地上の楽園ハワイで、ホームレスが増え続ける要因

深夜のワイキキビーチには横たわるホームレスの姿が。

前回に続き、地上の楽園の島ハワイで増え続けるホームレスについてお伝えします。

年々増加の一途をたどるハワイのホームレス。

オアフ島だけでも4900人を超え、深夜のワイキキビーチには横たわるホームレスの姿が。

駐車禁止エリアに車を停めたホームレスに近づくパトロール中の警察も。

【ホームレス増加の背景】

ハワイでホームレスが増え続ける要因は何だろう。それは、全米でもトップクラスと言われるほど高い生活費と、低い賃金にあるようだ。食料品や日用品は、アメリカ本土からの輸送コストが上乗せされるために、その分、高い。

それに加え、家賃も高い。ハワイの賃貸アパートの家賃相場は、2ベッドルームで1644ドル(約20万円)と高額で、このレベルの物件を無理なく借りるのに必要な賃金は、時給31.61ドル(約3800円)という調査報告もある。(http://nlihc.org/oor

しかし、現実はほど遠く、ハワイの現在の最低賃金は、時給7.75ドル(約930円)。フルタイムで働き、チップやインセンティブフィーが加算されても20万円に達するのは大変なことで、仕事を掛け持ちする人も多いのだ。

【アメリカ本土からの移住も】

しかし生活にお金のかかるハワイに、アメリカ本土からわざわざ移り住むホームレスも多いという。その理由は、ハワイはあたたかく冬でも凍死することがないから。

ワイキキビーチから徒歩10分程の場所にいたホームレスのSさん(49歳)。

3年前にカリフォルニアからやってきたという。カリフォルニアで同居していた両親を亡くし、住む場所も失い、ホームレスになったそうだ。日雇いの仕事をしたこともあったが、寒さで手が動かなくなったために働けず、3年前に親戚が購入してくれた航空券で、常夏のハワイにやってきたというのだ。

シェルター(ホームレス収容施設)に入らない理由は、「自分の大きないびきで周りの人に迷惑をかけるから」と話し、「誰にも頼らずに自分の力で生きていきたい」とも語った。

【州政府の対応は】

州政府は、2013年6月、Sさんのようなアメリカ本土から来たホームレスへの対策として、片道航空券をプレゼントして家に帰ってもらうプログラム( "Return to Home" ) の法案を通し、10万ドル(およそ1200万円)の予算を確保していた。

しかし、その無料航空券をあてに片道航空券でハワイにくる旅行者が現れることを懸念して、結局そのプログラムは実現には至らなかったが、州政府があの手この手をつくす様子が伺える。

また今年に入って、州政府は路上での座り込みや寝ることを違法とするエリアを拡大したり、ホームレスのテントや荷物を強制撤去したりするなど、ホームレスへの対応を厳しくすることで、シェルターに入居するよう促してきた。

市民からは州政府の対応について「全く根本的な解決になってない」などの厳しい声も聞かれた。一方で、「ホームレスは怠けているだけで、許せない」とか、「彼らには努力が足りない。サンフランシスコのホームレスは、街でジョークを言って笑わせたり、歌ったりして稼ぐのに」という声もあった。

州政府は、今後さらに大胆な対応を見せるかもしれない。通常、シェルターに入居する際には、アルコールや薬物中毒の克服などの厳しい条件を強いられるため、入居を嫌がるホームレスも多いという。

そこで、提言されているのが、"ハウジングファースト(Housing First)"と呼ばれる政策。まず無条件にホームレスに住居を与えて生活を落ち着かせ、その後、カウンセリングなどで社会復帰を促すというものだ。

税金を使ってホームレスに住居を与えるとは、ずいぶん手厚い対応とも感じるが、この政策の導入により、医療費やシェルター運営などの州の経済的負担はむしろ軽減されるそうで、既に成功を収めている州もあるようだ。

英語のことわざに、Desperate diseases must have desperate remedies.(重病には思い切った療法が必要だ)といった表現がある。絶望的な状況に対しては、生半可ではない大胆な対策が必要との意味だ。"地上の楽園"ハワイの観光業にダメージを与えかねないホームレスに対処するには、州政府は大胆な施策を打つべき時がきているのだろう。

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