今年11月11日、日本原子力発電東海第二原子力発電所の「基準地震動(=耐震設計の基準になる地震動)」が決まったという報道が流れた。東日本大震災による事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ「沸騰水型」に係る基準地震動が決まったのは、東京電力柏崎刈羽原発6・7号機に次いで2例目とある。
東海第二原発は、11月28日に38歳の誕生日を迎える。出力は110万kWで、これは大型発電所だ。当然の事ながら、"40年運転"の期限を延長するための申請を行うだろう。「基準地震動」の審査に置いて、次の課題となるのは「電気ケーブル」の防火対策である。
この問題は、東海第二原発が新規制基準の適合性申請を行った当初から話題になっており、10月27日の原子力規制員会の審査会合において、原子力規制委から『「全て難燃性へ交換するのが原則。基本的な考え方が共有できないと先へ進めない」と突っぱねられ、門前払いされる形となった』との一部報道がある。
本当に「全て難燃性へ交換するのが原則」なのかどうか?
原子力規制委のホームページには、「実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準」という原子力規制委の内規がある。
そこには、次のように書かれている。
---- 2.1.2 安全機能を有する構築物、系統及び機器は、以下の各号に掲げるとおり、不燃性材料又は難燃性材料を使用した設計であること。ただし、当該構築物、系統及び機器の材料が、不燃性材料又は難燃性材料と同等以上の性能を有するものである場合、もしくは、当該構築物、系統及び機器の機能を確保するために必要な代替材料の使用が技術上困難な場合であって、当該構築物、系統及び機器における火災に起因して他の安全機能を有する構築物、系統及び機器において火災が発生することを防止するための措置が講じられている場合は、この限りではない。
このうち、電気ケーブルについては次のように書かれている。
---- (3) ケーブルは難燃ケーブルを使用すること。
つまり、「難燃ケーブルを使うのが前提であるが、不可能な場合は、それと同等以上の性能があれば良い」と言っているのだ。
実際、東海第二原発よりも運転開始時期が早い関西電力高浜原発1・2号機と同美浜原発3号機では、「非難燃ケーブル」が使われている箇所であって取替え困難な部分については、難燃性の防火シートで覆うことなどにより、「難燃ケーブルと同等以上の難燃性能を確保する」として既に原子力規制委の審査に合格している。
11月9日の原子力規制委において、九州電力玄海原発3・4号機が新規制基準に適合するとした「審査書」をまとめた時、緊急時対策所の設計を「免震」から「耐震構造」に見直したことに議論が集中した。
その際、田中委員長は、当日の委員会で「そもそも規制というのは性能要求ですので(中略)、性能的に見た場合に、本当にそれが満足しているかどうかということがポイント」と述べ、免震構造と同等以上の性能が確保できれば足りる旨を強調している。
「性能要求(性能規定)」とは、具体的な手順や方法を規定せず、本来果たすべき安全上重要な要求のみを規定化するものである。これは、最新技術が迅速に導入され、技術開発の促進、品質向上やコスト削減にも期待できる手法であり、国際的な標準にも沿っている。
こうした基本姿勢を無視し、自ら定めた内規も蔑ろにするような発言を審査の場でするのは不適切だ。原子力規制委(その事務局である原子力規制庁)は以前から恣意的な規制運用を重ね、『法律に基づく行政』を体現していないことが多い。
2013年7月に新規制基準が施行され、以来3年が経過したが、現在までに新規制基準の審査合格は玄海3・4号機を加えてもたった10基だけ。これらの原子炉はいずれも「加圧水型」と呼ばれるタイプ。
今年10月、柏崎刈羽原発の再稼働に慎重姿勢を示す米山隆一氏が新潟県知事に就任したが、「沸騰水型」で再稼働が最も早く実現するのは東海第二原発ではないかとの見方もある。
東海第二原発は、2011年3月の東日本大震災時に自動停止して以来、再稼働を阻まれている。110万kWの大型プラントが欧米並みの高い稼働率(約90%)で稼働すれば、年間1000億円を超える利益増効果が生まれる。
これを早期に正常化させ、『60年運転』が終了した後の安全な廃炉プロセスのための費用に充てることが先決だ。同時に、福島第一原発の廃炉・賠償に係る諸対策に貢献すべく、日本原電の収支改善と、それによる経営基盤回復を急ぐべきだ。