「火星の氷の家」NASA基地デザインコンテストで日本人建築家らのグループが1位に

コンテスト主催者も「この作品のコンセプトは、際立っていた」と賞賛。

NASA(アメリカ航空宇宙局)が28日、会見で火星の地表に液状の水を発見したことを発表し、世界に衝撃が走った。その前日、火星にNASAの宇宙飛行士が1年間滞在する基地を設計、デザインするコンテスト(3D Printed Habutat Challenge、主催:NASA,America Makes)で日本人の建築家夫婦、曽野正之さん、曽野祐子さんを含むチーム8人が提出したデザインが1位に輝いた。

そのデザインの名は、「MARS ICE HOUSE(火星の氷の家)」。まさに、火星の水を使い、氷の壁で高度の放射線を防ぐという斬新なコンセプトだった。受賞から一夜明け、米国の主要な建築、科学・ITの業界紙などのメディアから取材が殺到している。

(写真:右 曽野祐子さん、左 曽野正之さん)

26日、27日に開かれたメイカーズ・フェア2015(ニューヨーク市クイーンズ)では、ファイナリストの30の3Dプリンターで制作された模型が野外のテントに並んだ。今回のコンテストでは、約200の応募があったが、従来言われてきた惑星の土を使った建設方法ではなく"氷"に着目したのは、The SEArch(Space Exploration Architecture)、Clouds AO(Clouds Architecture Office)の8人が手がける同作品だけだった。

NASAの計画では、2030年代に、100平米の基地で4人の宇宙飛行士が1年間、滞在し、火星内の探索を行なう。ロボット2体が3Dプリンターを使って実際に建築するという予定だ。

これまで、毎週水曜日にミーティングを開き、宇宙飛行士を始め、物理、ロボット工学など各専門分野の人達に話を聞いて構想を固めてきた。27日の表彰式に参列したNASAのモンシー・ローマンさんは、「誰もが氷で作るなんて思いもよらなかった。火星の平均気温がマイナス40度以下である事も考慮している点も気に入った。多様な分野の人は集まって提案していて文字通り"クール"である」とICE HOUSE(氷の家)を絶賛した。

NASAの公式Twitterにも、今月16日、「We get chills from team's habitat desigh called ICE HOUSE(チームのデザインは、私達をぞくぞくさせた)」と投稿があり、既成概念にとらわれない発想が評価された。コンテストを共催したアメリカ・メイクスのスコット・ドイチュさんは、「この作品のコンセプトは、際立っていた。また、3Dプリンタは、建築模型で使われる事は、今までもよくあったが、実際に火星で建物自体を作るというのは、新しい技術だ」と語った。

現在の所、今回受賞した設計、デザイン「MARS ICE HOUSE」は、地球と火星で同じデザインを建設予定だという。今年は、マットデイモン主演のSF映画超大作「The Martian(邦題:火星の人)」(原作:アンディー・ウィアー著、監督:リドリー・スコット)が公開されるなど火星が注目が集まっている。

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