今後の大学のあり方とは - 6/16 TEDxTodai開催に向けて

TEDxUniversityを日本では東大で始めることで、大学から日本社会を変えていく、という一つのあるべき姿を体現し,国際基準の中で学術の有効なアウトリーチにも繋がる新しい"祭"になると考えた。そして立ち上げを決心した。

日本初の大学版TEDxとして始まった東大におけるTEDxが、TEDxTodai2013として6月16日(日)に2回目の開催を迎える。現在オーディエンス一般募集を行う中,一人の学生として今後の大学の取るべき方向性を考え,発起人で昨年の代表としてTEDxというアプローチについて書かせていただきたい。

大学とはどうあるべきかー

大学は人材と知識、技術が集まる場であって、新しいアイディアを生み、これまで以上に社会にインパクトを与える大きな可能性を秘めている。

FacebookやTwitterをはじめとしたSNSが我々の日常に深く浸透し、ITに限らず幅広い分野のスタートアップの情報が入るようになってから久しい。世界に新たな価値を提供し続けてきたシリコンバレーはスタンフォード大学の技術移転をきっかけとして成立していることは広く知られているが,欧米の多くの先端産業地域が、歴史をさかのぼると大学を背景に形成されていることを知った時、大学の社会的な役割に関して、技術のマネジメントに関心がある私は興味を駆り立てられた。わくわくしたのだ。

新しい知見は、異なる学問分野やアクターが融合した時に生まれやすいと言われる。先進的な研究と多彩なアウトプットで有名なMITメディアラボも工学と芸術の融合をコンセプトに掲げ設立されたことも一例として挙げられる。

しかしながら、日本の現状では、大学では分野間、世代間の壁、そして社会との壁が厚く,情報発信と連携の大きな障害となっている。私たちの多くは,すぐ隣の建物にいる教官は知らないし,日々大学に行くというよりは、単に"授業"に行っていたり、"研究室"に行っていることが多い。いくらインターネットによるコミュニケーションが盛んになったとはいえ,結局は人と人が文脈を持って出会うことが新たな価値を生んでいる。知見が社会から埋もれ、人と人がすれ違ってしまっている現在の大学はとても"もったいない"状況にある。若い世代からベンチャーを始めることが増えてきた中でも、この環境からは新たなウェブサービスも生まれにくい。

決して学術の資本主義化、アカデミック・キャピタリズムを標榜している訳ではない。知の先端を押し広げる教授から、将来の道筋を模索する学生まで、分野・世代・国籍を超えてひとつ狭い場所に集まることのできるのは大学しかない。次代を担う人材の育成機関として、多くの人々が一度通るこの場所を介して、文学、理学、法学、医学といったあらゆる学術のみならず、社会を構成するビジネス、政府、文化など多様な領域の人々が、専門性を持って若者の考えと行動力を取り込みながら相乗効果を生み出せば,国際社会の中で今後の日本を力強く牽引する一つの原動力になると信じている。

ただ、一部の方が表現するところの、「実用に直結しない学問」を醸成する役割も担ってきた大学を、社会的な要請の中で失ってはいけない。逆にその価値をも再確認する場を作らねばならない。今求められているのは、 社会に向けてオープンに人材や知識が出入りすること、つまり、学問分野同士、アカデミアと社会、研究とイノベーションを繋ぐ、媒体としての大学だと言えるのではないだろうか。

私は、大学2年時に、大学発の技術シーズを育てるVCである東京大学エッジキャピタルにてインターンをし、東大における産学連携の勢いに触れた。学科からのプログラムでMITでの研究を垣間見て、実際にシリコンバレーでインタビューし、日米の特色の違いを目の当たりにする中で,日米の大学に関して課題意識を持ち始めた。これまでのような国や大学によるトップダウンの改革ではなく、大学のあるべき姿を作るには、学生からも推進していくことが必要だと考えるようになった。

