HIVに感染したことが発覚した私と、当時の恋人だったY。YはHIVに感染してからというもの精神的に不安定になっていた。ある日私はYが自宅で首を吊り、なくなっている姿を目撃する。実家で『あんたなんか、産まなきゃよかった』と言われ耐え難い生活を強いられた私。私は、Yの葬式に向かう。(すべて本人のご寄稿による実話です)
お葬式前日
白い百合が大きな斎場を包み込みその真ん中には大きなYさんの写真が飾られました。
棺には、もう動くことのないYさんが横たわっておりました。
僕は斎場に前日の夜は泊まらせて頂き、Yさんに色々と話しかけていました。
Yさんと出会った時の事、Yさんと過ごした時間、Yさんと話したこと、YさんからHIVをうつされたこと。
そして、これが嘘であってほしい、起き上がっていつもみたいに笑ってほしいこと。
ずっとずっと話しかけました。これが嘘であってほしいと本気で思っていたから。
それでも、この現実は変わらず、冷たくなったYさんは動くことはありません。
もう亡くなっているのだから。
お葬式が始まり、僕は家族席に座らせてもらうことが出来、友人代表として言葉を述べることが出来ました。
葬儀は滞りなく進み、お焼香も済み、Yさんの棺に白い百合をみんなで入れていきました。
顔以外のところには全て百合が埋まり、Yさんは同一斎場の火葬場に連れていかれてしまい、僕はほうけてしまっておりました。
その時、Yさんが他の人に宛てたメールの内容を知ることになったのです。
Yさんは僕以外の人には亡くなる前に『来世で会おうね』と送っていたことを知りました。
僕には『幸せになってね、長生きしてね』と来ていたのに。
僕には来世で会いたくないんだ......そんなことを思っていると、Yさんの火葬が始まりました。
立ち上る煙はYさんとの最後。
僕は涙を流しながら立ち上る煙に向かい『今世であってくれてありがとう、さようなら』と呟きました。
Yさんの火葬が終わり、棺が運ばれてきました。
あんなに大きな身体だったYさんは骨となり、とても小さくなっておりました。
骨壺にYさんの骨をご家族の方と一緒に入れていきます。
大きな骨壺にしていましたがギリギリでした。
Yさんの鼻ピアスと耳ピアスは外しておらず、一緒に燃えて残っていたため、それも一緒に入れました。
あぁ...本当にこれで最後なんだなぁ...
泣き止むことが僕には出来ませんでした。
小さくなってしまい、壺に収められてしまったYさんを抱きながら、僕はYさんの実家に帰りました。
もう、骨しか残っていない。やっぱりYさんは亡くなったんだ。
変えられない現実は僕の胸を突き刺し、あの時こうしていればと後悔しかありませんでした。
Yさんをご家族と一緒にお墓に埋葬し、いつまでもお世話になっているわけにはいかないため、僕は自身の実家に帰宅しました。