オバマ的・朝日新聞的理想とネット右翼さんの願いが直結する日

ゴールデンウィーク中に、かなりポリティカル(政治的)なアメリカ人青年とまるまる半日話し込む機会があったんですよ。日本語で「政治的」って言うと陰謀溢れるタヌキおやじみたいな印象ですけど、ここで言うポリティカルっていうのはいわゆる「意識高い系」というか、大真面目に大上段な議論が好きなタイプのアメリカ人っていうことですね。

ゴールデンウィーク中に、かなりポリティカル(政治的)なアメリカ人青年とまるまる半日話し込む機会があったんですよ。

日本語で「政治的」って言うと陰謀溢れるタヌキおやじみたいな印象ですけど、ここで言うポリティカルっていうのはいわゆる「意識高い系」というか、大真面目に大上段な議論が好きなタイプのアメリカ人っていうことですね。

そしたら、この記事のタイトル「オバマ的・朝日新聞的理想とネット右翼さんの願いが直結する日」的な流れに持っていける可能性を凄く感じたんですよね。

なんか、今は「あまりに方向性が違う」ように見える二者がわかりあえる文脈を作ることで、今の時代の世界的な分断を超える可能性を実現できる道があるはずだ、と強く思ったんですよ。

この記事ではそれについて話します。

その彼は化学の博士号を取った年に金融危機があったために、就職が全然なかったから仕方なく当時付き合っていた今の奥さん(日本人)と結婚して日本に来たアメリカ人なんですね。

だから「もともとから日本が好きで日本に来たガイジン」ではないし、奥さん以外に真面目な話をできる相手が三重県の地方都市にはあんまりいないしで、とにかく「いろいろ溜まってた」感じなんですよね。

しかも私は最近、「日本がアメリカに勝つ方法」などという挑戦的なタイトルの本を出していて、その内容について奥さんから口伝えに訳して貰って聞いていた彼は、「色々と質問がある」ということで凄い突っ込んだ話が出来たんですよ。

で、それが非常に勉強になったんですね。

というのも、普通に友達になった程度では(今の時代はたとえ夫婦になったとかでも)、場合によってはケンカの原因になるようなこういうデリケートな話について、そこまで「大真面目な話」を面と向かってしたりはしないですからね。

その彼は、自称「親の代から筋金入りの民主党支持者で、二大政党制とかのアメリカ民主主義的なものに一切疑念を持たずに生きてきた人(自己紹介をほぼ原文ママ)」なんですね。

で、最初は嫌々ながらも日本に数年住んだ以上は、日本の風習のことをよく知ろうとしているし、彼の奥さんの実家の人たちが話す関西弁(三重弁)の「せやなー」の多彩なニュアンスの使い分けについてとか、三重の山奥の植生や小動物の多様性や気候についてとか、微に入り細に入り話をしてくる姿勢が凄く「良心的」で、「ああ、オバマ第一期を実現した良識」っていうのはこういう感じの人たちなんだな・・・って思ったんですよ。

大真面目に「多文化共生」的な理想を追い求めようとしているっていうかね。

でも私は個人的にはあのオバマ第一期の爆発的熱狂みたいなのが「意識が高すぎて怖い」感じがずっとあって、そういう感覚は「ネット右翼」さんでなくても、日本の「普通の人」の間にも共通してある感覚だと思うんですよね。

なんか、自分たちが昔からナチュラルにやってることを、突然「そんなのは人権侵害だ!」的に青筋立てて怒られちゃうような怖さがあるというか。で、こっちとしても「え?そんなこと言われても・・・」っていう不満がずっと続いているとそのうち「うっせーぞ!なんでお前らはいつも上から目線なんだよ!」っていう反発に通じてしまう。

それに比べると、「共和党系」の「コワモテなアメリカ人」の方とは、彼らのジャイアニズムさえ適当に満足させてれば、まああんまりウルサイこと言われない感じがするし、なんとかうまく付き合えそうな気がしたりする。

そういう「色分け」ってあるじゃないですか。いわゆる「右と左」っていうかね。

日本の中でも「リベラル」だったらオバマ的なものと仲良くてブッシュは悪の化身。自分は「保守だ」っていう日本人は断然アメリカの共和党系と仲良くて、オバマとかは胡散臭い存在の代表みたいな感じがするっていうね。

でも、実際に「オバマ的理想」を体現してるアメリカ人と「日本がアメリカに勝つ方法」について突っ込んだ話をしてみると、「オバマ的理想」と「日本のネット右翼さんの願い」の間にトンネルが掘り抜けたら、それって素晴らしいことになるな、それは今問題となっている東アジアの平和のためになるし、同時に今は閉塞感を持ってる「アメリカの理想」にとっても、あたらしい希望への突破口になるな・・・って思ったんですよね。

水と油、天敵同士・・・に見えるような両者を繋ぐ文脈を日本のインテリさんが総動員して作れたらいいな、って思ったんですよ。

「熱烈な宗教原理主義者」もバックにいる共和党系のアメリカ大統領にはできない形として、オバマは日本の皇室に最大限の敬意を払ったり、明治神宮に絵馬を奉納したりとか、「そういうことができる位置」に彼らはいるわけなんですよね。