そんな折に,HPAIRという国際会議に参加し、イギリス人の友人からTEDxという取り組みを聞かされた。Technology, Entertainment, Designの頭文字を取り"Ideas Worth Spreading" を標語とするカンファレンスとして世界中で有名になっているTED。年一回、カリフォルニア州で行われる数多くの講演は動画で配信され,私も観ることも多かった。TEDxはTEDによるライセンスのもと、世界中の都市で独自運営され始めたカンファレンスであるという。主催するという発想がなかったため,ふーん、とその時は聞いていたが、よく考えると異分野の集合体であるTEDは、リベラルアーツの観点で大学との親和性が高いな、と思えた。実際,欧米の大学内でちょうどTEDxが小規模で開催され始めていた頃でもあった。

TEDxUniversityを日本では東大で始めることで、大学から日本社会を変えていく、という一つのあるべき姿を体現し,国際基準の中で学術の有効なアウトリーチにも繋がる新しい"祭"になると考えた。そして立ち上げを決心した。

構想を練り、様々なバックグラウンドを持つ東大生を中心に、社会人の方々を巻き込みながら、地理的に近く東大には全くない素晴らしい分野を軸に持つ東京藝術大学のメンバー等も加え一から作り上げ、数多くのサポートのもと,TEDxUTokyoを昨年5月に東京大学にて開催した。大学がそうあってほしいという姿の追求から,分野、世代、国を超えて、学生も含めた17人の魅力的なトップランナーがスピーカーとして日本の将来へのVisionを共有し、選ばれた450人のオーディエンスの方々、研究・NPO・企業展示ブースへの3000人の来場者の方々,世界から3万人の方々に中継を通して参加していただいた。個々人の高い専門性の上に、学際的な人的交流が生まれ,ソーシャルメディアを通し知見が広く発信され,卒業生がホームカミングし,大学発の継続的なコミュニティーを形成しつつある。このコミュニティーから新たなビジネスが生まれ,テクノロジーの輸出も生まれている。民間企業からの外部資金調達を行い独立した運営を行った新たな取り組みとして、東大のみならず全国の国立・私立大学にも事例として取り上げていただいている。日本では既にいくつかのTEDxが盛り上がっていたが、全国で大学版TEDxも活発となり,昨年の日本でのIMF世銀年次総会公式プログラムとしてのTEDxSendai開催のきっかけともなった。

さて、TEDxという手法は、目的に向けた第一歩となり得たのだろうか。大学と協力しながら,一歩一歩、着実にこの輪を広げ、共に考えていくことが必要である。

そんな東大におけるTEDxが今年はTEDxTodaiと名称を改め、6月16日(日)に開催を予定している。詳細を以下にご紹介させていただきたい。代表(オーガナイザー)を私から唐崎正義(東京大学大学院2年)に引き継ぎ,国際色豊かな新たなメンバーで臨む今回は、昨年を踏まえ、スピーカーやパフォーマーを巻き込んでより有意義なものとするべく、引き続き大学の新たな創造性を提示していく。

光栄にもこうして寄稿する機会をいただき、個人としてイノベーションに貢献できる人材に憧れる気持ちを新たにし、引き続き今は専門の研究を主軸において努力していくつもりである。多くの皆様の応援をいただきながら再び開催できることを心から感謝しつつ、このブログをご覧頂いた一人でも多くの方にご応募いただき、このムーブメントに参加していただけることを心からお待ちしております。

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TEDxTodai

今年のテーマは"Composing Our World"

個性豊かなスピーカーが持つ独自の視点を会場で直に感じてください。

そして、あなたの頭に浮かんだアイデアも、会場の全ての人たちと共有しましょう。

日程:2013年6月16日(日)

時間 : 10:00 -18:00

会場 : 東京大学本郷キャンパス内 伊藤謝恩ホール

参加費 社会人 : ¥5,000学生 : ¥2,000

参加応募締め切り:6月5日(水)23:59

結果通知:6月8日(土)

※当日はUstream中継も行います

スピーカーなど一覧でご紹介していますので詳細はHPをご覧下さい。

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