ニート戦力化を目指す、東京中小企業家同友会さまへのご提言

ルールが決まり、本格的な採用活動が始まった際、どこに無業の若者がいるのか。どうしたら情報が届けられるのかということも議論が必要です。

東京中小企業家同友会が「隠れた」人材として「ニート」状態の若者の採用活発化を検討されるそうです。

---(引用)---

東京中小企業家同友会は人手不足対策の一環として、ニートの戦力化の検討に乗り出した。既に一部の会員会社がアルバイトという形態で試験的に人材起用を開始。一定の成果を確認した。これに基づき、10月には若者を交えた討論会を実施することで、本格的な採用活動に向けてのルールづくりを目指す。

出典:SankeiBiz

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人材不足対策が理由のようですが、そうはいっても仕事になかなか就くことができない若者を積極的に採用していこうとする動きは大変重要なことです。

最近では、政府や行政の資料から「ニート」という言葉が使われなくなり、「若年無業者」となっています。大きな違いとして、若年無業者には失業者が入りますので、積極的に就職活動をされている若者がはいります。「ニート」となりますと、若年無業者の「非求職型」と「非希望型」に分類される若者が対象ということになります。

(参考)

その上で、東京中小企業家同友会が採用のルール作りを目指されるということで、いくつかご提言差し上げたいと思います。

1. イメージの払しょく

正直、「ニート」のイメージは各企業のご担当者にとってよいものとは言えません。怠惰でやる気がないという誤解のままにルール作りの議論に入ってしまうのはとてももったいないことです。例えば、若年無業者の三類型ごとの職歴と就労期間を見てみると、誤解のひとつである「働く意欲がない」というのは当てはまりづらいのではないでしょうか。(出典:若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析

これは「就労支援機関」を利用した若者が母数となっていますのでニート(若年無業者非求職型、非希望型)の全体像を表しているわけではありません。しかし、採用活動への取り組みを始めるにあたってアクセス可能性の高い若者像としては比較的近いのではないかと思います。

2. 履歴書から入らない

採用の活発化は大賛成ですが、もともとは人手不足対策ということで「そうはいってもよい人材がほしい」でしょう。そのとき、既存プロセスである書類選考から面接ではよい人材と巡り合う確度が高まらないと思います。できれば中退や留年などの経歴のない「ストレーター志向」では、出会いの総量は増えません。

そこで提案するのが、一定期間、職場体験/インターンシップ的な枠組みを準備して、実際に職場で働いてみる機会を作ることです。これは若者自身にとっても職場の雰囲気がわかりますし、逆に企業側でも実際にどのような人材なのかを見ることができます。

もうひとつは、そこに第三者をコーディネーターとして介在させることです。若者側も企業側も、短期であれ職場に入ってみればさまざまな質問や疑問が生まれてきます。しかし、特に若者側としては採用期待もあるでしょうから、「これを聞いてしまって大丈夫だろうか」という不安があり、結局、質問できないままとなってしまう可能性があります。その際、直接企業の方には言いづらいこともコーディネーターを通じて確認が可能となります。

第三者が介在することは企業にとってもメリットがあります。それは一部職場に第三者が入ることがウェルカムであるということは、その企業がオープンであることの証左になります。もちろん、コーディネーターとなる個人や組織が中立的であることを担保する必要はあります。

3. 実費負担の原則を超える

無業の若者は収入がありません。何度も企業に訪問したり、職場体験を一定期間することは、交通費など実費負担に耐えられない可能性があります。「実費はご負担ください」は、実費を負担できる環境にある若者に参加可能性を限定してしまいます。それではせっかくの取り組みも広がりが生まれません。ひとによっては、一回の往復の交通費が食費何回分にあたることもあります。経済的に苦しければ、今回の取り組みを活用するための実費分が生活に必要なコストとのトレードオフになりやすいのです。

ひとつの取り組みとして、西友合同会社さまとともに進めている支援プログラムにかかる受益者負担と実費負担(交通費等)がともに拠出されるもの(通称:西友パック)があります。

昨年11月に開催された第2回一億層活躍国民会議でも資料提出しましたが、15名のうちひとり親家庭9名、世帯年収350万円以下の家庭にいる若者が2名など、苦しい経済状況にある若者が活用しています。ぜひ、実費負担の原則を越える取り組みをしていただき、その成果を広く発信してください。経済的な支えがあることで動き出せる状況のひとたちへの国策につながる大きな一策となるはずです。

(参考)

今回の東京中小企業家同友会の取り組みは大変素晴らしいもので、大きな成果につながることを期待しています。ルールが決まり、本格的な採用活動が始まった際、どこに無業の若者がいるのか。どうしたら情報が届けられるのかということも議論が必要です。地域若者サポートステーションや生活困窮者自立支援制度により自治体が設置している相談窓口などと広く情報が共有されることを願います。

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