先週、ある代理店の立場ある方と食事した。立場あるとは言え、お互い若い頃から知っているお友達みたいな関係でもあるのだけど。名前を言っちゃうのもアレなのでエヌ氏としておこう。星新一の小説のように。
エヌ氏は10日間ほどNYに行っていたそうだ。そこで開催された全米広告業界が集まるカンファレンスに参加するためだという。いいなあ、代理店!
そして今年のそのイベントのビッグイシューは、ひとつはやはりビッグデータだったそうなのだが、もうひとつはなんと!ソーシャルテレビだったそうだ。
ぼくはここで何度も書いてきた通り、ソーシャルテレビ推進会議という勉強会を運営している。去年の4月に十数名ではじめたのがいまや、名前を連ねてくれている人で200名を超えている。だからぼくの周囲ではソーシャルテレビが盛り上がっているのだけど、ぼくの周囲だけみたいなのだ。一歩、"ぼくの周囲"を出ると、はい?ソーシャルテレビ?なんでしたっけ、それ?という感じ。ピントズレてるのかなあ、おれ?
などと不安になる必要はないとわかってぼくは小躍りしそうにうれしかった。ちょっと早過ぎただけなんだな。
しかもエヌ氏がさらに言うのを聞いてホントに踊り出しそうになった。「ソーシャルテレビはzeeboxで決まりだね、って感じでしたよ」・・・ワオ!
このところ散々告知しているがもう一度書いておくと、11月1日にソーシャルテレビ推進会議の主催で"ソーシャルTVカンファレンス2013″と題した催しを開催する。そのキーノートスピーチをお願いしているのが、他ならぬzeeboxのCTO、AnthonyRose氏なのだ。前にも出したけどもう一度、アンソニーの写真を出すよ!
(これまでと違う写真を使ってみた。こうして見るとなかなかいい男だなあ!)
zeeboxは、テレビを見ながら使うサービスだ。PCの人はここをクリックして実際に見てもらうのがいちばん!→zeebox site (スマートフォンで見るとアプリをダウンロードしろと言われ、でも対象国じゃないからダウンロードできない、という流れになってしまうので、ご注意を。)
番組を見ながら起ち上げると、音声認識でいま観ている番組を判別してくれる。多チャンネルが普通である欧米ではこれがミソ。いま観てるのなんだっけ?という視聴者に瞬時に答えてくれるのだ。もっとも日本では地上波が強いので自分が観ている番組がわからない、ということはあまりないだろうけど。
さらにzeeboxは、出演者や番組に登場するキーワードを"zeetag"として表示する。zeetagを押すとその詳細がわかる。そのうえ、番組に関するツイートも表示してくれる。テレビを観ながらスマートフォン上であちこちのアプリやWEBを使ってやっていたことを、ひとつのインターフェイス上でできてしまうのだ。
エヌ氏の言う通り、欧米ではzeeboxがソーシャルテレビのデファクトスタンダードになっているのなら、そこで様々なビジネスも動いているのだろう。
もちろん、そこで重要なのが広告ビジネスだ。
日本でサイトだけ見ていても、zeeboxでどんな広告ビジネスが展開できるのか、いまひとつわからない。そこは来日した時にじっくり聞いてみたいところだ。
zeeboxに限らず、あるいはソーシャルテレビに限らず、テレビとネットの融合は広告の融合でもあるはずだ。実際に融合した時、あらゆる局面での変化が起こるだろう。それは広告主にとってもコンテンツ制作にとっても、プラスに働くとぼくは考えている。
例えばテレビCM。認知獲得のためにはいまも最も有効だが、一方で認知以上のことができない。ソーシャルテレビ的にテレビとネットが結びついたら、テレビCMを見て興味を持ったらすかさずその商品のサイトに誘導する、なんてことが可能になるはずだ。セカンドスクリーンにはその可能性を具体化する道筋が見え隠れする。
効果測定もテレビからネットへの流れをシームレスに追うことができるようになるだろう。そうすると、CMをどれくらいの人が見て、そこから商品のサイトにどれくらい来て、最終的に何人が試供品を申し込んだ、とか、来店クーポンを使った、といった流れが分析できるのだ。広告がものすごく具体的になるだろう。
また、そうなってくると、広告はこれまでと同じ形でいいのか、という議論も出てくる。番組の隙間や間に、視聴者に申し訳ない感じで広告枠が出てくる、ということでいいのか。しかもテレビが録画されると広告はびゅんびゅん飛ばされるのだ。それでは意味がない。
広告とコンテンツの境目をなくそう、コンテンツとして十分面白く、結果として企業の伝えたいことも伝わるような作り方、ブランドコンテンツの試みがあちこちではじまっている。テレビとネットの融合がそれをさらに求め、加速すると思う。
ソーシャルテレビという言葉は、そんな大きな動きの象徴のようなつもりだ。テレビを見ながらツイッター、ということ以上の、メディアとコンテンツと広告の行く先を見つめるためのキーワードとして、ソーシャルテレビはある。そんなことに興味を持ってもらえて、あなたも11月1日のイベントにぜひ来てもらえたらうれしいなあ。
(※この記事は、2013年10月7日の「クリエイティブビジネス論!~焼け跡に光を灯そう~」から転載しました)