来年度予算の概算要求で、前年比9,000億円以上の増額予算となっている省庁が2つあります。ひとつは厚生労働省です。もう一つは国土交通省です。厚生労働省の予算が上昇している理由は年金・医療に係る自然増の経費が8,200億円となっているので明白です。まさに社会保障と税の一体改革が必要とされている所以です。
では国土交通省の予算が増えている理由は何でしょうか?平成27年度の概算要求予算のうち公共事業関係費は約6兆円となっており、前年比16%の増額です。絶対額では約1兆円の増額となっており、公共事業費が伸びることによって予算が膨らんだことが明らかです。
私は公共事業費が全て無駄などというつもりは一切ありません。公共事業には治山治水、公園、廃棄物処理など必要不可欠なものが多く、単に削れというのはナンセンスです。自然災害が多発する中、むしろ治山治水など負担と効果がはっきりと分かるものについては積極的にそれを開示して、「これを治すためにこれだけのお金が必要だ」と堂々と国民に主張して、負担をお願いするのが正論というものです。しかし概算要求レベルではそのような情報は全く分からず、政府予算が成立後に「個所付け」という形で初めて開示されるため、なぜ増額されるのかの根拠が現状全く見えません。
そもそもこれだけ財政赤字が深刻な状況で、内訳も示さず「9,000億円の増額よろしくね」というのはあまりにも国民に対して乱暴な姿勢と言わざるを得ません。開示されていないということは、そこに巨大な無駄の山が潜んでいることが多いのです。
事実、公共事業ではないものの、民主党政権の時に事業仕分けで廃止と判定された国土交通省の事業が安倍政権になって見事に復活している例もあります。例えば観光庁の「ユニバーサルツーリズム促進事業」なるものがあります。これは平成22年11月15日に私が責任者を務めた事業仕分けにおいて廃止と判定した事業です。当時の事業の名前は「ユニバーサルツーリズムネットワーク構築支援事業」と名前が変わっています。たとえ金額が小さくとも、無駄なものは無駄です。
事業内容も記述は違えど予算内訳は4年前とほとんど同じ。むしろ仕分けられた事業よりも予算が増額しているだけタチが悪いです。つまり、結局予算の縮減の取組みが全てなし崩しになり、かつて国の事業として不要と判断されたものがゾンビとして生き返っているのです。これでいいのでしょうか?行政改革は全くのおざなりになっています。
国の無駄遣いを正せという声が、アベノミクスという「ええじゃないか」の声にかき消されているような印象です。その行き着く先は財政破綻です。国民はハーメルンの笛に踊らされているのです。
霞ヶ関の官僚も、それぞれ自分の部署の予算を増やすこと、そして法律を通すことが最重要であるのでしょうが、今の安倍政権の姿勢で本当に国は大丈夫なのですか?「ええじゃないか」で集団無責任体制になっていませんか?そんなことは財務省に任せているでは通用しませんよ。国の行政を担う立場としての矜持はないのですか?政治家が決めたらか従うしかないというのなら、霞ヶ関そのものが最大の無駄です。この年末年始、胸に手を当てて良く考えて頂きたいものです。