家族に憎しみを抱かせてしまう介護の実態とは

1994年、連合が実施した「要介護者を抱える家族についての実態調査」の結果は衝撃をもって受け止められた。

【介護をめぐる課題と連合の取り組み】

1994年、連合が実施した「要介護者を抱える家族についての実態調査」の結果は衝撃をもって受け止められた。家族介護者の34.6%が要介護者に「憎しみを感じる」と回答したからだ。その後、介護保険制度が創設され、高齢者虐待防止法もできた。しかし、昨年(2014年)、連合が実施した「要介護者を介護する人の意識と実態に関する調査」では、依然として35.5%の介護者が、要介護者に「憎しみを感じる」と回答している。介護者は、どんな実態に置かれているのか。意識調査の結果を報告する。

(2014年2月〜4月実施) 総計(N=1381)

要介護者について

要介護者は80歳代が半数近くを占め、90歳以上も約14%。平均年齢は81.5歳。介護者は約4分の3が「子またはその配偶者」で、平均年齢は53.1歳。要介護者の6割弱は医師から認知症との診断を受けているが、診断されていない人も約3分の2に何らかの症状があり、合わせると要介護者の約8割に認知症の症状が出ている。

介護保険サービスについて

介護保険サービス全体への〈満足〉は60.8%と高いが、在宅介護が困難な要介護者や認知症の症状が進んだ人を抱える介護者では〈不満〉が51.9%。利用したサービスのトップは[通所介護・リハビリ]で、以下、[福祉用具貸与][住宅改修][福祉用具購入][訪問介護][短期入所]。ケアプランに対する評価は、〈満足〉(75.4%)が〈不満〉(13.8%)を大きく上回っているが、認知症の急増にケアマネージャーが対応できていない現状も浮かび上がった。

認知症の進んだ要介護者を抱える人は、多くが〈在宅介護を続けられない〉と困難を訴えている。「家族や知人がわからない」「道に迷って家に帰れなくなる」「暴言を吐く」「夜眠らずに騒いだりする」「徘徊する」といった重度の症状を示す人が増えており、介護者の「体調悪化時」や「長期的」に預かる施設の新設・充実、「早期発見・早期治療」「専門の医療・介護施設」といった認知症対策に要望が集まっている。

介護保険サービス全体の満足度と〈不満〉の理由(3つ以内選択)

介護者の負担、必要な支援について

介護に〈ストレスを感じている〉人は約8割、また、〈憎しみを感じている〉人も3割を超えている。虐待の経験が〈ある〉人は少数だが、それでも1割強が経験者。現在の介護保険サービスの範囲では「家族の負担が軽減されない」という不満が強く示された。

介護者の要望は、「緊急時の相談・支援体制の充実」「夜間などのヘルパーの利用」といった緊急時支援、「生活援助の保険適用拡大」「低所得世帯向けの助成」などの家計支援、「介護者が休養できる支援策の拡充」「介護者の健康管理施策」、サービス利用のための情報提供や制度の活用方法に集まった。

介護保険制度創設や介護保険サービス全体への満足度は高いが、急速な高齢化や認知症の増加に対するサービスとマッチしていない現状が読み取れる。現行制度に加えて認知症を対象とする介護サービス在宅介護を支える短期入所や定期巡回・随時対応サービス、小規模多機能型居宅介護など新たな介護保険サービスの見直しや市町村事業などの充実が求められている。また、家族など介護者の負担軽減につながるレスパイトケアや専門的ケアなどの充実についても、自治体など地域全体による支援が必要とされている。

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年7月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。

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