注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状には個人差があり、診断基準には議論があります。集中が続かない、動き回ってしまうといった行動が大きな特徴とされていますが、大阪大学などの研究班は視線を動かす眼の動きを観察し、ADHDのある子どもは、そうでない子どもよりも目標に眼を向ける動きが遅かったことなどを報告しました。
◆5歳から11歳の子ども125人を比較
次の対象者が研究に参加しました。
ADHDのある子ども37人(5歳から11歳)および健常児88人(5歳から11歳)に、ステップ条件・ギャップ条件をランダムに差し挟んだ単純な断続性眼運動タスクを行ってもらった。
5歳から11歳でADHDのある子どもと、ADHDではない子どもが、それぞれ目標に視線を向けるタスクを行いました。目標は対象者の目の前に置いた画面のどこかに表示され、ひとつの目標が消えると同時に次の目標が現れるとき(ステップ条件)と、少し遅れて次の目標が現れるとき(ギャップ条件)の反応がそれぞれ記録されました。
◆ADHDのある子どものほうが反応が遅い
次の結果が得られました。
ADHDのある子どもは、健常児に比べて反応時間が有意に長く(P
全体としてギャップ条件のほうが速く反応される傾向がありましたが、ADHDのある子どものほうが反応が遅く、かつステップ条件とギャップ条件の違いが小さくなっていました。
研究班は「これらの結果は断続性眼運動がADHDの臨床像と行動症状を評価する新たな手法を生み出しうることを、またギャップ効果が小児期の早い時期におけるADHDの診断のためのバイオマーカーとなりうることを示唆する」と結論しています。
ADHDのように、行動に現れる特徴は生活環境などによって非常に多様になり、評価は簡単ではありません。こうした基準が確立されれば、より適切なケアを考える手掛かりになるかもしれません。
MEDLEYの注意欠陥・多動性障害(ADHD)ページでは、医師たちによるさらに詳しい疾患情報も紹介しています。下記のADHD関連記事とあわせてご活用ください。
◆参照文献
Gap Effect Abnormalities during a Visually Guided Pro-Saccade Task in Children with Attention Deficit Hyperactivity Disorder. PLoS One. 2015 May 27
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