7月29日に国際連合は、2015年版の世界人口推計を公表している。2012年版では、主要国の中で人口減少に転じている国として、日本以外にロシアやドイツを確認することが出来た。
しかも、寒冷地で高濃度アルコールを摂取するために、男性の平均寿命が短いとされるロシアと比較すれば、日本の人口減少はややペースが鈍かったのである。
2000年を100とした指数を図表で見ると、2012年推計で示されたもっとも遠い将来である2070年において、日本の人口は77の23%減と見込まれていたのに対し、ロシアは75と25%減少になっていた。
また、ドイツは78とほぼ日本と同様のペースで減少する見込みであった他、一人っ子政策の影響から中国の人口も減少に転じるとされていた(なお、世界全体では、アジア・アフリカ・中南米の人口増加で168と大きな増加を予想されていた)。
2000年を100とした指数を同様に2015年推計で見ると、2070年時点で人口減少となる主要国は、2012年推計の4カ国に加えて、韓国・イタリアの2カ国が加わる。更に、新しく公表された2100年時点を見ると、スペインも人口減少となる。
2100年時点で、世界全体では183と人口増加が継続しているものの、インド・インドネシア・メキシコ・ブラジルといった国々でも、既に人口減少のはじまっていることが確認できる。順調に人口が増加を続けるのは、英国・フランス・米国くらいである。
人口減少の進む国々の状況を確認すると、2012年推計の2070年時点で75だったロシアは、2015年推計では82と減少ペースが鈍化しており、また、ドイツも、2012年推計で78だったものが84となり、同様に鈍化が確認できる。
2100年時点でも、ロシアは80と2012年推計のような落ち込みを回避し、また、ドイツも77と減少ペースを遅らせている。
ところが、日本の2070年時点は、2012年推計の77に対し、2015年推計でも76と鈍化は見られず、そのまま2100年の66という水準になる見込みである。なお、中国は2015年推計を見ると、2100年時点で79と急速に悪化する。
しかし、中国の場合には、統計外人口の存在が確実であるし様々な統計の真正性に疑念が残る。いずれにせよ、他国の状況を見て胸を撫で下ろすことは、日本には許されない(*1)。
人口の減少は、生産年齢人口の減少という形で実質経済成長を押し下げるだけでなく、生産に従事せず経済の負担になる高齢人口の増加の面でも、労働生産性を押し下げる。
また、従来の人口配置に沿って提供されていたサービスについては、公共サービスも含めて再配置の検討が余儀なくされるだろう。
日本の2100年時点の人口は8千3百万人台という見込みであり、66という指数が示すように、まさに2000年当時の3分の2しか人口が存在しないのである。
しかも、65歳以上の高齢者が生産年齢人口に対する比率は、2000年の36.0%から2100年には69.2%と大幅に上昇している見通しである。
具体的な人口構成を見ると、15歳未満の若年層が1千万人強で、生産年齢人口が4千2百万人少々、65歳以上の高齢層が3千万人弱という姿になっている。
生産年齢人口に属する全員が実際に労働に従事できるものではないが、ほぼ生産年齢人口の一人で若年か高齢かどちらか1人を支える社会が到来するのである。
果たして、それがサステイナブルな社会なのか。その時にも、経済成長は可能なのか。私たちの子孫の時代に向けて、今なすべきことを真剣に考える必要がありそうだ。
(*1) 日本以上に人口減少する見込みの国は、台湾・アルメニア・ジョージア・ブルガリア・ポーランド・モルドバ・ルーマニア・ウクライナ・エストニア・ラトビア・リトアニア・アルバニア・ボスニアヘルツェゴビナ・クロアチア・セルビア・プエルトリコ・米領バージン諸島・バミューダ・北マリアナ諸島だけである。
【関連レポート】
(2015年9月18日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 主任研究員