真の「男女平等」の社会像とは?-「ジェンダー・ギャップ」を読み解く:研究員の眼

だれもが「幸福」を実感でき、単純に統計指標には表れない真の「男女平等」の社会像を解き明かすことが求められる。

アメリカのトランプ大統領訪日とともに大きな話題になったのが、大統領補佐官を務める同大統領の娘イヴァンカ・トランプさんだ。東京で開催された「国際女性会議WAW!(WAW!2017)」に出席し、自らも3人の子どもを育てながら働く女性として、女性の社会進出の促進を訴えた。

同会議は安倍政権の最重要課題のひとつである「女性が輝く社会」を実現するために2014年から開催されており、会場には安倍首相も姿を見せ、「女性の活躍推進」を主導する政府の姿勢をアピールした。

同時に世界経済フォーラム(WEF)が2017年版「ジェンダー・ギャップ指数」(GGI)を公表したが、日本は昨年の144ヵ国中111位から114位へと後退した。

同指数は男女格差を経済、政治、教育、健康の4分野14項目で評価するものだが、とりわけ日本は政治分野での女性進出の遅れが目立つ。

人口の約半数を占める女性の多くが、政治の意思決定に直接関わっていないことは深刻な問題だ。海外では、議員の一定割合を女性に割り当てるクォーター制を採用している国もあるほどだ。

ただし、同指数だけで日本社会の男女不平等の全体像とみなすことは早計に過ぎる。

国連開発計画(UNDP)が公表している「ジェンダー不平等指数」(GII)は、「リプロダクティブ・ヘルス」(性と生殖に関する健康)、「エンパワーメント」、「労働市場への参加」の3つの分野で、国の人間開発(*1)の達成が男女不平等によりどの程度妨げられているかを算出、日本は2015年に159ヵ国中21位となっている。

同指数にも国会議員の女性割合や両性の中等・高等教育の達成度などの指標が使われている。

内閣府男女共同参画局のホームページには、「男女共同参画に関する国際的な指数」が比較掲載されている。いずれの調査においても北欧諸国が上位にランキングされているが、日本のように調査ごとに大きく位置づけが異なる国もある。

ルワンダは日本とは逆にGGIでは2017年144ヵ国中4位だが、2015年のGIIでは159ヵ国中84位となっている。各調査の特性を十分理解したうえで、国ごとの男女不平等のもたらす課題を抽出・検討し、その解消に努めることが重要だろう。

男女格差は女性が不利なケースばかりではない。日本男性の平均寿命は女性に比べて6年以上短く、世界価値観調査などにみる日本男性の主観的幸福度は女性より低い。

男女平等とは男女間に全く差異がないことを意味するものではなく、「部分最適」の集合が「全体最適」になるわけでもない。

男女のいずれにとっても不当な格差の是正に努力することが重要であると同時に、だれもが「幸福」を実感でき、単純に統計指標には表れない真の「男女平等」の社会像を解き明かすことが求められる。

(*1) 「人間開発」とは、『人々が各自の可能性を十全に開花させ、それぞれの必要と関心に応じて生産的かつ創造的な人生を開拓できるような環境を創出すること』(国連開発計画:UNDP)

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(2017年11月14日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

社会研究部 主任研究員