『ぼくらの時代の本』を上梓した作家・デザイナーのクレイグ・モドさん、家計簿アプリ「Zaim」代表の閑歳孝子さんが登壇したイベント「ぼくらの時代のデザインと技術」に参加してきました。
クレイグさんはもともと自分で出版社を立ち上げ、できるだけ美しい本をつくりたいとの想いで活動してきた人物。デジタルの時代になってからは、スタートアップにかかわることが増え、新興企業のなかにライターや編集者の考え方や魂と入れ込めないかと考えてきたとのこと。
フリップボードでデザイナーを務めたり、現在ではスマートニュースのUIアドバイザーとしても活動されています。『ぼくらの時代の本』では明確な形態のないコンテンツと明確な形態を伴うコンテンツという2つの分け方でこれからの本について考えています。イベントでも電子書籍に関する議論は多くなされていました。
たとえば、ハイライト機能などを盛り込み他人の気になった箇所を見ることができるソーシャルリーディングもないことや、どのページの滞在時間が多いのかデータをとって公開するのはどうか、といった話が出ました。名著であれば、多くの人が気になった箇所や読むべき部分にハイライトしてあったり、滞在時間の長いページを読んだりすることができたら便利に思うことでしょう。
閑歳さんは、スマートフォンでは紙のようなページめくりよりスクロールの時代だから、スクロールの電子書籍が出てくればと提案しました。実際、マンガアプリではcomicoのような縦スクロールでの読書体験ができるものもでています。
たしかに、スマホ時代はフィードやタイムラインなど縦に流れるものが身近になったので、個人的には縦スクロールで読み続けられるものがほしいです。となると、これからはあまりページという単位の存在感も薄くなるのか気になるところですね。
また、クレイグさんは、ストーリーを進めるために小さなアクションや仕掛けを伴う本があれば、と述べました。仕掛け絵本のようなものがヒントになり、読者がアクションしないと次に進まないという、ストーリーに参加している体験が得られる本のかたちもありなのかもしれません。
電子書籍はキンドルが多くを占めますが、プラットフォーム依存に関しても議論されました。アプリの世界でそういった状況にある閑歳さんは、プラットフォームに則ったほうがユーザーが使いやすい一方で、個性が出しにくいと発言。クレイグさんは、アマゾンは読者よりも消費者を向いているから、と笑った。
(2015年3月4日「メディアの輪郭」より転載)