「期待されてない......」育休明けに落ち込むワーママへ キャリアカウンセリングから脱出策を考える 【カエルチカラ・プロジェクトVol.3】

今、ワーキングマザーとしての働き方にモヤモヤを抱えている方はぜひ一緒に考えてみてください。

〔本原稿は、カエルチカラ・プロジェクトの一環として「なかのまどか言語化塾」に参加した女性たちが書いたものです。ライターや専門家ではなく、問題の当事者が当事者自身の言葉で発信することで、社会への問題提起や似たような立場に置かれた方々への情報共有を目指しています。編集協力:中野円佳〕

これがマミートラックか...... と実感

「ワーキングマザー」が注目され、女性活躍推進が叫ばれるようになって数年。時間はたち議論も深まっているのに、実際に働く環境にはあまり変化なく悩みを抱える人がまだまだ多いと思いませんか?

私もその一人です。

育休中にキャリアカウンセラーの資格を取得した私が、そこでの学びを活かして悩みの解決の糸口を見つけた経験をお話しします。今、ワーキングマザーとしての働き方にモヤモヤを抱えている方はぜひ一緒に考えてみてください。

私は大学卒業後、日本を代表するメーカーに営業職として入社し、お客様や良い上司・同僚に恵まれ仕事が楽しく、没頭していました。

自分の仕事に誇りとやりがいを感じていたため、深夜残業や休日出勤もつらくなかったし、部内表彰をいただくような成果もあげ、忙しくても自然と笑顔で仕事をする毎日でした。

人事異動による環境の変化もありましたが、年次とともに昇格を見据え、より重要なミッションや若手の育成など期待されることが増えていきました。

そんな中、社会人7年目に第一子を妊娠・出産し、1年半後に復職しました。それまで、同じ会社で子育てしながら働きつづけている人は数人見ていました。

その人たちがバリバリと働いていたいたので、両立への漠然とした疑問はありながらも、会社の制度を活用したり、担当業務を少し減らす・緊急時のフォロー体制を組むなどのちょっとした調整で、今までと同じように働けるんだろうと思っていました。

休職前と変わらず営業職として復職した私は、フルタイムではなく短時間勤務を選択しました。

フルタイムではこれまでと同じように残業が当たり前となることが予想され、通勤時間の長さもあり、しわ寄せは子どもにいくなど、いずれ立ち行かなくなるだろうと考えたからです。

復職当日、組織長に言われたのが「もう、一線は引くんでしょ?」という言葉でした。

新しいプロジェクトに配属となりましたが、私の配置は「お手伝い」を期待されているのがうかがえるポジションでした。

お客様との打ち合わせが夕方に設定され、出席できないこともしばしば。「これやります」と申し出ても、「あ、大丈夫だよ。こっちでやるから」という返事。

同僚はいつも快くフォローしてくれ感謝はしていましたが、私自身が考える一人前の仕事ができる日は来ませんでした。あまりに「期待されていない」と感じることの連続で、私はようやく自分が置かれた状況を理解しました。

「そうか、これがマミートラックなのだ。」と。

もともと働くことが好きで、復職を楽しみにし、やる気に満ちていた私は激しく落ち込みました。

私と同じような経験をされている方は多いのではないでしょうか。

落ち込んだ3つの理由

私がなぜそこまで落ち込んだのか。それには以下の3つの理由がありました。

昇格の見込みがないこと

年次的には同期の多くが昇格するタイミングでしたが、私はそもそも対象と認識されてもいないようでした。「お手伝い」の仕事しかできない状況で、評価に値する成果は出せません。

