三峡ダム決壊。そのとき、中国は? 日本は?

三峡ダムの事例を知り、ダム(特に大規模)には想像を超えたリスクがあること、移住、文化の消滅、水質汚染、生態系破壊など、数えきれない負の側面があることを知りました。すべてのダムが問題ではないでしょうが、細かく見ていけば、不必要なダムはきっと数多くあるのでしょう。

flickr/Pedro Vásquez Colmenares

「ダム撤去」をテーマにしたドキュメンタリー映画『ダムネーション』が来週公開なので公開準備に追われています。アメリカからは企画プロデューサー、マット・シュテッカーさんが来日するので来日イベントがあり、取材セッティングでも大忙し。

『ダムネーション』を配給するにあたって、ちょくちょくダムについて調べていますが、お隣中国の長江にある世界最大級のダム、三峡ダムについて衝撃的な現実を知ることになりました。

三峡ダム建設の歴史を少し振り返りましょう。建設が始まったのは1993年。完成は2009年ですから16年もの時間を要した大工事だったのですね。長さ570km、最大発電量は2250万キロワット(原子力発電所15基分)と何ともスケールの大きいこと。中国の年間消費エネルギーの1割弱の発電能力があるそうです。

そんな三峡ダムですが、想像を絶するレベルの犠牲を伴って完成していました。移住を余儀なくされた人なんと140万人!

そして、ダムによって長江流域の環境が変化。工場排水が流れこむなどして水質汚染も深刻で、水産物の水揚げ高は減少。生息している魚種も大幅に減少。揚子江カワイルカは絶滅したと見られています。

さらには生態系を壊すだけでなく、ダムが地震を誘発していることも明らかになっています。

カナダ・トロント(Toronto)のプルーブ・インターナショナル(Probe International)が公開した2010年の中国政府に調査結果によると、ダム周辺では2003年以降、大半はマグニチュード3以下と小規模ながら、地震の回数が30倍になった。

「ダム誘発地震」などという事態が起こりうることを知って唖然としましたが、比較にならない被害が予想されるのが、もし、三峡ダムが決壊した場合です。ガーディアン誌が三峡ダムに発見されたヒビについてレポートしていますが、決壊すれば、大量の水が津波となって猛スピードで下流域を襲い、大被害をもたらすことが予想されます。さすがに日本まで津波が押し寄せることはないでしょうが・・・。

これまでの被害や、万が一のこれからの被害を考えると、三峡ダムの建設は、誤りだったのではないでしょうか。

さて、以前の記事、「クレイジーな人々が新しい時代を創る!「ダム撤去」を常識に変えた"ダムバスター" 」で紹介したように、アメリカでは無用なダムを撤去していくことが活発化し、ダム建設の是非の議論が進んでいます。日本ではどうかというと、ダム立地地域での反対運動はあるものの、これまでに建設されたおよそ3千のダムのうち、撤去が始まったのはわずか1つ。熊本県の荒瀬ダムのみ。新規ダム建設の流れは変わらず、過去最大規模の予算を使う八ッ場ダムの建設が始まろうとしています。

三峡ダムの事例を知り、ダム(特に大規模)には想像を超えたリスクがあること、移住、文化の消滅、水質汚染、生態系破壊など、数えきれない負の側面があることを知りました。すべてのダムが問題ではないでしょうが、細かく見ていけば、不必要なダムはきっと数多くあるのでしょう。

ダムネーション』がきっかけで、ダムの存在意義についての議論が日本中で始まることを願っています。

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