"働くこと"での困ったを打開するためのポイント
~これから国会で審議される"労働時間規制"の何が問題なのか!?~
「長時間労働は当たり前」「過労死なんて人ごと」...と思っていませんか?
私たちは仕事をする上で「労働基準法という法律に守られているから大丈夫なのでは」...と思っていませんか?
その労働基準法の根幹ともいえる「労働時間に関する規制」が、今まさに国会で改悪されようとしています。「多様で柔軟な働き方を実現する」という名のもとに、管理監督者でもないのに、労働時間規制の保護をなくそうとする大変危険な「高度プロフェッショナル制度」(ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入など、大幅な労働時間規制の取り外しが行われようとしているのです。
連合は集会やデモ行進、街宣行動などにより反対運動を続ける以外に、法案を審議する場(審議会)でも、労働者の代表として反対意見をぶつけてきました。
本来、雇用に関する法律は下記のような経営者などの使用者や、大学教授などの有識者、連合などの労働者が参加し、「公(公益)・労(労働者)・使(使用者)」の三者の代表で議論される仕組みなのですが・・・
今国会で審議が進められようとしている法案では従来の仕組みを無視し、労働者の代表がいない場所でまず枠組みを決めてしまいました。
では、長時間労働の実態はどうなのでしょうか。
早速ですが、あなたは、下の時計のような働き方をしていませんか?
この時計通りだとしたら、その先には恐ろしい現実が・・
毎年、労災で過労死認定されているだけでも100名を超え、その異常さは「KAROSHI」が世界共通語になるほど、海外に知れ渡っています。
こういった過労死を引き起こす最大の原因が長い労働時間です。リーマンショックの年を除くと、ずっと年間2000時間を超え続けています。
海外と比較してみてもその長さは一目瞭然です。
労働時間と対に語られる有給休暇も、正社員の16%が年に1日も取得しておらず、平均でも8.1日と決して十分に取得されているとは言えないことがわかります。
さらに、時間外労働に対して払われる割増賃金についても、グラフを見ての通り、海外と比較して割増率が低いという実態が浮き彫りになっています。
たしかに労働基準法には労働者を守るための「1日8時間、週40時間」という規制があるものの、36協定を結べばその規制を超えるような長時間労働が労働基準法上許されてしまっていることから、結果的には労働時間の上限規制は存在していないともいえる状況になっているのです。
現在ですらこのように課題が積みあがっているにもかかわらず、今国会で審議が進められようとしている法案は、「改悪」といわざるをえない内容となっています。なんと、審議会に参加していた労働者代表からの反対意見に耳を傾けず、「高度プロフェッショナル制度の導入」や「裁量労働制の対象業務の拡大」など、長時間労働をさらに助長する仕組みづくりを強行しようとしているのです。
連合ではこの「改悪」を防ぐために働く皆さんの代表者として審議会で声を上げることに加えて、時間外労働を含めた労働時間に一定のキャップをはめる「労働時間の量的上限規制」と、勤務間に十分な休息を取れるようにする「休息時間(勤務間インターバル)」を導入すべきと訴えています。
苦しむ労働者も、残され悲しむ家族もこれ以上増やさないために、連合は声を上げ続けていきます。
※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年5月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。