本来配置や昇格における判断材料になっていいはずの、休職前の実績やスキルは無視され、何よりも今現在コミットできる時間の長さが評価に直結していました。

そのため、このままではいつまでも昇格することはない、と希望が持てませんでした。

職場、特に管理職層に「女性活躍推進」の風が吹いていなかったこと

会社の経営陣は時々女性活躍を応援する旨の発言をしていました。

しかし、実際は建前的なものであり、各職場の組織長や管理職にはまったく浸透していませんでした。

夜遅くまで残業している社員が「頑張っている」とされ、お酒の席に付き合う部下がかわいいという価値観がいまだにしっかり根付いていました。

私自身が環境を変えづらいタイミングであったこと

柔軟な働き方が浸透しそれにあった評価制度も整っていて、制約がある社員でも活躍できる土壌がある会社は増えてきました。

転職や異動をするのが一番早い解決策かと思いましたが、近いうちに第二子を希望していたこと、会社の評価制度の設計上、異動するとまた評価がゼロベースに戻ってしまうこと、配偶者の仕事の関係などから、アグレッシブな動きは躊躇してしまうタイミングでした。

自分なりに頑張ったところで、時間的制約がない人に比べたら成果も評価もたかが知れている。しかし抜け出すにも問題がある。とどまっていてもいつまでも悔しい思いをしている未来しか見えない......

毎日何度もぐるぐるとこのループに思いを巡らせ、気分は落ち込む一方でした。そして、私と同じようなループにはまっているワーキングマザーにたくさん会いました。

なぜループにはまってしまうのか

ワーキングマザーがこのパターンにはまってしまうのは、なぜでしょうか?

会社側の問題としては、各職場の管理職がダイバーシティ思考に変化できていないことが挙げられると思います。かつ、そのような会社の管理職はこれまでの成功体験や価値観が根強く、簡単には変化しないことも考えられます。

「子育て中の女性はこういうもの」というイメージにとらわれていることにすら気づかない、または認めないかもしれません。こういった無意識の偏見は、外からのはたらきかけでは是正が難しいものです。

管理職たちが「理解ある世代」に交代し新陳代謝が進めば変わってくるでしょうが、それには5年、10年がかかり、現状においては何も解決されません。

評価制度が、多様な働き方をフラットに評価することができる仕組みになれば一定の効果は得られそうですが、それもまた、経営層に高い意識がなければ実現しません。

いずれも、ワーキングマザー自身の自力ではどうにもならないか、どうにかするためには相当な努力とリスクの覚悟が必要なことです。

これらの壁を前に、立ち尽くしてしまう......

しかし立ち尽くしていてはループから抜け出せませんし、その姿を見て「これだから子持ちの女はたいして仕事もしないのに文句ばかり言って面倒くさい」というような声があるのも否めません。

キャリアカウンセリングで解決策を考える

私たちはどうしたらよいのでしょうか。女性活躍社会への変化を会社や他人に求めず、自分からできることはないのでしょうか。

キャリアカウンセリングのテクニックを少し使って、自分がとれるアクションを考えてみましたので、ぜひやってみてください。

①何かひとつだけ、改善するとしたら?

理想と現実のギャップが大きくその道のりすらも描きづらい場合、一気に理想のかたちに持っていくのは難しいです。では、たくさんある不満要素の何かひとつだけ改善できるとしたらまず何を改善したいでしょうか。どんなことならできるでしょうか。

仕事の難易度、内容そのもの、評価、収入、同僚、上司、勤務時間、勤務スタイル...... など。

私の場合、改善したいものは「仕事の内容そのもの」でした。

②本当に到達したいところは? どんな毎日を送りたい?

例えば役職などはどこまで到達したいのか、どんな暮らしがしたいのか。「ありたい姿を考えて!」といわれると、なにやら壮大な夢や高い目標を設定しなくてはいけないような気がしてきます。

そうではなく、「どんな毎日を過ごしたいか」を自分の本音に耳を傾けできるだけ具体的に想像してみてください。

例えば、毎日子供と夕食をとりたい、柔軟な働き方がしたい、〇人くらいの部下をもちたい、経営陣に物申せる地位に就きたい、などなど...... 人によってこのイメージはかなり異なるはずです。

