになった気がしないで、ついつい食べ過ぎてしまう」と言うのです。
それもそのはず。「ああ、お腹がいっぱいになった」「もう食べなくていいや」と感じるのは、脳の視床下部というところにある満腹中枢と摂食中枢の働きで、その両者を働かせるのが主にブドウ糖だからです(詳しくはこちら)。ブドウ糖は糖の最小単位で、デンプンや砂糖の分解によって生じます。つまり、ご飯やパン、麺類などの糖質を摂らないと、満腹感をなかなか得られない、ということ。食べ過ぎて当然なのです。
しかも、食べ過ぎは肥満だけでなく、様々な生活習慣病への近道です。(詳しくは、ロハス・メディカルの特集記事「食べすぎ なぜいけないのか。」をどうぞ)
さらに、経験者でその後リバウンドしたもう一人は、「ご飯とか麺とか、大好きなのに、食べないでいるのは、すごくストレスだった」と言っていました。
実はこのストレスこそ、ダイエットの最大の敵、という話もあります。コルチゾールというストレスホルモンの過剰が、いわゆるストレス太りを招くとされているのです。
それに、好きなものを我慢した状態は、長くは続けられない、ということ。一時は糖質を制限してダイエットに成功したとしても、一生糖質をカットするというのは、なかなか難しいもの。ある程度の減量目標を達成できたら糖質を解禁する、という人が多いのではないでしょうか。すると、それまで我慢していたストレスも相まって、ついつい食べ過ぎてしまい、リバウンドするのは想像に難くないですよね。
あるいは食べ過ぎなくても、これまでほぼほぼ糖質ゼロ状態で慣らされてきた体にしてみれば、いきなり糖質がどっと流れ込んできたら、敏感に反応して一気にインスリンがドバドバ出そうです。インスリンは脂肪をため込むホルモンですから(詳しくはこちら)、これまた太る原因になって、やっぱりリバウンドしてしまいそうです。
というわけで、糖質制限ダイエットは相当の覚悟があり、それを長年にわたって保てるストイックさがないと、難しそうに見えます。「成功しやすい」というイメージもあるかもしれませんが、正しくやらなければ失敗してリバウンドしたり、体を壊したりするのは、他のダイエット法と変わりません。安易に始める前に、よくよく考えたほうがよさそうです。
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(2017年10月25日「ロバスト・ヘルス」より転載)