彼らは彼らなりに「アメリカという存在の良くない部分」を反省して、できるだけ「多文化共生」的な相互理解を打ち立てようとしている。

オバマ本人は大統領としての立場的にまだ無理だとしても、アメリカの「民主党的理想主義」の人たちの中には、原爆投下だとか東京大空襲だとかについての「反省」をちゃんとしよう・・・というような声が既にかなり広がってきてはいます。

日本の「ネット右翼さん」の思いの「1マイル手前」ぐらいまでは来てくれてるんですよね。でもその「ラストワンマイル」の分断が、大きな対立を産みだしてしまっている。

でもね、「オバマ的な理想」は常に「本当のフェアさ(公正さ)」を求めて運動し続けずにはいられない存在ですから、近いうちに日本のネット右翼さんの悲願であるところの、

「太平洋戦争後の東京裁判なんて一方的な勝者の裁きだよね」

という領域にまで貫通するんですよ。

というか世界中の集団心理的にはまさにその領域に貫通しつつある。でも貫通してしまうと、今の世界をとりあえず統治する秩序の正当性が丸々吹き飛んでしまって大変なことになるから、無理くりでも「その領域」にまでは到達できないでいるんですよね。

日本のネット右翼さんでも、戦前に近隣諸国に対して「一切悪いことをしていない」と強弁している人は少数派ですよね。

多くの人はそこにあった悲劇のことを認識しているし、それに対して反省の意識は当然持っている。表明しないとしても心の中では必ずある。

ただ、歴史の大きな流れ的に言えば、欧米諸国の方が非欧米諸国に対して相当に非人道的なことをした時代があった中で、日本人は相当な無理をしてでもそれを止めるアクションが必要だったんだ・・・という気持ちがあるんですよ。

その「無理をしてでも止めたチャレンジ」があって、そのプロセスの中で時代に押し流されて近隣諸国にヒドいこともしてしまったという事実もある。

その「両方」もちゃんと扱ってもらえないと、到底日本の保守主義者としては納得できないよね・・・という、ある意味当然なことを彼らは言いたいと思っているんですよ。

そこに「アンフェアさ」があるから彼らとしても引くことができないでいる。彼らだけの暴虐なエゴじゃないんですよね。

本当は「彼らなりの大義」についてちゃんと皆で認めてやれれば、「彼らがした過ち」についての反省は彼らの心の中から自然に出てくるものなんですよ。

そして、アメリカに限らず欧米のインテリたちが「フェアネス」を追求していく論調は、原爆投下や東京大空襲についての「公式的反省」を終えたら、今度はいずれこの「東京裁判についての領域」に入ってくるんですよ。その流れは絶対止められない。

そしてそれは、「アメリカの持っている傲慢さ」に対して怨念を抱いているありとあらゆる「アメリカ以外の国」に共通してある「不満」だし、今の中東やウクライナで噴出している「世界のネジレの根本問題」なんですよね。

でも「その領域」に入るためには、「そこに入っても今の世界秩序が崩壊しない・戦争にならないようにする算段」が必要なんですね。

それさえあれば、ずっと征服し、され続けてきた人類の歴史の中で、ほんの一瞬の敵と味方の分断で後々の子孫までずっと断罪され続ける・・・なんて状況が不自然すぎるのは、ある程度知的な人類の中では誰だってわかってることですからね。

だからこそ、「今の国際秩序の延長で物事をやっていくことをちゃんと認める」「第二次大戦後の法的処理に対して異議は唱えない」っていうラインを維持しつつ、でもやっぱり「靖国神社にはこだわる」っていう今の日本の「矛盾した路線」こそが、「次の時代の理想」への扉になってるんですよ。

でも、「靖国神社にこだわる層」っていうのは直情的なナショナリストさんが多いですから、今述べたような「あたらしいフェアネス」的な観点から大上段な理論を組み上げたりする文化や伝統や言葉遣いを持ってないですからね。

だからこそ、今日本に必要なのは、「オバマ的(言ってみれば"朝日新聞的"とも言える)理想」の言葉使いによって「靖国神社にこだわる日本人」の気持ちを「代弁」し、「あたらしい世界秩序」についてのビジョンにまとめあげていく「あたらしいリベラル」の知的作業なんですよね。

それには、ほんとありとあらゆるインテリさんの力が必要なんですよ。歴史的知識も、法律知識も、語学力も、そしてこれは根本的には「キリスト教神学」の延長でスムーズに論述できる形式になってるわけですから、そういうあたりでの思想的な学識も物凄い必要になってくる。「思想」を「ストーリー」にして巻き込んでいく才能も必要だし、その大きなパラダイムチェンジに対応した「経済・経営の運営方法」も表裏一体に必要になってくる。

でも、そういうオールジャパンなインテリさんの力を結集した「あたらしいリベラルによる戦後レジームの総決算」さえやりきれば、アメリカの力が相対的に減衰するに従ってどこにも統一基準がなくなって不安定化していく世界の、「あたらしいコンセンサス」をリードできるチャンスがあるんですよね。

それでこそまさに「諸国民の公正と信義に信頼する世界平和」の道ですよね?