私の場合、ここは「部長クラスにはなりたい」「できれば週2くらいは在宅勤務をして子どもにおかえりを言いたい」でした。

①・②の結果を踏まえ、優先順位や取れるべきアクションを考える

①②それぞれの答えを踏まえて、優先順位やとれそうなアクションを考えてみましょう。

上司とのコミュニケーション、目標設定と成果アピールのテクニック、人間関係の改善、転職、現状維持、ペースダウン、退職、取れそうな選択肢は色々あると思います。

どんな選択肢であったとしても、自分で考えて決めることで納得感が生まれます。

劇的に理想の形にならなくても、どんなに小さくても、自分で考えた一歩が踏み出せれば、自信に繋がります。壁を前に立ち尽くすのではなく、一歩前に出て眺めてみたら、見える世界は変わってくるかもしれません。

自分らしく輝く!

私の場合、まず仕事の内容を変えたかった。

復職後の配属先のビジネス、ミッションにどうしても興味が湧きませんでした。好きな仕事だけできるわけない、今はこれが仕事なのだからと、真面目に取り組もうとしましたが、さっぱり関心が持てません。

そして、子育てをしながら働くためにかけるコストとエネルギーを上回るモチベーションも湧きません。

熾烈な保活競争や、毎日の送迎、帰宅後息をつく間もなくこなす家事育児、日々両立に悩み工夫することなど、様々な覚悟をして働くことを選んだからこそ、「それでもやりたい」と思えないことが辛かった。

一方で「いつかこの分野の仕事がしたい」「部長クラスくらいにはなりたい」というぼんやりした希望があり、そのために細々と勉強もしていました。

そこで、私が決めた最初のステップは、肩書きや収入には目をつぶり、「希望の分野で、在宅勤務可の会社に転職すること」でした。

前述の事情からすぐに転職することは難しかったのですが、タイミングが来たらすぐに動こうと意思を固め、いまは準備期間としてできることをやろう、とスタンスを決めました。

それからは、所属部署と全く関係のないところで希望する分野に通じる活動を始め自分のスキルを発揮できる場所を作ったり、社外の勉強の場に積極的に参加しています。

転職しても苦労が多いかもしれませんが、心から共感できる仕事の方がやりがいを感じながら短い時間で高いパフォーマンスを発揮できるはずですし、長期的な視点では高評価・昇進が期待できるかもしれません。

この準備期間、仕事は最低限に抑えるため、よい評価は得られないでしょうし、処遇の改善もないかもしれません。でも、自分で決めてこの場にいること、この先の未来のための我慢なのだと腹落ちしているので、耐えられます。

自分の気持ちを整理して直近の目標をしぼり、スタンスを決めたことで、気持ちの上では負のループから抜け出すことができました。

その後、本業とは別にはじめた活動が認められ約10万人の社員中、年間5,6組が受賞する社長表彰を受賞し、人脈も広がるなど、自ら決めた目標に向かって着実に前進しています。

「女性活躍推進」には、国や企業に求められる要素がもちろん多くあります。しかし、一人一人が納得感のある選択をし、自分らしく自信をもってまい進することこそが「活躍」「輝く」ということなのではないでしょうか。

「なんか違う」と思いながら日々過ごしている方、ぜひ一度考えてみてください。

【(著者)林由美】

埼玉県出身、東京都在住。大学卒業後、メーカー営業職として勤務。自営業の夫、3歳女児、0歳女児の4人家族。長女出産後、育児休業中にキャリアカウンセラー資格を取得。特に女性のキャリア構築支援と自己肯定感の向上に使命感を燃やし活動中。

カエルチカラ・プロジェクト」は、目の前の課題を変えるための一歩を踏み出せる人を増やすことを目指すプロジェクトです。

女性を中心に何らかの困難を抱える当事者が、個人の問題を社会課題として認識し、適切に言語化し、データを集め、発信することで、少しでも改善の一途につなげたい。「どうせ変わらない」という諦念、泣き寝入りから「問題を解決できる」「社会は変えられる」と信じることができる人が増えることを願っています。

発起人:WILL Lab 小安美和、研究機関勤務 大嶋寧子、ジャーナリスト 中野円佳

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