韓国大統領選、史上初めて「性的マイノリティの人権」が争点となる ソウル大ロースクール教授が解説

ソウル大学ロースクール教授が、韓国での同性愛関連現行法と現状を分析します。

5月9日に大統領選を控えた韓国。大統領選候補者によるTV討論会での同性愛を否定する発言が波紋を呼び、発言をした候補者の演説直後に当事者が抗議デモを行ない拘束されるという事態にまで発展しています。ソウル大学ロースクールのチョ・グッ教授が、韓国での関連現行法と現状を分析します。

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1.

同性愛関連現行法の状況は以下の通りである。

(1)軍刑法を除いて、現行法上の合意同性愛、民事または刑事不法ではない。

(2)軍刑法上、合意の有無とは無関係に「アナルセックスその他のわいせつ行為」は犯罪として処罰される。大半のOECD加盟国では軍隊内の合意での同性愛は不処罰だ(勤務中の寮内での性交などは懲戒対象だ)。

(3-1)民法上の同性結婚は許されない。大半のOECD加盟国は「婚姻」または「市民連帯協約」という別途の形式で認める。

(3-2)「総じて婚姻とは男女間の肉体的、精神的結合によって成立するものであり、我が民法は異性間の婚姻のみを許容し、同性間の婚姻は許可していない」(大法院 2011.09.02. 자 2009스117 全員合議体 決定)(※全員合議体は、大法院(日本の最高裁にあたる機関)の院長と大法官13名で構成される、韓国司法行政上の最高議決機関)

(4)同性愛に対する差別は、国家人権委員会法に基づいて制裁を受ける。差別禁止法は、制定されていない。

2.

ある社会の人権指数は、その社会におけるマイノリティの保護の程度に依存している。性的マイノリティの人権が保護されるには、国民意識のほか、法と判例が変わらなければならない。軍人同性愛の非犯罪化、同性愛者の兵役許可、同性婚や市民連帯協約認定、性転換者の性別訂正など、すべてそうだ。私は前国家人権委員として、これらの変化を支持している。

3.

新しい「価値」が「制度化」されていること、これは容易なことではない。他のOECD加盟国で上記の事案が成し遂げられるため、相当な努力が必要だった。西欧でも政治(家)は、少数者の人権を無視したりも、受容したりもした。

アメリカのオバマ大統領は、2008年の大統領選挙でキリスト教の信条を理由に同性婚に反対したが、2012年の大統領選挙では支持すると立場を変えたことがある。敬虔なキリスト教信者であるドイツのメルケル首相は、今も同性婚を強く反対する。イギリスのメイ首相は同性婚反対論者だったが、2013年の賛成に転じた。

4.

洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏の攻撃に対する文在寅(ムン・ジェイン)氏の回答を契機に、韓国社会において性的マイノリティの人権問題は、史上初、大統領選挙の争点となった。政治的文脈では、初めて議論が始められた。性的マイノリティは「認定闘争」を続けるだろう。宗教的、文化的な理由で反対する「マジョリティ」が多いだろうが。

これから、国会と裁判所が従来の立場を変更するには、どのような運動が必要なのか、どのくらいの時間がかかるのか。性的マイノリティが同じ「人間」であり「市民」だということを、マジョリティが頭ではなく心で認めることが変化の出発点だ。

ハフポスト韓国版「'성소수자의 인권'이 역사상 최초로 대선 쟁점이 되었다 | 조국」より翻訳・加筆しました。

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