ただ、そういう能力があるインテリさんって、安倍晋三氏が個人的に嫌いなことが多いんで、なかなかうまく連携が取れてないんですが、まあそこはそれ、「安倍晋三氏のことは嫌いでも、日本国のことは嫌いにならないでください!」の精神で行きたいじゃないですか。

個別の「左右が分断されるホットトピック」について両側に分かれてぶつかり合うことも必要ではありますけどね。

でも、今の時代厳しい状況に置かれている「リベラルな知識人」さんには、ぜひともこういう「あたらしいリベラル」の潮流に参加して欲しいんですよ。

20年前に「今の保守主義ムーブメント」を焚き付け始めた人たちも、「●●人を殺せ!」みたいなことを言う人が大量に出てきている現状に対して心の中では「ちょっとヤバイな。俺こういう人たちと一緒にされたくないな」と思ってる人が多いと感じますしね。

だから、「彼らの本当の願い」さえちゃんと「オバマ的理想主義」と直結できれば、多くの「今は保守」っていう人も大挙して「そうそう、俺らが世界最先端のリベラルの理想だぜ」っていうルートに乗ってきてくれるはずですから。

「北風と太陽」じゃないですが、「日本の右傾化を懸念するリベラル」のあなたにはぜひ、「単純に彼らを攻撃」するんじゃなくて、「彼らが大事にしたいと思っていること」を包含し、「あたらしい世界秩序」をリードする言論に切り替えて行って欲しいんですよね。

この記事の冒頭に書いたアメリカ人の彼も、「昔は全然疑念を持たなかったアメリカ的な理想主義の一面的過ぎる部分に最近は疑念を持っているが、かといってどうしたらいいかはわからない」って正直に言ってましたからね。

「彼らだって困っているが、彼らは困っているとは口に出せない立場」なんですよ。

でも、日本はバランスが取ることが凄い上手い国だから、「アメリカvsアンチアメリカ」の時代の「あたらしい中道」を具現化する特等席にいるはずだ・・・っていうことについては強くお互いに「だよねー」って言いあえたんですよね。

「日本には今のアメリカみたいには絶対になって欲しくない」という彼の言葉を、重く受け止めたいじゃないですか。

「アメリカの理想」から「本当のフェアネス」までのラストワンマイルを掘り抜くのが、21世紀の日本のインテリの責任ではなかろうか?ね?

私は大学卒業後アメリカのコンサルティング会社に入ったのですが、その「グローバリズム風に啓蒙的過ぎる仕切り方」と「東アジア人の美点を支える集団的本能」との間のギャップをなんとかしないといけないという思いから、「その両者をシナジーする一貫した戦略」について一貫して模索を続けてきました。

そのプロセスの中では、その「野蛮さ」の中にも実際に入って行かねばならないという思いから、物凄くブラックかつ、詐欺一歩手前の浄水器の訪問販売会社に潜入していたこともありますし、物流倉庫の肉体労働をしていたこともありますし、ホストクラブや、時には新興宗教団体に潜入してフィールドワークをしていたこともあります。(なんでそんなアホなことをしようとしたのかは話すと長くなるので詳細はコチラ↓をどうぞ。)

そういう「文明社会の外側の野蛮性」と「文明社会の窮屈さ」との間をあたらしい信頼関係で繋ぎ直すことが、「アメリカ的秩序が踏みにじってきたもの」が、ウクライナやアフガニスタンで紛糾している現在の喫緊の課題なのです。

でもね、そういう「あたらしいリベラル」を立ち上げるためには、「伝統的な"右と左"の両方の人たち」から無視されて10年単位で孤軍奮闘する寂しさ・・・・みたいなのを毎日感じて生きてきてるんですよね。

特に僕としては、「リベラルの理想」を持っている「仲間」と信じている人たちから無視され続けてるのが正直言ってかなりツラい。いやほんとに。

まあ時間をかけてわかってもらえるように頑張っていく覚悟はできてるんですけど、正直このへんで「リベラルの良識」さんに援護射撃して欲しいなーっていう気持ちはヒシヒシとあるんですよ。

「朝日新聞的なもの」とか「オバマ的なもの」の輝きを、彼らの立場がこれだけ悪くなってきていてもそれでも信じているあなたにね。

ね、お願いします。はやく倉本圭造の仕事を「発見」してください。まだまだここから「やらなくちゃいけないこと」はありとあらゆる範囲に山積みになってるんですからね!

そして、僕が用意した「武器」を使っていただければ、今は「国賊」扱いされてるあなたたちこそが、あたらしい時代の世界をリードする希望になれるとこにいるんですよ!

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倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

公式ウェブサイト→http://www.how-to-beat-the-usa.com/

ツイッター→@keizokuramoto

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