連載「世界家庭料理の旅」、今回はバングラデシュ!
こんにちは!
「食を旅するイラストレーター」織田博子です。いろいろな国をめぐり、現地の人と料理を作り、地元の市場をめぐり、ともに食卓をかこむ旅をしています。
「世界の家庭料理」の魅力的な世界を、イラストと文章で伝えていきたいと思います。
黄金の国・バングラデシュ!
今回は、私が愛してやまないバングラデシュの家庭料理を紹介します!
インドの東、ガンジス川の下流に位置するイスラム教国。多くの川や湖に覆われた、水の豊かな国です。
料理は豊富な水と温暖な気候で育まれた米・魚が主食。
魚や肉の(鶏・羊・牛)カレー、お米、という組み合わせが基本的な家庭料理。
インドのカレーより油っこくなく、サラッとした印象。素朴な味わいが魅力です。
そんなバングラデシュに行ってきました。
電車の中には人、人、人...そしてヤギ、ニワトリ、アヒル?!
インド・コルカタから飛行機でバングラデシュの首都、ダッカへ。
飛行機の窓からは、地平線の向こうまで続く水田や湖が夕日を映してキラキラ輝いている。
まさに黄金の国、バングラデシュ!
空港から市内へ向かうため、駅へ行く。
屋根の上に乗る人、窓から乗り降りする人、大騒ぎが始まった。
慌てて乗り込むと、電車の中は人、人、人、荷物、隙間に子供、それにヤギやニワトリ、アヒル?!
すっかり度肝を抜かれたけど、バングラデシュの人たちにとってはなんでもない日常の風景のよう。
魚カレーを作るには、魚を取るところから
滞在10日目。旅の途中で会ったベンガル人・モインさんとモインさんの新婚の奥さん・ムンニさんの生まれ故郷にお邪魔するために、バングラデシュ東部の名のない駅で下車した。
収穫を終えた畑が地平の向こうまで続き、子供たちがクリケット(イギリス式の野球のようなスポーツ)で遊んでいる。
美しい湖や森の間に、カラフルな模様が描かれた家々が立ち並び、そこからピンクやオレンジ、赤といった鮮やかなサリーを着た女性たちが顔をのぞかせている。
家々のそばには小川が流れ、裸の子どもたちが走り回っている。
なんだか、懐かしくなるような素朴な風景。
ある日村を歩いていると、昨日まであったはずの湖が乾いてなくなっている。
モインさんに聞いてみると「湖の水をポンプで吸い出し、底に残った魚を拾って夕飯にするんだよ」、とのこと。
豪快な漁だなぁ・・・。
村の中心では、村中の女性が集まって魚を選り分けていた。
3cmくらいの小さな魚(食べられる魚)とトゲトゲの魚(食べられない魚)を選り分けるだけの作業。
しかしおばちゃんたちは世間話をしながら、のんびり選り分ける。
たっぷり時間をかけて、仕事をする。
なんだかその時間はとても心地よくて、気づいたら夕方になってしまった。
家でカレーにする分を分けてもらい、モインさんの家に帰る。
家の離れにある台所(土間)に、モインさんのお母さん、兄嫁、弟嫁、新婚のお嫁さん・ムンニさん、モインさんの妹やその他たくさんの女性が集まっている。
家族が大きいから主婦の人数も多い!
私は兄嫁さんの手伝いで、魚のヒレとしっぽを取る作業を手伝う。
モインさんの妹さんが、大きな鍋に油、スパイスを入れ、魚を炒める。新婚のムンニさんも鮮やかな手さばきで野菜を切りそろえ、お母さんがお米を炊き、あっという間に食事の支度は終わり。
さぁ、いただきます!
居間(土間)にゴザを敷き、真ん中に大きなお皿と山盛りのごはん、魚カレーを配膳。まずはお客と男性が食事をし、女性は後で食べるというスタイルらしい。
バングラデシュのカレーはサラッとして食べやすい。
バングラデシュは指三本を使って手で食べるスタイル。なぜか指で食べるといくらでも食べられてしまう。
「指も味わいのうち」という言葉がある、とモインさんが教えてくれた。
お昼からずっと手伝っていたので、おなかもペコペコ。お代わりまでしてしまった。
魚カレーを作るために、魚をとるところから始める
食事を終えると、することもないので、家族たちはとりとめもないおしゃべりを続けている。
この夜は停電のため、村じゅうが真っ暗。
降るような満点の星空の下、家族の話し声だけが聞こえる。
近くの湖で魚を採り、
近所の人としゃべりながら魚を選り分け、
魚を料理し、
食べ終わったら家族とおしゃべりをする。
この一日は、食材をとって、料理をして、食べるだけで過ぎていった。
「ご飯を食べるということは、大変な労力をかけて行われていることなんだよなあ」と気づく。
魚カレーを作るために、魚をとるところから始める。
初歩的で、根源的で、でもすっかり忘れていたこと。
素敵な経験も含めて、ごちそうさまでした。
レシピ
マーチェリ・ジョル(魚のカレー)
サラッとした味わいのバングラデシュのカレー。
インドのカレーにはトマトが入ることが多いですが、バングラデシュはたまねぎだけでシンプル。
カレーというより「スパイスを使った煮物」のような印象で、どこか和食にちかいものを感じます。
多くのレシピでは「Rohu」というコイ科の魚を使用すると書いていますが、
地域や家庭によって様々な魚を使用するようです。
- 魚の内臓を取り、ぶつ切りにする。大さじ1/2のターメリックパウダー、塩少々をまぶし、15分ほど置いておく。
- フライパンにマスタードオイル(サラダ油)を入れる。中火で熱し、みじん切りにしたショウガ、ニンニクを炒める。1を入れ、きつね色になるまで揚げるようにして焼く。
- 2を取り出し、キッチンペーパーなどで余分な油を取る。
- 薄切りにしたたまねぎを、きつね色になるまで炒める。
- 4にじゃがいも、塩小さじ1、ターメリックパウダー大さじ1/2を加え、さらに炒める。
- 蓋をして2分煮る。
- 種を取った青唐辛子、水2カップを入れ、中火で煮る。
- 煮立ったら3を鍋に入れ、蓋をして10分ほど弱火で煮込む。
- 7をお皿に盛り、1㎜幅に薄く切った青唐辛子、きざんだコリアンダーの葉、4を飾り付ける。
- めしあがれ!
※2010年12月に訪問した時の記録を基に記事を作成しています。
文章・イラスト:食を旅するイラストレーター 織田博子
世界を旅し、各国の家庭料理や人びとを描いています。作品集はこちら
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(2014年10月6日「KitchHike マガジン」より転載)