あるモノやサービスを得ることで抱えている課題が改善・解決されるとしても、必ずしもそのひとが対価コストを支払えるわけではありません。非営利組織に近しいひとだと、なんとなくわかりやすい感覚ではないかと思います。
あるスタッフから、偶然出会った(成功している)ビジネスパーソンで非営利組織との協働に関心を持つ方から、こんなような言葉をもらった と聞きました。
「受益者負担ができないひとは放っておいていいんじゃないの」
この場合の受益者は、何らかの困難や課題を抱える若者のことです。もし受益者が別の属性のひとであったら言葉は変わっていたかもしれません。
その話を聞いたとき、「機会損失思考」という言葉が思い浮かびました。意味は文字通りのママです。成功されている方ですので、利益をあげる(儲ける)スキルなりセンスのある方だと思います。羨ましいです。
どのようなビジネスをされているのかわかりませんが、受益者負担ができないひと=営利組織としては放置(非営利組織でどうぞ)。
かなり単純と言えば単純ですが、よく考えるまでもなく、受益者と対価コストの支払い手が異なるビジネスは巷にあふれています。
乳幼児向けのモノやサービスは受益者が乳幼児であっても、その対価コストは乳幼児ではありません。家族や親族を中心に、誰かが支払っています。
病院や薬局も、病気や怪我のひとから何割かの受益者負担は発生しますが、実際の治療や薬の対価コストの大部分は税金から受け取っています。
そのビジネスパーソンの思考に戻ると、モノやサービスを提供するにあたって、受益者が必ずしも対価コストを支払える必要はなく、営利事業でもよくある話。
それが、非営利組織が対象にするひとたちの場合、受益者負担ができないひとは放置、という脊髄反射っぽい思考は機会損失を起こしやすいものではないかと思った次第です。
もちろん、営利・非営利を完全に一緒にして論じるには、あまり適さない状況もあります。認定NPO法人に寄付をしたら、その領収書をもって個人/企業が申告すれば控除が受けられるといったものは、営利組織では活用できないものです。
【認定NPO法人育て上げネット】として、受益者負担が効かない子どもたちや若者に、就労支援サービスを提供していますし、いま以上に、していきたいと思っています。
(2014年10月11日「若者と社会をつなぐ支援NPO/ 育て上げネット理事長工藤啓のBlog」より転載)