「フランスはテロとの戦争に入った」
こう高らかと宣言したフランスのオランド大統領は、14日、主力空母「シャルル・ドゴール」にヘリで降り立ち、「イスラム国」への空爆に同空母を参加させると宣言した。
そしてフランスが民主的で自由な国であり続けるためには、新聞や風刺漫画家が必要で、彼らを守るためには軍が必要だとも語った(フランス・テレビジョン(F2)より)。
どこかでみた光景...。
過去にも繰り返された「自由」や「民主」を守るためにという大義。
そう、今、フランスは、かつて2001年9月11日、ニューヨークで起きた9.11の当時のアメリカのようなショック状態で、「テロとの戦い」に突き進もうとしている!
ちょっと待てよ...。
過激派によるテロは許されることでは決してない!
関係したものは、裁きを受けなければならない。
亡くなられた方々には哀悼の意を評したい。
しかしこのテロ事件を、大規模な戦争のきっかけになんてしてはいけない!
時を同じくして14日に、「シャルリ・エブド」誌は大幅増刷。
偶像崇拝が禁止されているイスラム教の預言者・ムハンマドの風刺画を再び特集する特別号を発行した。死者を出す原因となった雑誌を、事件からわずか1週間後に再び発行する行為は「油に火を注ぐ」行為であり、問題を悪化させるだけではないだろうか。
決死の覚悟でテロを起こさせるほど相手を追い詰める表現を続けることは、正しいことなのか。「表現の自由」には制限がなくていいのか。
例えば、もし、天皇陛下が風刺の対象になったとしたら、それでも「言論の自由」だと胸を張っていられる日本人はどれほどいるのだろうか。
銃撃テロの後、日に日に戦争への足音が大きくなっていくフランス。
一度冷静になって、じっくり考えなければならない。
本当に、このまま突き進んでいいのかどうかを。
もともとイスラム国を生み出したのは、9.11後にアメリカと有志連合が行った嘘だらけの大義によるイラク侵攻が発端だったと思い出さなければならないとも思う。2003年の開戦以後、イラクでは優に十万人を超える人々が殺害され、家を失い、仕事を失い、平和に生きる権利を奪われた。
憎しみからは、憎しみが生まれる。
9.11の後に起きたこと。それは、人々の分断だった。
再び、世界は分断されてはならない。
希望はある。
元来フランスは多様性を受け入れる寛容な国だから。
世界中から移民を受け入れて来た歴史がある。
奇しくも映画をきっかけに世界の課題解決を目指す企業、ユナイテッドピープルが今月末に公開する映画『バベルの学校』は、そんな多様性を受け入れて来たフランスのパリにある中学校を舞台とした映画だ。
(c)pyramidefilms
様々な理由でフランスに移民してきて、集まったのは世界20ヶ国から24人の生徒たち。
肌の色、国籍、宗教、考え、何もかもバラバラな子供たちが共に1年間学ぶ。
そこにはイスラム教、ユダヤ教、キリスト教の子供たちがいる。
時にぶつかりながらも、子供たちは純粋な心で根本的な質問を投げかけていく。
"神様はいる?"
"自分の宗教を信じるべきなの?"
そして深い絆で結ばれていく...。
(c)pyramidefilms
世界中の大人たちが、もし『バベルの学校』に出てくる子供たちのような眼差しで世界を観て、お互い付き合えたら、きっと戦争は起きないだろうと思う。
もっと互いをよく理解しようと試みればいい。
いや、ただ単純に友達になることができればいい。
友達になれば、相手を絶望させるような行為や、言葉は使わない。
『バベルの学校』は、私たちが生まれながらどんなに境遇が異なっても、理解し合い、友情を育むことができるという希望を見せてくれる。
私たちは、恐れによって心を支配され、分断されてはならない。
今回のテロがきっかけで、私たちがますます分断されないことを願ってやまない。